【 満月の夜 】


 その後、ワシはあの墜落した『零戦ゼロせん』を見つけ出し、本島のポートモレスビーへ運び、そこのとある建物に『零戦』を展示した。

 もう飛ぶことは出来なかったが、修理できるところはして、何とか動かすことはできた。


『ブルルルルン……、プルプルプルプルプルプルプルプル……』


 10年ぶりに、力強く零戦のプロペラが回る。


「オオーーッ!」


 その姿を見に集まって来ていた人たちから歓声が上がる。


「よし! 動いたぞ!」


 ワシは、小さくそう呟いた。


 そこに力強くたたずんでいる『零戦』の雄姿は、今でも忘れない……。



 タマラは、ワシの動かした『零戦』を見つめながら、あの満月の夜のことを話してくれた。

 偶然、海岸を歩いていたら、ワシの乗った『零戦』が満月に照らされ、こちらに飛んできたという。

 タマラは、その満月の中の『零戦』を見て、月から大きな鳥が落ちてきたと思ったそうじゃ。


 そして、その『零戦』の堕ちていった場所に向かい、ワシに会い、助けてくれたそうじゃ。

 その満月の中の『零戦』の光景を彼女は、生涯忘れることができないと言っておった……。



 ――そして……。



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