第150話 ロータルとロッテの知る真実


「へぇ~ それでリーフちゃん、こんな可愛い色になったのね…」


「リーフは元々可愛い新緑の色だったわよ」


「あはは、そうね、元々の色も可愛かったわ、でも今の色も女の子っぽくって良いって事よ」


 私たちは今、お茶室でお茶をしながら、リーフに起きた出来事をマルティナに説明している。


「マルティナ、これ、美味しいねっ!」


 リーフが大王くじのお菓子を一口かじって、マルティナに微笑む。


「マルティナお姉ちゃん、本当に美味しい!」


 ロッテもお菓子を食べて喜んでいる。


「えへへ、美味しいでしょう~ まだまだあるからね~」


 マルティナは二人に微笑んで答える。


「ねぇ、マルティナ…」


「なに?レイチェル」


 マルティナはお茶を一口含んで味わってから答える。


「どうしてこんなにロッテと仲良くなれたのよ…」


 ロッテは普通の子供のように、はしゃぎ声を上げながら、マルティナの隣でお菓子を食べている。


「どうしてって… 話をしようとして捕まえようとしていたら、いつの間にか鬼ごっこになっていて、そしたら、こんなに仲良くなっていたのよ…」


「はぁ~、私の場合はいつも顔を見ただけで逃げ出されていたのに…羨ましいわ…」


 マルティナは子供に好かれるフェロモンでも出していて、私は子供に嫌われるフェロモンでも出しているのであろうか…あぁ、そういえば、ロッテは私に憑りつくモノが見えるから私を避けていたのであった。やはり、嫌われるフェロモンと同じである。


「そういえば、ロッテ」


「なに? レイチェルお姉さま」


 ロッテは銀色の髪を揺らしながら首を傾げる。


「私がここにいるのに何故、逃げ出さないの?」


「だって、マルティナお姉ちゃんが、レイチェルお姉さまのそれを見ても逃げ出さないから、私も側にいても平気かなと思って」


 私はその言葉を聞いて、無言でマルティナに向き直る。


「マルティナ、とりあえず礼を言っておくわ、ありがとう」


「えっ…そんなことで礼を言われても…」


 マルティンはあははと苦笑いをする。


「ところでロータルの方はどうしたの?」


「一緒に鬼ごっこをしていたのだけど、あの子どこ行っちゃったんだろ?」


 マルティナがそう言った時、部屋の扉が小さく開いて、そのロータルが姿を現す。


「あっ、ロータル君、どこに隠れていたのよ」


「マ、マルティナおねぇちゃん!!」


 ロータルはそう言うと、マルティナの所へ駆け出して行って、その胸元に飛び込む。


「えっ?えっ!? どうしちゃったのよ!? ロータル君、もしかして探し出せなかったことがそんなに寂しかったの?」


 マルティナは戸惑いながらも、ロータルの背中に手を回して抱きとめる。


「違う…怖かったの…」


 見るとロータルは青ざめており、小刻みに肩を震わせている。


「怖かったってなにが?」


 ロータルは相当怯えているのか、押し黙って震え続ける。


「ロータル、黙っていては分からないわ、マルティナも困っているでしょ?さぁ、言って見なさい」


 私が促すと、ロータルは小さな震える声で話し始める。


「あ、あの…同じ顔の人たち…」


「あの同じ顔の人たちって、セクレタさんの所の転生者たちね、確かに同じ顔、同じ姿で不気味だけどそこまで怖がるほどの事では…」


 私がそう言うと、ロータルはふるふると顔を横に振って否定する。


「違う…そうじゃない…」


「では、何かいたずらして怒られたの?」


「それも違う…」


「違うばかりでは分からないわ、何があったのか話してくれる?」


 私が問い質すと、ロータルは小さく頷いて話し始める。


「僕は鬼ごっこの時に、表の荷馬車の中に隠れていたんだ…」


「あぁ、それでいくら屋敷の中を探し回ってもいなかったのね…」


「うん、ごめんね…マルティナお姉ちゃん」


 ロータルはマルティナの言葉に小さく謝る。


「それで、ずっと隠れていたら、同じ顔の男の人たちが来たんだよ」


「それで怒られたの?」


「ううん、違う…頭を撫でながら飴玉を貰ったの」


 あれ、怒られたのではない?


