第6話

「そうだっ!今度一緒にゴッホ観に行きましょうよ!」


 「え、ゴッホ?」


 「そうです!たしか今、ゴッホ展やってますよね!」


 俺はあの時のことが思い出されてしまうから、絵を観に行くのは気が進まなかった。


 「私、人生で一回はゴッホの絵を見てみたいな〜って思ってたんですよっ。でもなかなか機会がなくって。ダメですか?」


 そんな子犬のような目で見られたら断れない。


 「わかりました。ご一緒します」


 「やった〜!予定空いてる日教えてくださいっ」


 「いつでも良いですよ。俺仕事してないですし。」


 「あ、私もでしたっ」


 キラキラとした顔で笑う音葉さんは、俺の目には眩しすぎた。思わず俺も笑顔がこぼれる。


 「じゃあ、明日行っちゃいます??」


 「え?明日??そんな直近のチケット取れますかね?」


 「とりあえず行ってみれば、なんとかなりませんかね?」


 音葉さんがこれを本気で言っていることもまた、音葉さんの魅力と感じてしまう。


 「まぁなんとかなるかも知れませんね」


 「じゃあ、明日の10時、上野集合でっ!」


 「了解しました」


 そして俺たちは背を合わせ反対方向へ歩き始めた。上野かぁ。どうやって行くんだったかなぁ。

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