【 無償の愛 】


 それから、タマラは本当にワシに尽くしてくれたんじゃ。

 ワシは、いつの間にか、そんな献身的なタマラに恋をしておった。

 タマラも、ワシのことを好きになり始めていたと思う。


 数日後、ワシは何とか歩けるまでに回復しておった。

 あの不思議な塗り薬と葉っぱ、そして、タマラの献身的な介護によって、ワシの容態は見る見る良くなっていったんじゃ。


 ワシは、タマラの家族から献身的な無償むしょうの愛をもらった。

 タマラの家は貧しかったが、彼らは、決して対価を求めるためにやっている訳ではない。

 とても心が純粋で、何も代償など必要としていなかったんじゃ。


 ワシは何かこの家族に恩返しがしたかった。

 そこで、日本で学んだ農業をしようと土地を開拓し、農地を整えた。

 そして、そこで色々な野菜やお米などを育て、それを売って収入を得られるようになったんじゃ。


 すると、タマラ一家も徐々に貧困から抜け出していったんじゃ。


 それからしばらくし、日本では終戦を迎える。

 ワシは、助けてくれたタマラたちを見捨てて、祖国日本へ帰るなんてことは出来なかった。

 ここでワシは、タマラ家族を支えていく決心をしたんじゃ。


 タマラは、年齢を重ね、とても魅力的な女性に成長しておった。

 ワシは、そんなタマラを愛してしまったんじゃ。


「タマラ……、ユー、グッペラメリー。ミー、ライキム、ユー。(タマラ、君はとても素敵な女性だ。私は君を愛している)」

「オオ……、トオル。テンキュー、トゥルー。ミー、ライキム、ユー。(ああ、トオル。ありがとう。私もあなたを愛してる)」

「タマラ、ユー、タソール……。(タマラ、君だけだよ)」


 タマラは、ワシの胸で泣いていた……。

 そんなタマラを、ワシは強く抱きしめて、この女性を絶対に幸せにすると神に誓ったんじゃ。


 そして、ワシは、その後タマラと結婚をした。

 ワシは、今まで以上に働き、タマラ一家の大黒柱として一生懸命に彼らに尽くした。

 決して対価を求めない彼らに対し、ワシの中で、どうしても恩返しをする必要があったんじゃ。


 それから1年後、タマラとの間に、子供ができた。

 日本人のワシと、現地のタマラとの混血じゃ。

 でも、目に入れても痛くないくらい、本当にかわいらしい男の子が生まれたんじゃ。



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