第101話 惨劇
「どうすんだよ、これ、目標以外の人間捕まえても金にならんぞ」
声が聞こえる…
「しゃあねぇ~だろ、俺達の事を嗅ぎまわって来たんだからよ」
男たちの声だ… 恐らくマルティナを攫い、私に眠り薬を嗅がせた奴らであろう…
「じゃあ、こいつらどうすんだよ」
意識は覚醒し始めている、しかし身体は動かない。まるで金縛りの様な状態だ…
「依頼は目標のお嬢ちゃんを傷者にすればいいだけだが、もしかするとこいつらが人を呼んでるかもしれねぇ~から、ゆっくり楽しめないぞ?」
やはり…マルティナを辱めるのが目的だったのか…でも、話を聞く限りマルティナはまだ辱められていないようだ…良かった…
「じゃあ、どうすんだよ、コイツらごとどこか別の場所に移動するのか?」
「いや、流石にそれは無理だ。こんなお荷物を抱えたままじゃあ、逃げられねぇよ」
そうだ、私たちを置いて逃げればいい…
私がそう考えた時に、この部屋の中に別の男が入ってくる音がする。
「おめぇら、何もたもたやってんだよ!」
「あ、兄貴! いや、こいつらがつけて来たみたいで…」
別の威勢のいい男の声が響き、今までの男たちがへりくだって答える。
「ちっ! おめーがガキ一人攫うのに下手うったせいだろうが!」
「す、すみません、兄貴…で、どうしやしょう?」
頼むからもう諦めて、ここから去って…
「そりゃーもう始末するしかねぇだろう、どうせお前ら目的のガキを攫う時に顔を見られてんだろ? 目的のガキを辱めるのは、時間がねぇから裸にひん剥いときゃ、えらい貴族のガキだ、それだけで汚名になって嫁にいけなくっちまう」
始末! それは私やシャンティーを殺すって事!? マズイ! そんな短絡的な考え方をするなんて!! でも、身体は薬のせいで動かない!!
「新入り、おめーだったな? ガキを誘拐する役目だったのは。おめーが責任もって始末白…」
「むぅ~! むぅ~!! むぅ~!!!」
「うっせいぞ!! ガキ!! 殺すのはおめーの事じゃねぇんだ!! 大人しくしてろ!!」
今の呻き声はマルティナ!? マルティナもここにいるの!?
誰かを殴りつける音が響き、マルティナの呻き声が静まる。マルティナが騒いだ為に殴り飛ばされたようだ… 酷い…
そして、床の上に硬い金属が投げられる音が響く。
「おう、新入り、そいつを使え、首の所を掻っ捌けば一発で済む」
「兄貴ぃ~!! 俺、まだ人を殺した事がねぇーんだ…」
「あぁ? やれねぇって言うのかよ、じゃあ代わりにお前が死ぬことになるんだが、いいのかよ」
床から金属を拾い上げる音がして、誰かが私に足音が近づいてきて、ゴクリと唾を呑み込む音が聞こえる。
「す、すまねぇーな…でも、追ってきたおめーらが悪いんだぜ…」
私の髪が掴まれて床からエビぞりに起こされる。そして、引き起こされた首筋に冷たい金属が当てられる感触を感じる。
あぁ…ダメだ…私の二度目の人生はここで終わってしまうのか…せめて…マルティナ…マルティナだけでも無事に…
そう思った瞬間、急激に、うなじに溢れだす悪寒を感じる!
『アイツ』だ! 『アイツ』が今までない勢いで吹き出している!!!
「あ、兄貴ィ!! 兄貴ィィィ!!! あ゛あ゛にあ゛あ゛にあ゛あ゛にぎぃぃぃぃ!!!」
「な、なんだよ!! おめー!! 一体どうしたんだよ!!!」
「あ゛にあ゛にあ゛にあ゛にあ゛にあ゛にあ゛にィィィ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
男の異常な叫びが続くかと思った瞬間、パァーン!!と何かが弾ける音が鳴り響き、まだ目も見えず、身体も動かせない私に、暖かい液体が降り注ぐ…そして鉄の匂い…いや、血の匂いが辺りに充満する。
「なななな!!なにだよぉぉぉ!!! あたああああたまが!! 頭がはじけやがったぁぁ!!!!!」
「やべぇぇぇぇよ!! めちゃやべぇぇぇ!! 俺は…俺は死にたくねぇぇぇ!!!」
男たちの慌てふためく声が響く。
「にげっ!逃げねぇ… えぇぇぇえぇぇえぇぇぇ!! え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」
「くっそ!! 次はこいつまで!!! 一体、どうなってんだよぉぉ!!! うぉ!! こっちくんな!! こっちくんなっていってんだろぉぉ!!!」
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!! キェィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
まるで、回転工具が回るような甲高い叫びが響き渡る。
「やぁぁぁめぇぇぇろぉぉぉ!!! はぁぁなぁぁぁせぇぇぇぇx!!!!」
そして、先程と同じくパァーン!!と何かが弾ける音が鳴り響く。
「うぼぉぉぉ!!! くち! くちぃに…はいった… うぼぉぉぉぉぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
最後の男も奇妙な叫び声を上げ始める。そこへ私の身体に何かが伸し掛かるのを感じる。
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」
男の声は響き渡っているが、私の身体に伸し掛かっている様な距離ではない。では、一体、誰が私に伸し掛かっているのか?
「むぅ!むぅ!!むぅぅぅ!!! ぷはぁぁ!!! レイチェル!!! レイチェルゥゥ!!!」
これは…マルティナ? マルティナの声!!
「だめ! だめよ! レイチェル!! 悪魔なんかになっちゃだめ!! 戻って!! いつものレイチェルに戻ってぇぇぇ!!!」
うそ!! マルティナは見えているの!? 『アイツ』の存在が見えているというの!? それでなお、暴走する『アイツ』が私だと思って、『アイツ』が吹き出している私に抱き付いて、必死に止めようとしているの!?
私は動かない身体でも、意識だけはハッキリとしているので、マルティナの為にも必死に念じる。
『戻れ!戻れ!!戻れぇぇ!!!』
バァーン!!!
私の祈りが通じたのか、それとも最後の男の頭が破裂したのか…
私の顔に暖かい飛沫が掛かる…後者の方であった。
私に害意を持った人間は全て死んだわ、後のはどうするの? 前に夢の中で見たように、私の大切な人たちも殺して回るの!? だったら、マルティナ逃げて!!! お願い、私から離れて逃げてぇぇぇぇ!!!
「Gott, Gott, an den ich glaube! Höre auf meine Wünsche, während ich all meinen Glauben anbiete!」
突然、先生の呪文を唱える声が響いた。
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※はらついの次回は現在プロット作成中です。
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