第149話 困惑する事実

「えっ? 私の姿って…あれ、私、なんだか桃色がかっている…どうしてだろ?」


 以前のリーフは鮮やかな新緑の様な緑色であったが、今では全体的にピンクがかった色になっている。


「大丈夫なの? リーフ!」


「うん、大丈夫そうだよ、どこも悪くないよ」


 リーフはにっこりと微笑んで答える。


「どうやら、成功したようね…よかったわ」


 セクレタさんが私たちの様子を見て近づいてくる。


「信じられんことだが、本当に復活したようだな…リーフ、おめでとう」


 ディーバ先生も困惑しながら私たちの所へやってくる。


「あっ、ディーバだ! ディーバっ!!」


 リーフはディーバ先生の姿を見つけると、私の手元を離れディーバ先生の所へ飛んでいく。


「あっ、ちょっとリーフ!」


「わーい! ディーバ! ディーバ、ありがとう! 私の為に力を注いでくれたり、ベッドも作ったりしてくれたのでしょ? ありがとう!」


 リーフはそう言って、ディーバ先生の肩にとまって顔にすり寄った。


「あぁ、気にするなリーフ… それより、ノルン女史、詳しい事情を説明してもらえるか、正直、訳が分からなくて困惑している」


 先生が困惑しているのは、リーフが復活した仕組みなのか、それともリーフの先生に対する馴れ馴れしい態度なのか、どちらであろう?


「そうね…説明は必要だわね…」


 セクレタさんは躊躇いがちに話し始める。


「リーフは確かにタブーを犯した、それは精霊にとっての事… でも、他の存在であればそれはタブーでは無くなるのよ」


「まさか…リーフの本質を変質させたのか!?」


 セクレタさんは小さく頷く。


「そうよ、あの人たちの大量の魔力を浴びせて、純粋な精霊体から、人間寄りに変異させたのよ」


「えっ!? では、リーフは精霊ではなくなったという事なんですか?」


 リーフは精霊ではなくなったというなら、何になってしまったのであろう…


「そうね、精霊というよりは、今は妖精に近いわね…それも人間に近い妖精に…」


「ちょっと、待ってくれノルン女史、魔力を与えて性質が変異するというならば、私もマルティナも魔力供与を行っていたのだ」


「ディーバ様が行っていた供与は、自身の力をリーフの波長に合わせて供与していたのでしょう?だったら、リーフの性質に変異は与えないわ」


 セクレタさんはディーバ先生の問いに答える。


「でも、先程の魔法陣を使った魔力供与はどうなのですか?」


 私は魔法陣に関しては詳しくはないので尋ねる。


「先程の魔法陣は元々、リーフの一部だった力を元の彼女に注ぎ込むものだったので、力の波長を変換するものは含まれていなかったのよ」


「うむ、確かにそうだ… そこまで見抜いていたのか…ちょっと、リーフ、離れてくれないか?」


「どうして?ディーバ」


 どういう訳か、リーフはディーバ先生の顔から離れない。


「それで、リーフが精霊から変異してタブーを犯したことによる、粒子崩壊から免れた事は分かりましたが…どうしてピンク色になっているんですか…?」


 ディーバ先生とリーフの様子を横目で見て、もやもやしながらセクレタさんに尋ねる。


「…言わなきゃダメ?」


 セクレタさんが伏目勝ちに私をチラチラと見る。


「いって下さい…お願いします…」


「リーフの性質を変異させるために、膨大な魔力が必要だったからあの人たちにお願いしたのだけれど、あの人たちの願望が混じってしまったようなのよ…」


「あの人たちの願望って…?」


 私があの男性たちをちらりと見ると、羨ましそうにディーバ先生とリーフの姿を見ている。


「そ、そうね…あの人たちの願望のせいで…フェアリーやピクシーの様な妖精よいうよりは…その…インプやサキュバスに近い存在になってしまったかも…」


「なんてことをしてくれたんですか!! セクレタさん!!!」


 リーフを救ってくれた恩人には変わりないが、私は怒りの為思わず声を上げてします。


「だから、最初に恨まないでって言ったでしょ…」


 確かにそう言われるとそうだ。セクレタさんは確かに恨まないでと言っていた。しかし、どうなんだろう…この私の憤りは…普通の人形を直してとお願いしたら、萌えフィギュアに改造されて返された気分だ…しかもやたら性的なものに…


「ノルン女史、貴方の推察が正しいのなら、真人間の魔力を与えれば、リーフは元のリーフに戻っていくということになるのだな?」


 ディーバ先生は、リーフを顔に侍らせながら言ってくる。


「えっ、私はこのままでもいいよ、ディーバ」


「いや…それでは私が困る…本当に困る」


 その言葉を述べるディーバ先生の目は本気だった。


「確かに今の状態ではなくなると思うけど、元の性質になるのとは異なるわね、恐らく、魔力を供与した人物の性格に近くなると思うわ」


「では、私が魔力を供与すれば、リーフは私の様になるというのか… それはそれで優秀な助手が増えるようでいいな」


「…やめてください…ディーバ先生…」


 今度は私が本気で頼み込む。


「それより、リーフを元に戻す方法はないのですか?」


「そうね、リーフを元に戻したいのなら、リーフが産まれたこの地に、苗木を植えてやるのが一番いいのじゃないかしら…」


 そうだ、私の知っている以前のリーフはこの土地で育った自然の精霊である。ならば、もう一度、この地の魔力を吸わせてやれば元のリーフに戻るかもしなれい。


「でも、元に戻ったらまた、タブーで崩壊するってことはないのですか?」


「それは大丈夫だと思うわ、恐らく今の状態になった時にリセットされていると思うから、仮にまたタブーによる崩壊が始まりそうだったとしても、また本質を人間寄りにしていけば大丈夫だと思うわ」


 そうか、完全に同じとはいかないのかも知れないのか…


「レイチェル君、生きとし生けるものは、日々変化し成長していくものだ、なのでいつまでも同じ自分ではいられない。リーフもそうであると思いなさい」


「そうですね…分かりました…」


 私は小さく頷いてディーバ先生に答える。


「セクレタさーん!」


 私たちが話をしていると、魔力を使い切ってへたり込んでいる転生者達から声が掛かる。


「なにかしら?」


「今日はもう魔力を使い切ってへとへとです…」


「そうね、今日の貴方たちの作業はここで切り上げましょうか、後は私が測量して、施設の設置場所を決めておくわ、貴方たちは休んで頂戴」


「分かりました」


 そうして、転生者たちが撤収しようと腰をあげると、壁の入口から、子供の可愛い黄色い声が響き始める。


「きゃー、掴まっちゃうわ!」


「ほらほら~捕まえちゃうぞぉ~ ほーら、捕まえた!」


「マルティナ…なにをしているの?」


「えっ? あっ…」


 そこにはロッテを抱きかかえたマルティナの姿があった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei


ブックマーク・評価・感想を頂けると作品作成のモチベーションにつながりますので

作品に興味を引かれた方はぜひともお願いします。


同一世界観の作品

異世界転生100(セクレタさんが出てくる話)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935913558

はらつい・孕ませましたがなにか?(上泉信綱が出てくる話)

https://kakuyomu.jp/works/16816452220447083954

もご愛読頂ければ幸いです。

※はらついの次回は現在プロット作成中です。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る