第113話 順調にいくものといかないもの
翌日、私は上機嫌で学園に登校していた。
オードリーとトゥール卿のすれ違いの問題も解決できたし、コロン嬢との仲も深める事が出来た。マルティナの問題も実行犯がいなくなったので暫くは大丈夫であろう。様々な事が順調に進んでいる。
あとはミーシャとテレジアの事であるが、ゲームのシナリオを夢の共有という事で理解し合った今なら、ミーシャについては、その意思を曲げる事は出来ないが、私とマルティナ、そしてコロン嬢でシナリオの先回りをして悲劇を回避する事ができると思う。
テレジアの祖父のカイさんの事についても、ディーバ先生と相談すれば、何か会った時に対処できるかもしれない。もしかすると、トゥール卿の心臓の事もディーバ先生であれば、治療できるかもしれない。丁度、今日は神聖魔法の授業がある。授業の後に先生に相談してみようと思う。
「レイチェル、えらく上機嫌ね」
となりのマルティナが私に声を掛けてくる。
「えぇ、だって、色んな事が上手く行き始めているのよ、上機嫌にもなるわ」
「そうね、私はちょっと寂しいけど、オードリー様も、親御さんの所へ帰られたし、コロン様のゲームの内容を夢という形で知ったから、死亡フラグ回避はやりやすくなったし、後、私の付きまといもなくなったわね」
マルティナは指折り数える。
「そうそう、後はミーシャとテレジア嬢だけよね」
「あれ?ミーシャは兎も角、テレジア嬢ってなにかあったっけ?」
マルティナは首を傾げる。
「あぁ、学園での問題は起きていないし、マルティナはテレジア嬢と話す機会が少ないから、分からないのも当然ね」
「それで、何があるの?」
マルティナは首を傾げたまま、私を覗き込んでくる。
「ゲームの話では、私がテレジアの婚約者のウルグと近づく事でしか発生しないけど、ウルグの婚約者の立場を守るために必死になるイベントがあったでしょ?」
「あぁ、あの温厚だった先生が、結婚適齢期をすぎてヒステリックに成り始めるようなあれね…」
マルティナから物凄い例え話が出てくる。
「ちょっと、なによその例え、でも言いえて妙だわ… 兎に角、そのヒステリックになる理由がテレジア嬢の祖父にあるのよ」
「えぇっと…そんな人物、ゲームの中にでてきたっけ?」
「うーん、存在を仄めかすか、名前ぐらいしか出てこなかったかもしれないわね。とりあえず、その祖父が色々と苦労して持ってきた婚約話だから死守しなくてはいけないのと、その祖父が重傷か重病かは分からないけど、ウルグのウリクリ家の力を借りないと治療できなくなる状況に陥るのよ。だから、猶更おじいさんの為にテレジア嬢はウルグと結婚しようとするのよ」
「へぇ~そうだったんだ」
マルティナは他人事の様に答える。まぁ、確かに他人事ではあるが…
「そうだったんだって、マルティナ、貴方、ウルグ推しっていってなかった? それなのにしらなかったの?」
「逆にウルグ様しか目に入らなかったから、知らなかったのよ」
マルティナの返答に少しあっけにとられる。
「でも、確かにライバルキャラの事を良く知ろうとは思わないものね…」
そういって一人納得する。
「で、実際にどう対処していくの? 学園で会う事のできるテレジア嬢ならなんとか出来るけど、そのおじいさんの事って学園にいたらどうしようも出来ないじゃない」
「うーん、確かにそうなのだけれど、私が診療所に行くときに、必ずその方がテレジア嬢を迎えにくるから、その時に様子を見る事は出来るし、イベントの内容上、すぐに命を落とすって内容ではないから、そんな状況に陥ったらディーバ先生になんとかしてもらおうと思っているのよ」
「ディーバ先生になんとかしてもらうって…ディーバ先生はレイチェルにとっての猫型ロボットみたいだわね…」
「ちょっと!マルティナ、その例えは止めてくれる? それでは、私がノブ太君みたいじゃないのよ」
私はそんなに愚かで頼りなさげにみえるのであろうか?
「それなら、ディーバ先生に頼らずにその方を治して見るとか?」
「イベント通りの内容で、おじいさんに何かがあったというなら、治療魔法が得意なテレジア嬢が自分の力でなんとか出来ないから問題なのよ、とても私の治療魔法では…あっ…よく考えたら私、ノブ太君かも…そして、テレジア嬢が出木杉君か…」
自分で何かしようとは思わず、誰かに頼ってばかりで、非力な自分に嘆かわしく思い、肩を落とす。
「まぁまぁ、それは仕方がないわよ、私たちは転生してまだ日も浅いのだし、ずっと前から続けている人と比べたら見劣りするのは当然よ、帰ったら新しいお菓子あげるから、レイチェル、元気出そ」
「あ、ありがとう、マルティナ」
お菓子程度で元気を出すと思われているのも嘆かわしいが、どんなお菓子が出るのかと期待してしまう自分自身も腹立たしい。
「とりあえず、テレジア嬢の事はディーバ先生の力でなんとかなりそうだけど、問題はミーシャよね…」
「うん、とりあえず今の段階では解決方法が見えないわ…本人がエリシオの事を諦めてくれたらいいのだけれど」
「やっぱり、私たちでミーシャを説得する?」
「うーん、それはどうなんだろ…私たちが寄ってたかってミーシャを説得したら、多分、ミーシャから見たら私たちも頼れない敵の様な存在に映ってしまうかもしれないわ」
皆でミーシャを説教するように説得している様子が目に浮かぶ。
「あぁ…それはきついかも…私も一度、兄にそれをやられたのだけれど、私の為に言ってくれているのは分かるけれど、やっぱし、その後、話しづらくなっちゃうのよね…」
「だらか、コロン様が仰っていた通り、私たちはミーシャ自身が諦めるまで、側で見守ってあげて、辛い時には話を聞いてあげる事ぐらいしか出来ないのよね…もどかしいけど」
でも少し、心の中で、テレジアの時と同じように、コロン嬢でも説得が無理なのだから、私では到底無理という、始める前からの諦めがあるのではないかと考えてしまう。
「あっ先生がきたわ、レイチェル、話はまた帰ってからにしましょう」
「そうね、帰ってからゆっくりしましょう、マルティナ」
しかし、この時の私は帰ってからミーシャの話など出来る余裕がなくなる事を知らなかった。
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