アリーヌ先輩とお茶
その日は僕は補修をくらってしまい生徒会に遅れてしまった。まぁ僕が日頃の成績があまり良くないのもあるだろうけど、あの教師、絶対僕の事嫌いなんだと思う。そのためだろうが文を書く問題の点数で教師と少し喧嘩になった。
「すみません遅れましーー
ーーって、あれ?」
僕が生徒会室に入ると、中にはアリーヌ先輩が本を本を読んでいる以外誰もいなかった。そんな先輩は僕が入ってきたことをみると、本を閉じて声をかけてきた。
「あら後輩クン、急いじゃってどうしたのかしら?」
「あれアリーヌ先輩……みんなは?」
いつもは賑やかな生徒会室は先輩以外
「今日は議題が無くて皆さん帰りましたよ、ただ会長は顧問の先生と話しているみたいです」
「なんだぁ……走ってきた意味ないじゃんか……というかアリーヌ先輩は帰らないんですか?」
「私ですか? それは勿論後輩クンに会うためですよ。
ーー恋愛は多く会った方が有利ですから」
「何を言っているんですか……先輩は」
この才色兼備な先輩は何故か僕の事を気に入っているらしい。どうやら僕が中等部の頃に謎の力を発揮して先輩を救ってからだが僕個人はそんな大層な事をしていないつもりだ。
「まぁどうせ私は家は生徒会室から歩いて5分ですから少しぐらい生徒会室で休んでから戻ろうと思って」
アリーヌ先輩は学園の敷地内にある寮住まいのため生徒会室から5分で着く。毎朝ラウラに起こしてもらわないと遅刻確定の僕からすれば近いというのはとても羨ましい。
……というか僕が遅刻しないように気を付けないといけないだけだろう。
「近いっすね……」
「フフッ、まぁ寮住まいの唯一の利点ですかね。
ーーちなみに後輩クンはこの後、お時間ありますか?」
「えぇ、まぁ……」
なんせ補修も終わったので今日は帰っても特にやることはない。
「良ければ私の休憩に付き合ってくださいな。ほらお菓子もありますので」
「いいですよ、僕も補修で頭を使って疲れてました……」
というか僕の日頃の成績もあるだろうけど今回の教科の教師絶対僕の事嫌いだろう、でないとあそこまでネチネチ言わないだろう。
「フフッ、頑張りましたね。さっ座ってなさい、お茶いれてきますから」
と言うとアリーヌ先輩は椅子から立ち上がりお茶を入れに行き、5分後お茶とお菓子を持ってきてくれた。
「……すみません、先輩なのにお茶をいれさせてしまって」
今気づいたことだけど僕は先輩にお茶をいれさせて、その上お菓子まで持ってこさせていた。だけどアリーヌ先輩は特に気にしていない様子で
「いいのよ気にしないで、私が好きでしていることですから。
ーーほら召し上がれ、今日のお菓子は食堂のおばちゃんからスコーンをもらいました」
「すみません……」
「隣いいかしら?」
「あっ、どうぞ」
「ありがとう」
とアリーヌ先輩は僕の隣に座った。
「あぁ……スコーン甘い……」
「そうね、ここのスコーン美味しいですものね」
「何かスコーン食べたら元気出てきました」
「あら良かったわ。
ーーじゃあそのまま夜も行けるかしら?」
「ふぐっ!!」
アリーヌ先輩の発言に思わずむせる僕。
「な、何を言っているんですか先輩は!!」
「あら私間違った事言ったかしら?」
と首を傾けるアリーヌ先輩。
「何も正しい事言ってないですよ!?」
「おかしいわね……本にはそういう風に書いていたのに……」
「本のチョイスを間違えてますから……」
果たしてどんな内容の本を読んだか少し興味が沸いたのだがここで突っ込んだら絶対先輩のペースに巻き込まれかねないので口に出さないでおく。
「でも後輩クン、私はこういうのを憧れだったんですよ」
「憧れ? 変な誘惑をするのがですか?」
「あっ、それも好きですよ」
「でしょうね……」
でないと僕に会う度にこんな事をしないだろう。
「話が逸れてしまいましたが、私はみんなでお茶とお菓子で楽しくおしゃべりすることです」
「あ、あれ意外と普通……」
「“意外”は余計ですよ、あのね私だってか弱い乙女なんですよ?」
「……」
僕は空いた口が塞がらなかった。
「あら、何か疑問でも?」
「えぇ……“か弱い”って部分に疑問しかないです」
「その根拠は?」
「先輩……中等部の頃、僕にしたこと覚えてますか?」
「う~ん、仲良くなったこと?」
「黒い弾丸撃ってきたり、足元割ってきたり、氷の矢を撃ってきましたよね? なんなら氷の矢は僕の頬かすめていきましたよ」
……あの瞬間、僕は本気で死を覚悟した。今まで見た事がないレベルの強さの攻撃魔法を目にして覚悟しない方がおかしいと思う。
「懐かしいわね……あの頃の私は若かったのでしょうね……」
「そこで遠い目をするな先輩」
思わず先輩に対する口調をかなぐり捨ててしまった。
「あらやだ、言葉使いがダメですよ」
「はぁ……まぁいいですけど。
