チャスの手伝い
学園にて……
「へいへい、レイ!!」
「いきなりどうしたのチャス?」
「頼みがあるんだい!!」
「何かな? 僕で良ければ」
「よし、じゃあ日曜日うちの店来て~あっ、手ぶらでいいよ」
「手ぶら……? まぁいいか日曜日ね、分かった」
その週の日曜日……
「ーーで、何となくそんな気がしていた」
僕はチャスの店で、ウェイターの服装で厨房に立っていた。僕がチャスに頼まれたこと、それは彼女の店の手伝いである。前に夏休みにという話があったけど、まさか夏休み前に手伝いで呼ばれるとは。何となくそんな気がしていたので事前に両親に話をしていたので良かった。
「おう!! 坊ちゃんウェイター姿似合ってるぜ!!」
とアルは休日にかかわらずいつものテンションで絡んでくる。なおアルは見た目の割に結構料理が得意なのでチャスに呼んでいいかを聞いてみたところオッケーサインが出たので呼んだ。
「そうそうレイ中々合ってる!!
ーー悪いねレイ、トリスケール君、せっかくの休日に来てもらってさ。私のパパがぎっくり腰になっちゃって……もう娘として情けないよ」
僕が今日チャスに店に手伝いに来た理由はチャスのお父さんがぎっくり腰で動けなくなったからだ。平日はチャスのお母さんだけで何とかまわしていたらしいが日曜日はお客さんが結構来るらしくチャスとお母さんだけでは無理と判断したらしく僕とアルが呼ばれたのである。
「いいよ僕は大体暇だし」
「俺は毎日暇だからな!! ダチの助けとあればいつでも呼んでくれ!!」
「いや~頼りになる友達がいて助かるわ~」
「申し訳ありません……私がぎっくり腰になってしまって……」
と厨房の方に壁に寄りかかりながらチャスのお父さんが出てきた。
「ち、ちょっとチャスのお父さん!? 安静にしてないとダメですって!!
ーーアル、お父さんを部屋に戻るまで支えてあげて」
「おう任せとけ!!」
とチャスのお父さんに方に向かったアル。その様子を見たチャスはため息をつきながらもお父さんの事を心配していた。
「だから寝ててって言ったのに……あとで目一杯文句言ってやろ」
チャスは両親に対して口は悪いけど両親を大切に思っているのは明白で、本人は否定するけど僕を始め生徒会の面々は全員知っている。
「まぁまぁとりあえずチャスは厨房で良いかな、僕とアルは基本的にホールと厨房がピンチになったらどっちかが行くって感じで」
「よろ~厨房は任せたまえ!! レイ見た目は結構良いから女性受けいいかもだね!!」
「はいはい、お世辞をありがとうね。
ーーさっ、始めようか」
「ファイト~おぉ~!!」
そうして店が開くと、お客さんが結構入ってきた。
「チャス、パンケーキ2個とコーヒー、紅茶入ったよ」
「分かった~トリスケール君は裏の小麦粉持ってきて」
「任せな!!」
とりあえず店を開店をしたのだが、チャスのお父さんがいないのでメニューはいつもより減らして営業することにした。流石休日といった感じでお客さんはそれなりに来る。
そしてしばらくするとお客さんの数がまた増えてきた。
「ちょっとごめん2人ともどっちか厨房に入ってもらえる? 少しパンクしそう」
確かに注文を聞いていて注文が増えてきたのでそろそろマズいと思っていたところだ。
「アル、厨房には僕が戻るからホールお願いするね」
僕とアルだと申し訳ないが僕の方が料理が上手い、それにアルの方がフットワークと体力があるのでホールに向いているだろう。
「うっし任せとけい!!」
アルの気持ちのいい返事を聞いたあと、厨房に戻った。
「戻ったよ、今どれぐらい溜まってる?」
「5品ぐらい!!」
「おっけ任せて」
「ごめんなさいね……私達の店なのにご学友達に助けてもらって……」
さっきまでチャスと一緒に料理作っていたチャスのお母さんは僕の方を見ると申し訳なさそうな顔をしていた。お母さんの表情を見ると連日の疲れが出ている。
「いいですよ、チャスさんにはいつも助けてもらってるのでこれぐらいは大丈夫ですよ」
「だってママ、こき使っちゃおうよ~」
「ち、チャス!? 貴方何を言っているの!!
