第1話

狩野かのさん!今度、望月もちづき 怜雄れいさんのでる映画の広告で使うポスターのデザインの仕事があるから狩野さんが担当してくれない?』


上司から突然言われた言葉に驚きを隠せない私。

『いやー、僕は今別の依頼とかがたくさん入ってて、しかも狩野さんって一回なんかの会議で望月さんの会ってなかった?』

『(いやいやいや、会いましたけど?でもあれはちょっと見かけたというか、何なら私居てもいないような感じだったし、あいつがいる会議に参加したくないよー)』

やりたくなさげの顔をした私を見て上司は、

『このデザインで気に入ってもらえれば、うちの会社は有名になる。

狩野さんも昇進のチャンスになるかもよ?』というので、

このデザインが終わればもう関わらなくなるだろう、と思い引き受けてしまった。

この判断のせいで私とあいつがあんなことになるなんて思ってもみなかった。




さっそく一回目の打ち合わせがあった。

いろんな大人が本気の作品を作るぞ!という熱意に溢れていた。

デザイン案を何個か用意しそれを見てもらう、訂正するところがあれば訂正をしたり、良さげのものは候補に入れてもらえる。

このようにして、はじめは順調に打ち合わせが進むと思っていた。

だけど、あいつがいるから打ち合わせはなかなか決まらない。

案を出しては文句をつける。

「俺がきれいに映ってない」、「なんか違う」、「俺の好みじゃない」などと

とてつもない文句だ。

本当は一時間半ほどでだいたいのデザインが決まる予定だったが一時間以上伸びた。


終わってからさすがにしびれを切らした私は、あいつに直接注意をすることにした。

ここにきて、私のメンタルの強さの出番が来た。

「望月怜雄さんですか?打ち合わせのことで少しお話が、、、」

「あぁ?、なに、俺に謝りに来てくれたの?」

「打ち合わせの時の態度!有名人だからって調子に乗らない方がいいと思います。」

「はぁ、うぜーばばあに絡まれたんだけど」

予想以上の性格の悪さに呆れながら、

「ばばあで良いですから、言葉遣いとか気を付けてください、そのうち撮影中とかにぼろがでますよ?」

だが、私の言葉に聞く耳を持たずに去っていった。


『案外ああいうやつも、おもしれーかもな(笑)ばばあだけどもてあそぶのには十分だろ(笑)』


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