気が付いたら
会長達と賑やかで楽しい日々を過ごしていたら、気が付いたら僕が高等部に進級してきて1年が経ち、今度はラウラが中等部から高等部に進級してきた。
「ラウラ、進級おめでとう」
「おめでとうラウラさん」
ラウラが高等部に進級してきた日、ラウラを祝うため生徒会室で3人で小さなパーティーを開催することにした。
「お兄様、フローレンスさん、ありがとうございます。
これからは高等部の生徒会書記として精一杯努力させていただきます」
進級して早々ラウラは生徒会の書記に任命された。元々中等部で生徒会会長を行っていたのもあり、教師陣からの推薦があったからだ。勿論ラウラの能力の高さを知っている会長はそれを断る理由もなかったようで生徒会面々、全会一致で承認された。
なお他の生徒会の役職は
姉さん……昨年から引き続き会長職
僕……何故か出世して副会長
チャス……今までは僕の補佐だったのが主務に任命され、正式に生徒会入りした。
ミラ……会計
アリーヌ先輩……副会長
なお本来僕はアルを能力の高さも相まって副会長に推薦しようとしていたのだが……
~~~~~~数か月前
「何を言っているんだ坊ちゃん? 副会長は坊ちゃん、俺は副会長補佐だろ?」
「いやいや何を言っているんだいアル? 僕は副会長なんてやらないよアルがーー」
「じゃあここで多数決を取るぜ!!
ーー坊ちゃんが相応しいと思う方、手を上げてください~!!」
と僕の意見は無視され、勝手にアルは多数決を取り始めた。
「はい、推薦したの私ですから」
「ち、ちょっと会長!? 何それ聞いてないんだけど!!」
「私も同意だ、レイならこの学園をいい方向に導きそうだ」
「み、ミラ!? あとミラは僕の評判知ってるよね……?」
「はいはい賛成~!! だってレイが副会長なら色々とごまかしが聞きそうじゃん!!」
「……なんかチャスは自分の欲望に忠実だね」
「私と後輩クンが同じ役職……いいわね」
「あっ、アリーヌ先輩はもう何も言いません」
「私だけ反応が辛辣ですね~それもいいわ」
「賛成は俺も含めて5人。反対票は……聞く必要がないな」
「だろうな!! 過半数どころの票じゃないもんね……」
5対1という圧倒的な大差を付けられてもう反対する気が無かった。
……というかミラ以外まともな理由をもらってない。
「はいはい分かりました……レイ・ハーストン副会長引き受けます……とほほ。
ーーアル、補佐お願いね」
「おう来た!! 副会長補佐として万全のバックアップで坊ちゃんを補佐してやんぜ!!」
とガッツポーズをするアル。
「……何故だろうかアルからその言葉を聞くと不安でしかないんだよなぁ」
~~~~~~~
「それにしてもお兄様が副会長とは……妹として誇らしいです」
「勘弁してよ……僕プレッシャーに弱いんだから」
これからの事を考え、途方に暮れていると会長が笑いながら言ってきた。
「フフ、レイ君は自分にもっと自信を持ってくださいよ。私は貴方が副会長に相応しいと思ったから推薦したんです」
会長はそう言ってくれるけどそれがまた僕にプレッシャーをかけてくる。
「でもですね……あぁお腹痛い……」
「……レイ君は自信の無さが欠点ですね」
「そうですお兄様はもう少し堂々としていてもいいと思いますね、妹として」
「今年の目標はそれにしようかな……」
この瞬間、僕の今年の目標は“自分に自信を持つ”ことに決定した。
でも少しは僕の言い訳を聞いて欲しい。
魔法が使えることが最低条件のこの世界で魔法が使えないということがどれだけ自信を持てないことか2人は分かってないのだろうか。それに僕はこの後バッドエンドを迎えるキャラだ、これからどうなるか分からない。
「まっ、その話はこれぐらいにしてラウラさんのお祝いを始めましょうか。
ーーレイ君、お菓子の準備をお願い。私はお茶の準備をするわ」
「は~い、分かりました」
と僕は棚にしまっていたお菓子を取り出した。なんせ今日は妹のめでたい日だ、いつも以上に気合を入れてお菓子を作ったのでラウラの喜ぶ顔が楽しみである。
バンッ!!