でもその憧れの理由は?」
「私の生まれはまぁ知ってますよね」
「えぇ……まぁ」
彼女の生まれは幼い頃に孤児院に引き取られてそこで実験体にされて……という結構過酷な幼少期を送っている。
「でもこの学園に入って……後輩クン達と出会って……生徒会に入って……そこでみんなと出会って……本当に入ってよかったですね」
「ほぼ初対面で殺されかけましたけどね?」
「あの頃の私は若かったのよ」
「それ言えば許してもらえると思っているんですか?」
本日2回目です、その発言。
「後輩クンって本当に不思議な子よね」
「よく言われますね……色んな人から」
妹のラウラや教師からも嫌味たっぷりに言われていますから知ってますとも。
「フフッ、まぁそうでしょうね。国内有数の貴族の長男で、何故か魔法は使えない、人を身分や生まれで差別しない、問題児が不思議と集まる……面白い子ね」
「僕は好きで問題児扱いされてないし、問題児を集めてないんだけど……」
教師陣も僕を“問題児を集める問題児”として扱っている。だが何度も言うが僕は望んで問題児を集めていない。何よりも問題児として扱われているアルやチャスはそこまで悪い連中ではないので、彼らが問題児扱いされるのが良い気分ではない。
「フフッ……でもその問題児は私を助けてくれました。妬みで襲って自爆した私を……見捨てておいてもよかったのに貴方は助けてくれましたね」
「あぁ……あの時の僕は若かったなぁ……」
記憶を振り返り我ながら恥ずかしいと思う。あの時は目の前で死にそうな先輩を見捨てる事が出来ず助けた。まぁあの時は謎の力が発揮して助かったけど今考えると一歩間違えたら2人ともあの世行きだっただろう。
「それでも私は貴方に感謝しているのです。
ーー見ず知らずに私を助けてくれた貴方を」
「べ、別に僕は人として当たり前の事をしたまでだし……」
アリーヌ先輩珍しく褒められて少し恥ずかしくなる僕。この先輩はいつも僕を変に誘惑したり、だらけたりと本当に先輩なのかと思いたくなるような言動や行動が目立つがたまに年上らしいところがある。
「あら照れているのかしら~? 顔を赤くして可愛いわ~」
「うるさいです……」
「うふふ~可愛い可愛い~
ーーもう私の部屋で飼いたいわ、あっ、飼えばいいんだわ」
「僕はペットじゃなないですよ!?」
「えぇ……つまらない……日々部屋に戻ったら笑顔の後輩クンの計画が……」
「本当にペットかよ……僕は」
「ーーレイ君がペットですか!?」
「って会長!?」
何故かタイミングよく会長が生徒会室に興奮気味に入ってくた。
……あと、目がなんかとても危ない気がします、会長。
「あら会長、そんなに興奮してどうかしたのかしら?」
「だってレイ君がペットですよ!! 興奮しない訳ないじゃないですか!!」
「いや興奮しないでよ」
会長の反応に思わずため口になる僕。
「あら分かりますか会長、こんな可愛いペットいたら嬉しいですよね?」
「分かります!! 家に帰ったらレイ君が待っている……なんて幸せな……!!
ーーどうかしらレイ君?」
「……その質問に対して真面目に答える人がいると思いますか、会長?」
「あ、あれレイ君が珍しく反抗的です」
「ポンコ……いえ会長にだってたまに反抗しますよ」
「あ、あれレイ君……? いま私の事を“ポンコツ”って言いかけました……?」
「いえ気のせいです、えぇ気のせいです」
思わず言いかけたが何とか誤魔化した。会長は意外とズボラというかたまにポンコツのところがある。そんなところを知っているのは僕と彼女の両親だけであり、ラウラを含めて他の人達は知らない。
……ある意味凄いと思う。まぁそれをバレないように僕を含む周りが必死に隠しているのだが。
「……何か納得いきませんけど2人は何をしていたんですか?」
「そんなの、後輩クンと秘め事を……」
「嘘をつかない先輩。僕はアリーヌ先輩とお茶していました」
「……本当ですかレイ君?」
訝しげに僕を見る会長。
「あの会長……僕ってそんなに信頼ないですか?」
「い、いえ……アリーヌさんとレイ君だと圧倒的にレイ君を信じますよ?」
何故疑問系なのだろうか。確かに僕は学園で問題児として扱われているけど、会長ぐらいは僕を普通の学生として見てくれると思ったのだが少しショックだ。
「あら残念ね」
とこちらは大して気にも留めてない様子の先輩。
「でも、レイ君はほら……目を離すと女の子と仲良くしていますから……」
「そうね~後輩クンって手を出すの早いものね」
「……不名誉な信頼だ」
なんて言いながら3人でお茶をして、その日は生徒会の会議は終わった。
……まぁ会議らしい話し合いはしてないが。
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