身支度と選択
「魔女様行っちゃったね」
「そうだね」
ミィと手を繋ぐ。これからのことを思うと気が重くなる。
私たちに残された道は少ない。
近くにある村に助けを求めるか、三人でどうにかして生き残るか、このまま朽ち果てるか。
パッと思いつくのはそれくらいだ。最後の選択肢はないから、選ぶとしたら最初のやつである。
魔女様はいくつかの村を作っている。そこに住む人の相性があるから交流する機会はなかったけれど、場所だけは地図があるから把握できている。
一番近い場所でもここから半日は歩くことになるから出るなら急ぐべきだ。荷物をまとめてすぐに出れば暗くなる前には着くことができる。
何が残っているのか不明ではあるけれど家に戻って身支度しなければならない。
食欲のない私たちは見つけた食糧をまとめてからカバンに入れて持っていく。両手では持ちきれない量だし、放置しておいて鳥型の魔物に空から奪われたら元も子もない。安全な場所に運んでおかないといざ食べる時が大変だ。
「こんなところ。かな」
家は原型を留めていた。荒らされた形跡はあれど誰かが隠れていないかの確認のためにしか入っていないのかあちこち壊された様子はなく。隠していた食糧や服などは無事であった。保存食が多いのでしばらくは食べ繋げることはできる。
水も確認のために井戸を見てみたが、毒を入れられた痕跡はなく普通に飲めるようであった。そういうことに目敏いシフィに無理を言って来てもらい調べたから安心だ。彼女は飲める水を見極めるのが得意なのだ。探せるので一緒に来てくれたら助かるけれど、自由気ままな妖精のシフィを拘束はできない。これからは自分たちで何とかしないといけないだろう。
「
「また大きなカバンを持ってきたね」
苦笑いしてしまうほどに大きなカバンは魔女様がミィに与えた特注品で、私たちの中ではミィしか持てないほどの重量が入る。いくつか種類があるなかで特大のものを背負ってきた。
何か入っているのが分かるが、適当に入れているようで変な棒が顔を出していた。
整理するから置きなさいと床を示せば、ズンッと明らかにカバンが出すとは思えない音を鳴らす。
中から出てくるのはミィが宝物と称して集めてきた遺跡のガラクタが主であり、荷物でしかなさそうなものばかりだ。中には使えそうなものもあるが、明らかに不必要な木の枝や金属の塊を弾いていく。
「
「いつかここに帰ってくるため。大切なものがあれば帰りたくなるでしょ?」
「そっか!!」
納得しているようで、これもこれもと選択して抜いていく。
笑顔を浮かべるミィには悪いことをしている気持ちになる。
帰って来れないかもしれない。それでも、心残りを作りたいと考えてしまう自分の思考が嫌になる。それに、荷物が減ればその分入れられるものが増える。入れられる食糧は限られているので少しでも持っていきたいという打算が働いている。
幼いミィを騙しているようで心苦しくなるけれど、食糧を渡して私たちの生活を保障してもらう必要があるのだ。
自分自身の選択に迷いはある。
もっといい選択肢を選べるのではないか。そう思っていても、すでに魔女様に頼る道はない。帰ってこないと断言されている以上。保護した場合は他の村に預けるのだろう。
私たちとは違って、馴染めるはずだし······
「これから、どうするの?」
「ルナ姉と相談かな」
一つしか回答を用意していないから相談も何もないけれどね。
「なに? 相談事でもあるの」
壊されて閉じない玄関からひらひらと手を振るルナ姉がそこにいた。
憑き物が落ちたようなすっきりとした表情のルナ姉に私は困惑しながら首を縦に振る。
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