いきなり生徒会室の扉が勢いよく開いた。
「ーーちょっと待ったぁ~~!!」
そして扉が開くと同時に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「「ん?」」
僕達3人が振り向くと、そこにはチャス、ミラ、アリーヌ先輩、アルの生徒会の面々が揃っていた。
「あれチャス達どうしたの?」
「どうしたの? じゃないよ!!
ーーラウラちゃんのお祝いでしょ!! 私達も混ぜてよ~まっ、断っても混ざるけどね!!」
「……いや断ったら混ざらないでよ」
「まぁまぁ堅い事言わないの。ラウラちゃんは一緒に裏山登った仲じゃん~
ーー私以外のみんなも祝いたいみたいだよ~ねぇみんな」
「水臭いぞレイ、ラウラ殿のお祝いなら私も祝わない理由がないだろう。
ーー今回は私も簡単なお菓子を作ってきたぞ!!」
と手作りのお菓子が入っているだろうバケットを掲げるミラ。
「って感じで俺はチャスが家の飲食店で作ってきた軽食を俺が持ってきた感じだな!! チャスは人使い荒いな!! だがラウラちゃんのお祝いのため頑張ったぜ!!」
と両手によくラーメン屋の出前の人が持ち歩く際に使う銀色の箱を持っているアル。
……アルは見た目的に出前のあんちゃんの姿が似合っている。
「最後に私ですがお気に入りのお茶を持ってきたので入れますね」
アリーヌ先輩はそのまま生徒会室にあるお茶のポットにお茶の葉を慣れた仕草で入れていった。
「あ、あれアリーヌさんが入れるってことは私いる意味ない……?」
その様子を呆然とした表情で見ている会長。
(会長……直接は言えないけどまさにその状態です)
「ま、まぁ会長、良かったら僕のお菓子を出すのを手伝ってもらえませんか?
作り過ぎっちゃって結構な量で1人で出すの大変なんですよ」
「そ、そうね!! 出すのは得意ですから任せなさい!!」
と自慢げに胸を張って、そのように言う会長。
(会長、“出すのは得意”ってそれ得意とは言いません……)
と僕は心の中でそう思いながらお菓子を出すのであった。
それから数分かけてパーティーの準備をラウラ以外で行った。
「じゃあラウラちゃん高等部進級&生徒会書記就任おめでとう~!!」
「「おめでとう!!」」
パンパン!!
と僕達はアルがどこからか持ってきたクラッカーを鳴らした。
「な、なんか誕生日を祝われているようですね……皆さんありがとうございます……」
誕生日席に座り、少し驚きながらも喜んでいる様子のラウラ。
チャスや僕が作った料理を食べながらしばらく談笑しているとチャスが不意に立ち上がり
「そうだ!! 今日の新制生徒会の面々を写真に残そうよ!! それようの魔道具さ先生達持ってそうじゃん!!」
と大声で叫んだ。
一応この世界にもカメラみたいな道具が存在しており、この世界では前の世界で機械を“魔道具”と呼んでいる。電気代わりの動力としてそこに魔力を入れて動かすのだが結構な金額をするので僕達学生が持っていれるものじゃない。
「うっし、じゃあ俺今から職員室行って借りてくるわ!!」
「あっ、ちょっと待ってアル!!」
僕は生徒会室を出て、職員室に向かおうとするアルを引き留めた。
「どうした坊ちゃん?」
「いやその魔道具、確か生徒会室にあった気がする……
ーーほら、あった」
と僕は写真を撮る用の魔道具を棚の中から取り出した。生徒会室限定だが大体の物がどこにあるか把握しているので、前にどこかで見た気がする記憶を頼りに探してみたらあったのである。
「すげぇな坊ちゃん、よく探したな
ーーで、それどう使うんだ? 誰か使い方分かる奴いるか?」
