起きると……
「ーー覚えておけよ!!」
「ーーきゃ!!」
「えっ……?」
僕が次に目を覚ましたのはベットの上だった。
先ほどまであのクソ神と話をしていたため、最後のセリフがそのまま出てしまったようである。
「あ、あれ……会長?」
僕が上体を起こして、隣を見るとそこにはきょとんとしている会長が座っていた。
「はい、会長です!!」
「“会長です!!”って……何なんですかその返事は……」
その返事が面白くて、つい笑ってしまった。
「も、もう何ですか!? 心配しちゃいけないんですか!!」
「いえ、すみません……でも、クスッ……あの返事は無いですって……」
驚いていたからというのもあるが“会長です!!”というのは結構面白い。
だがそんな僕の対応は会長はお気に召さないようで
「意地悪なレイ君は嫌いです。そんな副会長君は知らないです、そんな幼馴染は知らないです」
とそっぽを向いていじける会長。
そんな態度を取っていると可愛すぎて余計にイジリたくなってしまうけど、これ以上はまずいだろう。
「すみません、調子に乗りました会長。僕なんかを心配してくれてありがとうございます」
と僕は会長に礼を言った。
そんな僕の様子が予想外だったのか会長は少し驚いている。
「べ、別にいいんですよ、分かってくれれば。
ーーあっ、皆さん呼んできますから、少し待っててくださいね」
と言うと椅子から立ち、部屋の外に出た。
そうして部屋を出てから数秒も経たない内にアルを始めとする生徒会の面々がなだれ込んできた。
「坊ちゃん!! 大丈夫か!?」
大きい声が起き覚めの僕の身体には響くよ、アル。
「お兄ちゃん!! もう大丈夫!? 死なない!?」
そして小さい頃の呼び方に戻っているラウラ。
……これ絶対あとでチャスがからかってくるぞ?
「良かったねぇ~一時期はどうなるかって思ったけど、死んだら恨むところだったよ~」
誰を恨むつもりなんですかねチャスさん。
「レイが無事で、安心……本当に良かったなぁ……」
いつも通りの対応のミラ。だが少し目がうるってしているのは気のせい?
「良かったわぁ……もう心配で心配で。
ーーでは、目を覚ました祝いに何か高級なお茶でも入れますね」
少し涙目のアリーヌ先輩。
……そして今回もどこからお茶の元を出してくるんですか先輩。
「というかみんな大げさだよ……少し寝てていただけだろ」
窓を見ると僕が気絶する前に見た景色と同じ空の色をしている。
なのでそこまで寝ていないと思っていたのだが……アルはいつもとは違い神妙な表情を浮かべて、こう言ってきた。
「何を言っているんだよ坊ちゃん、1日寝ていたんだぜ……?」
「1日中!?」
どうりで外の明るさが僕が最後にみた時とあまり変わらないわけだ。
だって1日寝ていたのだから。
「お兄ちゃんに魔法が直撃してから保健室に運ばれたんだけど……」
「……だから見覚えがあるわけーー
ーーてかここ僕の屋敷じゃん!?」
なんか見覚えある天井だなぁと思っていたら、そりゃ10年以上に住んでいる自分の家なのだから。
そう考えているとふと、とある推測が思いついた。
「なぁみんな……今日の授業は出席したんだよね?」
「「サボった (です)」」
「何をしているのみんな!?」
アルやチャスは分かるけど、真面目な会長やラウラまでもが学校をサボっているなんて……。
「レイ君が気絶したあと一度保健室に運ばれたんですけど学園だとまだアクセルの息のかかった人間がいるかもしれないのでレイ君の屋敷に運びました」
まぁ確かにあの学園にアクセルの息のかかった連中がまだいる可能性がある。
そう考えると僕の屋敷に避難したことは正解かもしれない。
「まぁその時、私達も心配で一緒についていったんだよね~ハーストン家の馬車で一緒に。
ーーいやぁ~馬車初めて乗ったんだけど乗り心地いいねぇ~帰りも頼んだぜぃ」
「チャスは僕の事を本当に心配してくれているのか疑問だけどね?」
彼女だとただ“面白そう”って感情で付いてきた可能性がある。
「ま、まぁレイ、こうは言っているアルマンダ殿だが馬車の中でずっと会長やラウラのフォローをしていたんだ」
とミラが言うとチャスは少し焦った様子になった。
「み、ミラ? それは言わなくていいはずだよね?」
「何を言うんだアルマンダ殿。レイが倒れてから全員落ち込んでいたのに皆を元気づけて、皆で交代しながら見守るって決めたのもアルマンダ殿じゃないか」
「あれチャス……まさか」
「う、うるさいなぁ……私、暗い雰囲気嫌いなのだよ、分かる? あ、あとレイは丈夫だけが取り柄なんだからこれぐらいで死なないって知ってるし~」
なんて目を斜め上に向けて話すチャス。
チャスはいつもの言動や行動はあれだが他のみんなと同じぐらい優しい。
誰かが困っているとさりげなく助けを入れるのである。
「チャス、みんなのフォローありがとうね、帰りは父さんに掛け合って家まで馬車まで送ってもらうようにするね」
「い、いや別に……私は当たり前の事をしただけだし~別に褒められることじゃないし~」
恥ずかしいのか頬をかきながら話すチャス。
「「ジ~~」」
そしてそんな彼女をみんなで優しく見た。
「も、もうみんな暖かい目止めてもらえないかな!? こんなの私のキャラじゃないよ!!
