第8話 光

「高校位は卒業しないと!!!」

しばらく学校を休んだため、

退学を考えていたのかと勘違いした

一羽が俺に言った

「中卒だと、なかなか仕事見つからなくて、苦労するよ!!!」

どっかの親戚のおばちゃんですか?

今時の女子高生のセリフとは到底思えない

心の中で苦笑していた

仕事か…何がやりたいんだろ、俺

想像が付かなかった

働いてる自分の姿が


だけど

想像出来てしまったんだ

未来の自分の姿を

「ただいま〜」

そう言って帰ると

「おかえりーパパ!!」

そう言って出迎える

未来の我が子

その子を優しくハグする自分

夕飯の良い匂いと

子供を背負ってやって来る妻

妻はいつも笑顔で

「おかえり」

と出迎えてくれる

暖かい夕飯と

笑顔の食卓

そんな、未来を


一羽は、今日もおかずを差し入れしてくれた

いつの間にか、当たり前になってしまった

焼きそばは、未だに美味くはない

「一羽の作った煮物、食べたい」

ボソッと呟いた俺のセリフ

しっかり聞こえたんだろう

顔を真っ赤にして

喜びを隠せない様子が見えた

そんな一羽を可愛いと思った

「なんだよーオマエらいつの間にかそんな関係になってたの?!」

「邪魔もんじゃん、俺」

そう言って笑い出す元晴

平和だな

幸せだなって

思える


俺の大好物はいつの間にか

購買の焼きそばパンから

一羽の作った煮物になっていた


真っ暗だった俺の世界

光もない

何も見えないトンネルを

ただひたすらガムシャラに走って

いるイメージだった

そこに、一筋の光を見せてくれたのは

一羽で

その光は希望の光となり

トンネルを抜けたその先は

彩り豊かな

見たこともない眩しい世界

そんな世界に連れ出してくれたのは

紛れもなく

一羽で

彼女の為なら、何だって頑張れる気さえしたんだ

たくさんもらった愛情

暖かい気持ち

感謝してる

いつか、恩返しがしたい

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