アルが生徒会の面々に呼びかけると僕以外の全員が首を振った。
「あぁこれね。僕が撮影するよ、ほらみんな会長を中心にして集まって」
「え~レイも写ろうよ~ほら魔道具なら生徒会の担当の先生にでも操作してもらようよ~」
「えぇ……僕はいいよ……ほ、ほら、みんなーー」
「ーー行けトリスケール君、職員室に呼びに行くんだ!!」
「任せなーー!!」
とアルは再び職員室に走っていった。
……僕が言うのもなんだけどアルって結構生徒会の面々にパシリにされているけど、嫌がっているどころか結構楽しんでいる様な気がする。見た目的にはパシリを呼ぶ側だと思うのだけど。
そして待つこと数分後……アルは本当に職員室でお茶をしていた先生を呼んできた。
「おやおや写真を撮ればいいのですか?」
アルが呼んできてその先生は魔道具を操作し始めた。
「よっしゃぁ~みんな集まれ~!!
ーーほら会長、前に前に!!」
とチャスが会長の背中を押すと、会長は慌て始めた。
「ち、ちょっとアルマンダさん押さないでください!!」
「ということで坊ちゃんは副会長だしその後ろぐらいに!!」
「えぇ……僕あまり前に出たくないんだけど……まっいいか」
「じゃあもう1人の副会長の私は後輩クンの隣にーー」
「ベスランド様!? お兄様の隣は妹の私です!!」
「フフッ……みんな仲良いな。実に良い」
なんていつもの様にガヤガヤしながら皆で写真を撮るために集まった。
……みんなの前では恥ずかしいけどこの日常は何よりも好きなのだ。
「では、みんな大丈夫ですか?」
「「大丈夫ですーー!!」」
「分かりました、行きますよ」
カシャ!!
「まさかみんなで写真を撮るなんてなぁ……」
僕は手元にある写真を手に取りながら自室で1人感慨にふけっていた。
今日の写真撮影もだが、生徒会の仕事や放課後誰かと遊んだりなど生前の友達が1人もいない僕からは想像できないイベントを体験してとても充実している日々を送っている。
「会長は穏やかな笑顔で、チャスやアルは2人とも満面の笑みだなぁ……2人ともピースサインだ」
と写真に写っている面々の表情を1人1人見ている。
「ハハッ、ラウラは多分緊張しているな……表情硬いし、ミラは……これカメラ睨んでるだろ……アリーヌ先輩はいつも通りの笑顔だな、何を考えているか分からないけど。最後に僕は……」
そして最後に自分の表情を見てみた。
「表情硬い僕。もう少しどうにかならなかったのかなぁ……ラウラのこと言えないな、これ……」
そこには少しぎこちない表情を浮かべている僕がいた。
さっきはラウラの事を“硬い”と言っていた本人がこれだと示しがつかない。
「副会長になったし、会長達のためにこれからも頑張らないと……
ーーでも僕が2年生になったってことはもうすぐ僕のバッドエンドが迫っているのか……」
そうなのである。
ゲームの流れだと本来の主人公がこの学園に来るのはレイ・ハーストンが高等部2年生の5月。
現在、高等部2年生の4月なのであと1ヶ月後には主人公が転校してくる。
「僕これからどうなるんだろう……」
最近はずっとこのことを考えてばっかりだ。
筋書通りに進めば僕はあと2ヶ月経たないうちに学園での立場と自分の命を失うことになる。
そんなこと考えていたらさっきまでの楽しい気分は消え、代わりに嫌な緊張感が迫ってきた。
「くそっ、ダメだ……気分が悪くなる」
僕は手に持っていた写真を机に戻して無理矢理目を閉じて寝ることにした。
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