第1話 「転校生」

教室内ががやがやとざわめいていて、非常に不愉快極まりないが、俺、田辺俊夫は頬杖をつきながら、窓越しに見える大空に視線を飛ばしていた。

俺の席は窓際最後方で隣のいない完全に孤立している席なため、真ん中よりはうるさくないのだろうがそれでもうるさい

この謙遜の原因は転校生、のことらしい

しかし、単なる転校生じゃここまでがやがやとしないだろう

教室に視線を戻し、クラスメイトを観察する

騒いでいるのが男子生徒が半数を占めているとところを見ると、おそらく転校生は女だろう

だがその女が不細工なら傑作だ

滑稽で愉快だ。正直そうなってほしい

言っておくが、別に俺はクラスメイトたちが嫌いなわけではない。

無関心なだけだ。他の連中などどうだっていい、それが俺だ

昔と今じゃ俺は別人だと思う

いや、それは確信に近い。事実、俺は別人だ

「はっーー」

笑いを零す

前の席の女が息を呑む声が聞こえた

恐怖に怯える声だった

俺は、このクラスから忌み嫌われている

いや、ただ怖がられているという方が正しいか

言い忘れていたが、ここ海鳴学園は島一番の進学校として有名である

ゆえに俺のような所業の悪い生徒は珍しく、教師たちから俺は完全に忌み嫌われている。

それから少し経ってチャイムが鳴った

立っていた生徒たちが一斉に席に戻って担任の到着を待った

やがて、担任が入ってきた

ちなみに体育会系の男で、生徒たちからはよく汗臭いと言われている

しかしそれでも生徒たちに近寄って行く

その男に俺は一度敬意を表したことがある。

教師が壇上に立ちながらこう言う

「あー、まぁわかっていると思うが、今日転校生がやってくる」

うおおっ、と男性陣の声

雌に飢えたゴリラを連想させた。

「さて、もういいぞ。入ってきなさい」

担任がそう言うと、ドアががらりと開け、

一人の少女が入ってきた。

元気、と言う言葉に見事当てはまりそうな雰囲気を醸し出すその端麗な童顔

一般的な女子高生よりかは若干身長は低いものの体のしなやかなラインから、

くびれなどでその汚点は見事払拭され、逆にその汚点を利用していた

肩の位置まで伸びている緑が若干かかった銀色の短い髪

一言で説明しよう

ロリコン歓喜である

「〜〜♩」

鼻歌を刻みながら黒板に自分の名前を綴る

書道でもしていたのだろうか、まるで見本のような字がそこに書かれていた。

書かれているのは……田辺香…

まさかの俺の苗字と見事に一致している

どこか遠い親戚だろうか、と俺は少し考えてみる

そうこうしているうちに転校生…香はくるりとターンして、教室全体を見渡してから自己紹介を始めた

「私の名前は田辺香と言います。見た目通り元気が取り柄です。」

そしてーーぴっと彼女は俺に指をさして

そして告げた

「田辺俊夫の……娘です♩」

そんな、最低最悪な冗談をーー



つづく

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