「良かったじゃないの、どこが怖いのよ?」


「あんまりしつこく、頭を撫でてくるから、僕、女の子じゃないよって言ったんだよ」


「言ったらどうしたの?」


「そのまま、無言で微笑みながら、より一層、頭を撫でて来たんだよ…」


 ロータルは涙ぐみながら話す。


「こわっ!」


 その話を聞いていたマルティナが声を上げる。


「女の子はそんな目で見られることは慣れているけど、男の子でそんな目で初めて見られたら怖いでしょう…よしよし、怖かったねロータル君」


 マルティナは怯えるロータルの背中をよしよしと擦ってやる。


「あの人たち…リーフだけではなく、弟のロータルまで魔の手を伸ばしかけていたのね…」


「えっ?私、何もされてないよ?レイチェル」


 リーフは自分の名前に反応して私を見上げる。


「色を変えられてしまったじゃないの…まぁ、命は救ってもらったけど」


「そう? 私、この色嫌いじゃないよ、逆にちょっと好きかも」


 リーフは髪や瞳だけではなく、服や羽も若干ピンクがかっている。それだけならリーフの色違いというだけで問題ないのだが、なんというか、女の私でも感じ取れる様な、色気というものをリーフが醸し出す様になってしまっている。


 そういえば、まだ聞いていなかったがリーフが犯したというタブーの事を聞き出していない。リーフが恐らく私の為に犯したであろうタブーを聞き出さない事には、今後の注意もそして、リーフに対する謝罪も出来ないのだが、今はロータルとロッテがいるのでやめておこう。


 それよりも、ロータルとロッテがこうして私の側にいる間に、二人も聞き出さないといけない事がある。二人は『見える』人間で、しかも、私が転生者であることまで見抜いている節がある。その事を両親に話したかどうかを聞き出さないといけない。


「ねぇ、ロータル、ロッテ」


「なーに? レイチェルお姉さま」


「なに? レイチェルお姉さま」


 二人は私を見上げて返事する。


「その…貴方たちは、私に憑りついているものが見えていたり、私が以前の私とは違う事がみえているのでしょ?」


 私は躊躇いがちに尋ねる。


「うん、見えているよ、前のお姉さまとも少し違う事も…」


 ロッテが答える。


「その事を誰かに話したりしたの?」


 声を出す喉が乾いた感じがする。


 二人は、私の言葉に首を横にふる。


「言ってないのね?」


 二人は、頭を縦に振る。私は後ろめたさはあるが、ある意味、安堵する。


「どうしてか聞いてもいい?」


 私が尋ねると、ロータルとロッテの二人は目を合わせてから口を開き始める。


「だって、お母さまが悲しむのだもの…」


 どうして、ここで母が悲しむと言う言葉が出てくるのだろう…


「どういうことなの?」


 私は手に汗ばみながら尋ねる。


「あぁ、レイチェルお姉さま、覚えてないんだ…」


「私が覚えてないって、何の事を…?」


 私が覚えてないって…私の覚えている事は、転生してきた2年前の事まで、それ以前の事は一部の事は思い出せたが、ほとんどの事は霞が掛かったの様に思い出せなかった。


 ならば、私が覚えていないという事は、私が転生する前の事なのか…

 母が私に一体、何をしたというのか…


「お母さまがレイチェルお姉さまの瞳を封印したことよ」


「そうそう、レイチェルお姉さまが木にぶら下がる前にしたんだよ」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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同一世界観の作品

異世界転生100(セクレタさんが出てくる話)

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※はらついの次回は現在プロット作成中です。


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