キャンプの予行練習 前編
アルが転校してきてしばらく経った後のとある放課後……
「今日の議題はこれから1ヶ月後に予定されているキャンプのことです」
と会長が今日の議題を言ってきた。
「は~い会長!!」
チャスが元気よく手を上げた。
「なんですかアルマンダさん?」
「キャンプって何ですか~?」
「この学園では高等部1年生がが学園内でキャンプをするんです。目的は2年生の修学旅行の前段階みたいな感じで対人関係や団体行動を学ぶことですね」
この学園の高等部では2年生に修学旅行がある。その前段階のような感じで高等部1年に学園の裏山を使ってキャンプをする。昨年、会長やアリーヌ先輩に話を聞いていたので少しは知っている。
「へぇ……そんなのあるんですか……」
高等部から入学してきたチャスは初めての事だろうから当たり前の反応だ。
「まぁチャス、キャンプって言っても学園内だよ。ほらここって敷地は広いからさ裏山も結構な広さあるんだね」
「うむ、あの山は結構鍛錬に使えるしな、皆で鍛錬だな分かった。鍛錬の内容は私にーー」
隣に座っていたミラが腕を組みながら頷きながら会話に入ってきた。
「いやミラ、学生のキャンプだよ? 厳しい鍛錬とかしないからね?」
ミラの基準だと大体の学生が付いてこれず序盤でリタイアするだろう。今まで何回もミラの鍛錬に付き合っていたがあれは本当に辛い。後にミラのお父さんに聞いたのだがミラがやっているメニューは現役の騎士団員が行っているのを
「……残念だ、無念」
見るからに落ち込むミラ。
「そこまで落ち込まなくても……僕で良ければ鍛錬付き合うから」
「ほ、本当か!!」
さっきまで酷く落ち込んでいたのに僕が鍛錬に付き合うと言ったら表情が一転して嬉しそうな表情になった。そんなに鍛錬に付き合う相手が欲しかったのだろうか。
「嘘は言わないよ。
ーーあっ、すみません会長……話脱線してしまって……」
僕が申し訳ないと思い、会長の方を見ると彼女は笑顔だった。良かった怒って……
「えぇ構いませんよ、主務クン。今日も相変わらずで私は安心しました……えぇ」
うん、怒っている、しかも結構。
……会長が僕の事を“主務”と呼ぶときは機嫌が悪い時だ。そりゃ自分が話していたのに僕達が話を脱線させたのだから。この後僕は会長の機嫌を取りに行くことが決定した瞬間である。
「すみません……会長お話をどうぞ……」
「で、話を戻しますが、一応そのキャンプでやる内容を毎年生徒会で事前に予行でやることになっています。そのため今年は私達がやります」
「フフ、後輩クンとお泊りですか……楽しみですね……フフ」
アリーヌ先輩の言葉に不意に背筋がゾクッとした。
「あの……アリーヌ先輩……先輩は何をしているんですか……あと怖いです」
「アリーヌさん? 女子と男子は止まる場所別ですから。あとレン君も変な想像しないことです」
「えぇ……僕何かしましたか?」
「会長権限です」
「そんな卑怯過ぎませんか!?」
「それで皆さん、2週間後の休日でキャンプの予行練習を行います。一応親御さんに許可をいただいてくださいね」
「僕の話は無視ですか!?」
と僕達生徒会のメンバーは2週間後に祝日にキャンプの予行練習をすることになった。
そして予行練習当日……土曜日の12時
僕達は校門の前に全員学校指定のジャージを着て集合していた。
「よし、皆さん。準備はいいですね」
と会長はその場に揃っている全員に向けて声をかけた。
「ええ、大丈夫よフローレンス」
「僕は大丈夫です」
「会長殿、自分は万全だ」
「元気で~す!!」
「俺も元気っす!!」
「全員いますね……よし大丈夫です」
全員から点呼の返事が返ってきたのを満足そうに頷いた。
「あれ、坊ちゃん、妹さんはどうした?」
その時アルが何かを思い出したらしく僕に尋ねてきた。
「ラウラは家でお休み中だよ。本人は来たがっていたけど流石にダメだって言ったら渋々諦めてくれた」
会長から話を聞いてからラウラは毎日僕に“行きたい”と言っていた。
昨日なんて彼女には珍しく駄々をこねていたのだが、来週チャスの店と買い物に付き合うことでなんとか納得してもらったのである。
「流石にラウラさんはまだ中等部ですから、まだ参加は早いですね。
……これで1人ライバル減りました」
……ん? ライバル?
