第4話 昇格?

ただ、なんとなく生きていた

特にやりたい事も無い

目標も無い


学校とバイトが終わって帰ると

散らかった部屋

テーブルの上には、ペットボトルや空き缶が並んでいる

カーテンは閉めっぱなし

母は夜の仕事のため、家にはいない

昼間も寝てばかりだ

最後に会話したのはいつだっけ?

昔は、テーブルにコンビニのおにぎりやカップ麺、お金位は用意してあったかな?

今では、自給自足


父は、物心ついた頃から既にいない

その変わり、代わる代わる

母は、男を連れてきた

別れては酒を浴び

現実逃避をする日々

何の希望も夢も無かった

ただ、ただ、その日を生きてる


昼休みのチャイムが鳴る

購買にパンを買いに行こうかと立ち上がると

教室がやたらざわついていた


教室の前には

笹館一羽がニコニコしながら立っていて

手には弁当らしき包みを持っていた

辺りからは冷やかしの声のような物が聞こえる

見なかったフリして別なドアから教室を出たら、後を追って来た

「待って、来くん!!あの!!これ」

笹館一羽の顔は一切見ずに

先を急いだ

「来くん、迷惑かとは思ったんだけど、いつもパンばっかりだったから…」

「…そういうの、困る」

何気なく、突き返したつもりだった

予想以上に力が入ってしまっていたのか

弁当箱は、宙を舞って

中身がこぼれた

一瞬時が止まる

卵焼き、、、

唐揚げ、、

野菜サラダ、、

見なかったフリして

俺はその場を立ち去った


罪悪感が残った

どんな気持ちで作ってくれたんだろう

床に飛び散って、どんな気持ちだった?

本音は、心がひかれた

嬉しいと思ってしまった

弁当なんて作ってもらった事、あったっけ?

せっかく、俺のために作ってくれたのに、、、


でも、これで良かったんだ

これに懲りて、笹館一羽はもう俺に近づかないだろう

良かったんだ


ところが、予想外に、笹館は次の日も弁当を持って来た

教室で待ち構えたりはせずに

俺がパンを食べている時に

ささっとおかずだけ持って来た

その次の日も、、、

俺が食べるというまで

元晴に、「食べてやれ」と言われ

しぶしぶ食べると

ちょっと目に涙を浮かべて満面の笑みで、

微笑んだ

笹館の作った焼そばは

水分足りなくて、

「ゴムみてぇ」

と、俺が文句を言ったら、

次の日は、改良して持って来た


不思議な奴だよ

笹館一羽は

"知らない人"から

いつの間にか"側にいる人"になってしまったんだから

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