ーーすみません私達の娘がご無礼を!! 何卒お許しを……!!」
「い、いえ気にしてませんって!! さっ始めましょうよ!?」
「そうだよママ、料理料理~」
「チャスはあとで話ね?」
「ちぇ……」
それから客足は途絶えることなく僕達4人は休みなしで働いた。正直昼ぐらいはヤバかったのだがそれでも何とか昼を乗り越え、閉店まで乗り切った。
「今日は本当にありがとうね」
僕とチャスは2人で話しながら歩いていた。アルは明日提出の宿題をやってなかったことを思い出して先に走って帰っていった。
……今日こうなることを分かっていたなら昨日のうちにやっておけばいいのに。
「いいって休日に貴重な体験できたし。でも明日学校かぁ……憂鬱だぁ……」
明日から学校って考えるだけでももう暗い気分になる。そんな僕の様子を見たチャスは笑いながら言ってきた。
「だねぇ~私もあまりいい気分じゃないよ。でも明日からならパパ動けそうだって
ーーもう娘を心配させるなんて酷い親だよ~全く……」
「ハハッ、なんて言いながらチャス嬉しそうだね」
口では文句を言っているけど表情を見るととても嬉しそうだ。心ではお父さんの事を心配しているけど口に出すのは恥ずかしいのだろう。
「も、もう笑い事じゃないよ……ったく~
ーーねぇレイ」
「ん?」
「実はね、私、パパとママと血が繋がってないの」
いきなり驚愕の告白。
「……いきなりだね、どうしたの?」
「いや話そうかなって急に思ったんだ、何かレイには話してもいいかなって」
「そうなんだ……言い方悪いけど、チャスとご両親って似てないから何となくそんな気がしていたんだ」
「レイって意外と洞察力あるんだねぇ。なんかね私は拾われたみたいなんだよね~まっ、本当の両親の記憶ないけど」
一応ゲームの知識で知っている。チャスとチャスのご両親は血が繋がっていない。でもゲームでも彼女の本当の両親は出てこない。
……というかチャスもだが、ラウラ、アリーヌ先輩の3人の生徒会の半分が本当の親ではない、もしくは本当の両親と死別しているというこのゲーム作った人も中々の鬼だななんて思う。
「どういう理由で私は今の両親にいるかは分からないけどそんな事はどうでもいいかな。うん、でも私にとっての親は今のパパとママだし、私の家はこのお店」
チャスは今のご両親をとても大切にしている。チャスのお父さんがぎっくり腰になって店を閉めざるおえない状況でも僕達を呼んで、店を開店しようとする
「だね、
「でもレイ」
「ん?」
「本当にレイって不思議だよね。私さ、今までこの話を家族以外にしたことないんだけど、なんかレイには話せちゃったよ」
「僕個人は何もしてないけど……」
「いや~本当にレイって不思議な子。生徒会のみんなが気に入るのも何となく分かる~」
「何を言っているのさ、ミラ以外はみんな僕をオモチャとして扱っているでしょ。
ーー特にチャス、君はね?」
一番僕をオモチャにしているのはチャスだ。
「にゃっはっは~細かい事を気にしてはいけないぜいレイ。貴族の息子なんだから寛大な心を持っていないとダメだよ?」
「君という人間は……」
「まぁまぁ可愛い女の子の冗談は許してやるのが男の子だよ?」
「貴族の次は男子なのね……はぁ……」
多分チャスに口喧嘩で勝てる気がしない。僕自身、口喧嘩が苦手なのもあるしチャスは口が上手いのでよく同級生を論破したり、ラウラをからかったりしている。
「いや~みんな可愛いし優秀だから羨ましいなぁ~」
「何を言っているんだいチャス」
「はい?」
「チャスだって可愛いじゃん」
「お、おぉ?」
「いやだからチャスも会長達に負けないぐらい魅力的な人だよ」
チャスは知らないだろうけど彼女もメインヒロインの1人だし。
それに僕は彼女と出会ったまだ数ヶ月だがチャスの良いところを僕は良く知っている。
「学園が終わってからご両親の店の手伝いするし、僕達が困っているときにさり気なく助けてくれる優しいところもあるからさ君も充分魅力的な女の子だよ?
ーーってどうしたのチャス?」
さっきから何も返事来ないなと思いチャスを見ると、彼女は少し慌てていた。僕の記憶だと彼女はあまり慌てる事がないのでその様子は珍しい。
「い、いや……レイって結構真っすぐ言うんだね……」
「まぁ思ったことは出来るだけ真っすぐ伝えるようにしているかね」
会長やラウラから直した方がいいとは言われているが中々直せないのである。
「それを隠さずに言うレイは恐ろしいよ……私は」
「ん? 変な事言ったかな……僕」
「危ない……危ない……私までハーレム入りしてしまうところだったぜぃ……私まで取り込まれないぞ……私が最後の生徒会での最後の砦だぞ……」
「よく分からないけど……
ーーあっ、ここまでで大丈夫だよチャス、また明日学園で」
チャスと話していると彼女の店から少し遠い場所まで来てしまった。チャスは可愛い女の子だし夜中に1人でこれ以上歩かせるわけにはいかない。
「お、おぅ~!! 今日はありがとうね~!!」
と僕はチャスに手を振りながら家に帰った。
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