ファーストエンカウント~フローレンス前編~
僕は転生した後、魔法の適性を見てもらったのだが攻撃魔法と防御魔法どっちも適正がないみたいだった。適性がないだけで頑張れば少しは出来ると思ったのだが両親やメイド達が魔法を使っているのを見てやり方を真似したのだが全く出来なかった。どうやら“レイ・ハーストンが魔法を使えない”というのは原作通りみたいだ。
その様子を見たメイドからは“これから頑張っていきましょう”と笑顔で言われたのだがその笑顔が僕には結構辛いのである。
「本当にどうするんだ……僕は……」
まさか一番覆るかもしれない可能性を真っ先に潰され、しばらく落ち込むのであった。
それから数日後……
僕は両親に連れてこられパーティーに参加していた。
生前の僕も家がそれなりに裕福だったのでパーティーに何回か参加したことがあるが、どうも僕はあの集まりが苦手だ。僕自身人と話すのが苦手なのもあるが、何よりも父親の権力にすがろうと明らかにおべっかを使ってくるのをがどうもダメなのである。
そして転生後の世界のパーティーでも同じことが起きるのだが、この世界の父親は国のナンバー2。生前のころよりもおべっかを使ってくる大人や子供が沢山いる。その態度が明らか過ぎて僕は気分が悪くなった。
「どうしたのレイちゃん?」
そんな様子をみた僕の母親が心配そうに見てきた。今のところ母親とは良い関係を気づいていると思う。
……父親とは全くだが。
「ぼ、僕は大丈夫だよ、ママ」
「そう? 無理は駄目よ?」
「うん、大丈夫。少しお外行ってくる」
「分かったわ、 気をつけてね?」
「う、うん」
僕は母親から許可をもらいパーティー会場を出た。
「転生しても人混みは苦手だったなぁ……」
どうも僕はあの人混みは苦手で、それは転生してレイ・ハーストンになったとしても変わらないようだ。確か原作だとレイはパーティにしょっちゅう参加していたはずなのでここは原作通りじゃない。
……あのクソ神め、変なところだけ原作通りにしやがって。
なんて僕を手違いで死なせた挙句、転生先でも手違い……かどうか分からないが悪役キャラに転生さてた神のことを恨みながら庭を歩いていた。今回のパーティー会場は僕の屋敷なので広大な庭って言っても自分の家の庭なので迷うはずがない。ちなみに僕自身はこの庭は結構気に入っている。
(僕、バットエンド回避したら死ぬまで庭いじりしていたいな……)
「ーーうぅ……」
「だ、誰っ!?」
誰かの泣き声がいきなり聞こえたので、その声をした方を見るとそこには僕と同い年ぐらいの金髪の女の子が体育座りで泣いていた。
「うっ、うぅぅぅぅぅ……」
「ど、ど、どうしよう」
いきなりの事で慌てる僕。そんな僕に気づかず泣き続ける女の子。
……とてもカオスな状況である。
「あ、あの……」
僕は勇気を振り絞って声をかけた。
「え、わたしぃ……?」
「う、うん君だよ……? 僕はレイ・ハーストン。君のお名前は?」
「ふ、ふろーれんす・らいしんぐ……」
「えっ本当!?」
「わ、わっ!?」
僕が驚きのあまり大きな声を出したため目の前の女の子はとても驚いた様子をしていた。目の前にいるのがメインヒロインの1人であるフローレンス・ライシングなのだから。
(というか小さい頃の会長可愛い……!! そりゃ将来美人になるよなぁ……)
生徒会長の頃の姿がゲームでは殆どで彼女の幼少期の頃の姿はあまり見ないので、この姿は言い方が悪いけどレアだ。でもこの頃の姿から将来有望なのだと分かる。
……先に言っておくが僕はロリコンではない。断じてない。
「な、なに……?」
「ご、ごめん……でも何で君がここにいるの?」
「だ、だって……パパとママがぁ……」
とここに来た理由を話し始めた。
どうやら両親から習い事や勉強しろと言われて遂に今日我慢の限界がきたらしく、パーティー会場を出てこの庭に逃げてきたらしい。
「おべんきょういや……あそびたぁい……パパもママもきらい!!」
「ふぅん……」
なんともまぁ子供らしい理由なのである意味安心した。
とフローレンスはふと僕の顔を見てきた。
「ねぇあなた、このおいえのこどもよね?」
「う、うんそうだけど……」
「ならわたしをあんないして!! つまらないの!!」
「えぇ……」
この子は自分で逃げてきていきなり“つまらない”と言うとは。この年にしては度胸が据わっているな。
……多分、何も分かっていないだけだろう。まぁ庭を案内するぐらいなら僕の気分転換にもなるだろうしいいかなと思う。
「さぁあんないして!!」
「うん分かった、どこ行きたい?」
「やった!! わたしたのしいところいきたい!!」
「……難しいなぁ」
“おまかせ”って一番困る答えだと思う。
だってこっちがおすすめのところを紹介してもその人自身が気に入らないと文句を言うだろう、それに対しての答えを考えるのが面倒だ。
「ねぇねぇはやくはやく!!」
「はいはい、じゃあ行こうか」
僕はフローレンスを連れて家の庭を案内することになった。
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