ーーそれよりもレイはもう大丈夫なの!?」
「あぁ僕は身体のあちこちが少し痛いぐらいで特に異常はないよ」
起きてみてだが身体のあちこちが少し痛いぐらいで済んでいる。少しはあの神に感謝してもいいかもしれない。
「それにしても後輩クン、あんな強大な魔法が直撃してもよく軽傷で済みましたよね……」
「あっ、そう言えば……」
あの神に言われたことを思い出した。
「どうした坊ちゃん?」
「アル、試しに僕にそれなりに強い魔法撃ってもらえる?」
「おう、任せなーー
ーーはっ?」
「お兄ちゃん、とうとう頭がおかしくなりましたか……?」
「ラウラ酷くない?
ーーじゃなかった、アルやってみて」
「お、おう……分かった……坊ちゃんがそう言うなら……
ーーアイシクル・アロー」
と言うとアルは手で氷の矢を1本作ると僕の方に飛ばしてきた。
「こうすればいいのかな……“キャンセル”」
試しに魔法に向けて手を出してみた。
「ちょっとお兄様!?」
シュン
魔法で作られた氷の矢は僕の手に触れた瞬間、消えてなくなった。
「「えっ……」」
「あ、本当に使えたんだ……まぁ掛け声はこれでいいのかな……」
何かもっとカッコいい呪文名があるかもしれないが、言い間違いをしなくて済みそうなシンプルな名前の方がいいかもしれないので“キャンセル”と呼ぶことにした。
「「ちょっと待てぇいーーー!!」」
「うわっ、いきなりどうしたのさ!?」
みんながいきなり大声で叫ぶものだが驚く僕。
「いやいやレイ君!? 今自分が何をしているのか分かっていますか!?」
「えっ、ただ魔法を無力化したぐらいだよ姉さん」
「しれっと言う事ではありませんお兄様!! 手を出しただけでトリスケール様のそれなりに強い魔法を打ち消すなんて……普通じゃないですよ!!」
「そ、そうだぞレイ!? 魔法を無力化なんて王国でも両手で数えられる人数がいるかぐらいだぞ!?」
「あぁそう言えばそうだったなぁ……」
魔法の威力を弱めるシールドみたいな魔法を使える人物は多いものも魔法自体を無力化する魔法を使える人は王国にいないと聞いた事がある。どうやら僕はその中の1人になったみたいだ。
「こ、後輩クン……あの魔法が直撃して軽傷で済んだのって……その魔法が使えたからですか……?」
「うん……まぁ少し反応が遅れて衝撃までは防げなかったですけど」
実際、その時はあの神が手を貸したからであり、当時の僕は魔法が使えなかったのだが。
「でもレイ、そんなの私の情報に乗ってないよ!? 私の情報網から漏れるなんてありえないよ!?」
「まぁ使えるようになったのは最近だったからさ……」
だって1日前だもの。
「あっ……もう1つ忘れてた」
「今度は何ですかレイ君!?」
「今更なんだけどさ、会長、アリーヌ先輩、チャス、ミラ、ラウラ、そしてアル
ーーみんな心配してくれてありがとう」
と僕が言うとみんなは一瞬キョトンとしたがすぐに笑いながら
「どういたしましてレイ君」
「お兄ちゃんが元気なら構いませんよ」
「あぁ親友が無事ならこれぐらい」
「終わりが良ければ全て良しってことだよ」
「いいですよ、私の後輩クンですから」
「坊ちゃんが無事なら全て良し、って感じだな!!」
と言ってくれるのであった。
あの神にはほぼ文句しかないが、それでもこんな良い友人達に出会えたことに関しては感謝している。
(本当にみんな、ありがとう)
それからしばらく雑談をしていたのだがチャスが思い出したかのように言ってきた。
「というかラウラってレイの事を“お兄ちゃん”って呼んでたんだな~」
「なぁっ!? 私としたことが……アルマンダ様に言われるなんて……!!」
「もぅ昨日運ばれた時なんて何度もレイにすがりながら“お兄ちゃん、お兄ちゃん!?”って何度も言ってーー」
「余計な事言わないでくださいよ!?」
ラウラとチャスは結構な頻度で喧嘩する。
まぁ大半の原因はチャスがラウラをからかっているのだが。
「もぅ~兄妹愛は尊いねぇ~」
「……コロす、この人コロして私も死ぬ!!」
あっ、やばいラウラが闇落ちしかけている。
この子暴走するとかなり大変だ。
「ちょっとラウラ落ち着いて!?」
「お兄ちゃんは黙ってて!! 私はこの人を黙らせて私も死ぬから!!」
「ラウラさん落ち着いて!? あとチャスは煽るのやめろって!!」
と僕の部屋は賑やかな声で溢れかえり……僕の母さんに叱られるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます