キャンプの予行練習 中編
僕達は集合したあと学園の敷地内にある山に登った。この山は学園にあるとは言えども結構な広さがあるのでそのため普通に登るだけでも結構な運動だ。毎年山に登る道中で学生の中で体力のあるなしがはっきり分かれる。
だからなのか……
「ふぅ、登り切った……」
「レイ君、お疲れ様です」
「中々良い運動だな」
「あぁこりゃ日々のトレーニングに使えるな!!」
と僕、会長、アル、ミラのそれなりに余裕がある側と
「もう無理……私明日筋肉痛だよぉ……」
「が、頑張れ私……登り切れればお兄様が待っています……」
「登り切れば……後輩クンが褒めてくれ……る……」
チャス、ラウラ、アリーヌ先輩のあまり体力がない側で明らかに登り切った際のテンションが違っていた。この3人はあまり体力がない。特にアリーヌ先輩は本当に体力がない。魔力が暴走する前に短期決戦なのは元々体力がないからという理由もある。
「さぁ皆さん、なんとか登り切りましたね。
ーーま、まぁ明らかに日頃の体力の差が顕著に出てますね……」
「もう無理……レイおんぶ~歩きたくな~い」
「いやいやチャス、もう頂上だよ?」
「お、お兄様……私はお姫様だっこで……」
「いやいやラウラ、頂上だって、ここ……」
「じ、じゃあ……私は後輩クンの腕にぶら下がります……」
「3人は僕は何だと思っているの……?」
「人気だな、坊ちゃん~羨ましいな!!
ーーどうだ3人、俺あいているぜ?」
とアルは腕の力こぶを見せて言ったのだが……
「「いえ、結構です」」
「……坊ちゃん、俺少し落ち込みそうだぜ」
女性陣にきっぱり断られて見るからに落ち込むアル。彼はこう見えて繊細なのである。
「ま、まぁアル落ち込まないでよ。会長、次はどうしますか?」
「一応次やりたいこと考えていたんですけど……まず休みましょうか」
「そうですね……半分が動けないですしね」
「少し休憩しましたし、そろそろ次の企画に移りますね」
「いこ~!!」
さっきまで座り込んでいたチャスは元気を取り戻し、勢いよく手を突き上げていた。
「で、会長。何をするんですか?」
「フフン、次はですね。キャンプの定番!!
ーー料理です!!」
「……」
会長の一言で僕はさっきまでの笑顔が一気に無くなった。
……うん、それはやばい。しかもこのメンツで料理はマズい。
「あ、あれレイ君……?」
そんな僕の様子を見て会長は少し不安そうな表情を浮かべた。
「よし、チャスは僕と一緒に料理。アルとミラ、アリーヌ先輩は火をつける様の薪集め。
ーー会長とラウラは先生達への報告書作成をお願いします」
「おっけ~!! 私の料理の腕を見せてやろう~」
「うっし坊ちゃんの頼みとあれば断るわけにはいかねぇな!! 枝だろうと大木だろうと持ってきてやるぜ!!」
「うん、お願いね。よし僕なりに完璧な振り分けーー」
「「よくないーー!!」」
「へっ?」
「待ってくださいレイ君!! アルマンダさんが料理担当なのは分かりますが……
ーー何でアルマンダさん以外の女性陣が料理担当じゃないんですかーー!!」
「だってチャス以外、料理出来ないでしょ?」
「「うぐっ……」」
僕のその発言でチャス以外固まる女性陣。
「まず会長とラウラは包丁正しく持てないでしょ? 2人とも包丁を持った際にこっちがハラハラしたんだけど」
前に2人の料理の腕を見ようとしたのだが腕を見る前に2人が指を切りそうだったので僕がストップをかけた。まぁ包丁を使えないだけかと思ったがそれ以外も見ていられなかったので僕は2人には料理を絶対させないと心に決めた。
「れ、レイ君、酷い……」
「お兄様は酷いですよ……」
よし、これで危ない2人を抑え込むことは完了した。さて、次は……
「で、ミラ。包丁は剣と違うからね?」
僕がその様に言うとミラは少しムスッした表情を浮かべながら
「何を言っているんだ、そんなの見れば分かるだろう」
と言うとミラは包丁を持ったのだが、その持ち方を見た瞬間僕は自分の発言が正しかったことを悟った。
「ミラ、その持ち方はサーベルだからね? 何をしようとしているのかな?」
「……ッ!? そうなのか!?」
「そこまで驚くことに僕は驚いているよ!! あとミラは包丁使って野菜切ったら、机ごと斬りそう……」
「ば、バカな事を言うな!! そんなの今まで2回しかない!!」
「あんのかい!! ってことでミラは大人しく木を切ってきてね?」
「う、うむ……そうしよう……トリスケール殿、頼む」
少し落ち込みながら隣に立っていたアルに声をかけたミラ。
「おう、 宜しくな!!」