「ライバル? 会長、ライバルってなんですか?」
僕が尋ねると会長はハッとした表情を浮かべて
「え、えっと……レイ君の気のせいですよ、えぇ気のせいです」
会長は少し慌てたものもすぐにいつもの会長モードに戻って返事をしていた。
「そうですか……? 確かに“ライバル”って聞こえたんですけど……気のせいか」
僕は昔から会長やラウラに“貴方は難聴なんですか!?”と言われてしまう時がある。どうやら僕はたまに耳が遠くなったりするみたいだ。
「えぇ……残念~レイの妹ちゃん可愛いから愛でたかったのにな~」
「えぇ私も残念ですけど、流石に中等部のラウラさんを呼ぶーー」
「--残念でしたねフローレンス様」
「ま、まさか……!!」
後ろから聞き覚えがある声がしたので振り向くとそこには……
「おはようございます、フローレンス様、お兄様、そしてお兄様のご学友の皆さま。ラウラ・ハーストンです」
「ラウラ!? どうしてここに!?」
「お兄様のいらっしゃる場所に妹ありです。お父様の権力使って高等部の校長先生に働きかけをしまして同行していいと許可いただきました」
……父さん、貴方は何をしているんの?
確かに僕達兄妹を大切に思ってくれるのは嬉しいけど……何をしているんだ。またバレたら母さんにぶたれるのに分からないのだろうか。
「ラウラさん……貴方って人は……!!」
会長は驚きながらもラウラを笑顔で声をかけてきた。
「フフ、フローレンス様。私抜きで何しようとしていたんですか……? 貴方の事ですから何をするか分かりませんからね?」
そんなラウラは少し意地悪そうな笑顔を浮かべて返事をしている。
……お兄様、ラウラの事が少し怖いよ?
「そ、そんな事するはずないじゃないですか!! 私は会長ですよ!! 全学生の模範となるべき存在です!!」
そして慌てている会長。
「そうですよねフローレンス様。そんな貴方は1人の生徒を贔屓なんてしませんよねぇ?
……させませんからね?」
「ぐぬぬぬ……」
悔しそうな会長とそんな表情と真逆に勝ち誇った顔を浮かべるラウラ。
……2人が何で揉めているのか分からない。
「ーーということでいつも兄がお世話になっております、妹のラウラ・ハーストンです。本日は皆さんと同行させてもらいます。未熟な身ですが宜しくお願い致します」
「おう、宜しくな!!」
「あぁ頼むラウラ殿」
「フフ、宜しくね将来の義妹ちゃん」
「よろ~ラウラちゃん」
「はい、皆さま宜しくお願い致します。
ーーそしてベスランド様、私は義妹にはなりませんからね?」
他のみんなには笑顔で返事をしたのだがアリーヌ先輩に対しては珍しく敵対心丸出しで睨みつける。
「あらら……残念ね」
「アリーヌ先輩……貴方は何を言っているんですか……」
「あら私は本気よ? 私と後輩クンが付き合えば、ラウラさんは私の義妹になりますよね?
ーー何か間違った事を言ったかしら?」
“私何か間違ったこと言ったかしら”みたいな態度で自慢げに言うアリーヌ先輩。
「いやいやその“付き合う”って前提がおかしいですって……
ーーと、とりあえずそろそろ行きませんか会長?」
ここでこれ以上喧嘩はマズいと思い、会長に声をかけたのだが……
「くぅぅぅぅぅ……私の作戦が……!!」
会長は顔を真っ赤にして悔しそうな表情を浮かべて、足踏みしていた。
……そんなに悔しいのだろうか、まぁそもそも何悔しがっているのか分からないけど。
「あ、あの会長……? だ、大丈夫ですか?」
僕が声をかけるとハッとした表情を浮かべていつもの会長モードに戻った。
「あ、あぁ!! そ、そうですねレイ君、そろそろ行きましょうか。えぇそうしましょう!! 作戦はまた練り直せばいいですしね!!
ーーさぁ皆さん、行きますよ!!」
空元気感丸出しでみんなに指示を出す会長。
「そうですね行きますか。
あと作戦って何ですか……?」
僕はそんな疑問を考えながら先に歩き出した会長の後ろについていくのであった。
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