「ねぇ後輩クン、私は何故かしら? 私よくお茶を入れているので他の3人に比べたら……」
「“比べたら”ですからね? 正直言いますと4人はドングリの背比べです」
アリーヌ先輩は会長達に比べたら少しはマシなだけであり、アリーヌ先輩は他の3人とは違うベクトルのヤバさである。先輩の場合は“これ入れたら美味しそう”という料理の初心者がやりがちな失敗を毎回してしまう。
「残念です……まぁお茶だけ用意しますかね。では今から準備をーー」
「アリーヌ先輩は薪拾いですから、サボろうとしないでください」
アリーヌ先輩が疲れそうな薪拾いをサボろうとする魂胆が見れたので僕はくぎを刺した。
「ちぇ……分かりましたよ~ミラさん、トリスケール君、行きましょう。はぁ……」
「んじゃあ行ってくるわ坊ちゃん」
「では行ってくる」
と言いながら3人は薪拾いに森の中に行った。
「じゃあチャス始めようか」
「任せたまえ~レイも教師への報告書作成でもいいんだよ? 私1人で人数分は作れるよ?」
飲食店の娘ということもあってチャスは手際が僕なんかよりもとても良い。彼女からしてみれば7人ぐらいの料理は簡単なのだろう。
「いやそうすると僕の立つ瀬がないからね……僕も料理側で頑張るよ」
「そうですよアルマンダさん、レイ君こう見えて料理の手際良いんですよ。私の右腕ですからね」
「はい、お兄様はお菓子だけではなくて普通の料理も作れるんです。流石私のお兄様です」
「……あの2人は何で自分が褒められないのに誇らしそうなのかな? あと2人とも先生への報告書作成忘れないでくださいね?」
「はぁ~い……私もレイ君の隣で料理したかったです……」
「私もお兄様の隣で料理をしたかったです……」
なんて文句を言いながら会長とラウラは渋々報告書に目を向けていた。2人とも会長と中等部主席というのもあって書類作成や処理は速いし正確。さっきの薪集めも結構良い人物配置だと思うし、ひょっとして僕ってそういうの得意なんじゃないかと僕ながら勝手に思う。だけどそんな事を言ったら全員に呆れられること間違いなしなので心に秘めておこうと思うのであった。
そして料理をし始めてしばらくして……
「にしてもレイ」
隣で鍋で野菜を煮ているチャスが声をかけてきた。
「ん? 何かな?」
僕は包丁で肉を切りながら目線は手元に向けたまま返事をした。
「レイって料理の手際良いよね~」
「飲食店の娘の君には負けるけど、それなりにやってるからね」
屋敷だと料理はいつも使用人の人達が作ってくれるので僕が作る機会はあまりないが、ラウラのためのクッキーや知り合いが来た際に作るお菓子は僕が作るのでそれなりに作る。まぁ前世でもお菓子作りだけは得意だったので昔取った杵柄みたいな感じだ。
「いやさっきから肉をスムーズに切ってるし、さっきの鍋に野菜を入れてからの手際なんて私の家に欲しいぐらいだよ~」
「褒めてもらって嬉しいな、でも飲食店の料理人か……やってみたいなぁ……」
「よかったら今度、私の家に手伝いに来てよ~。夏休みとか人手が欲しいんだよね」
「夏か……」
「ち、チャス様!! お兄様は夏は私と屋敷でお勉強です」
「違いますよラウラさん。レイ君は私とお勉強と生徒会の仕事があります」
と書類作成をしていたはずの2人から夏休みの予定が決められる僕。そんな中でも2人は書類作成の手を止めてないのが凄い。
「うげぇ……夏休みまで勉強かよ……」
まぁそれも僕が勉強が得意な方じゃないのがダメなんだろうけど。それでも夏休みは楽しみたいのである。海とか山に行くものありだし、一日中寝ているのもいいだろう。まぁ同じ家にラウラがいるので一日中寝るのは無理だが。
「まぁまぁ会長にラウラちゃん、愛しのレイが盗られて怒らないでよ~」
「べ、別にそんなんじゃないです!! お兄様が勉強が出来ないから中等部主席の私が面倒みるだけです!!」
「ぐふっ……」
「おやラウラさん、レイくんは高等部ですよ? 高等部の勉強が出来ないなら高等部生徒会会長の私が面倒みますから、貴方はご自身の勉強をしたらいかがですか?」
「にゃふ……」
「レイ、愛されてるね~こんな美少女に言い寄られーー」
「会長、ラウラ……いつもごめんね……迷惑かけて」
僕は2人からの言葉によって泣きかけた。
「そしてこっちは何故謝ってるの!?」
「兄でごめん……主務でごめんなさい……」
「なんか謝りながらも2人への言い方分けてる!?」
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