第21話 封筒の中身

 部屋にもどったアグニは椅子に座って封筒を開く。

 封筒は中々に分厚く、学校で使う教科書くらいの分厚さがあった。

 封筒の開け口を破かないように慎重に剥がしていく。


 ビリィッ!!


 アグニは常々思っていた、もっと剥がしやすいのりで留めてくれと。生まれてこの方、こういうタイプの封筒を綺麗に開けられたことが無い。小学生の時の通信教材が最たる例だ。

 添削問題が返って来ると大抵は細長い封筒にはいっていて、開け口が強力な糊でとめられているのだ。本当に一回たりとも破らないで開けられたことは無い。

 いつもならそれによってアグニのイライラメーターはほとんどマックスまでたまるのだが、今日はそんな開け口の様子など気にならなかった。

 なんせ幕僚長からの手紙だ。あまり良い印象は持たなかったが、それでもすごい人であることに変わりは無い。


 少しだけ緊張しながら中の物を確認する。見えづらかったので机の上に全部出してみた。パンフレット2冊と左上をホチキスで留められた書類の束がでてきた。パンフレットは陸上自衛隊と書かれた物と幹部候補生等採用案内と書かれたものだった。


「……なんだこれ?」


 どういう意図でこれを渡してきたのだろうか? 別に縮地も雷鎚も見せていないし何か興味を持たせるようなことなんて何も無いはずなのに?

 そんな風に思いながらもとりあえず書類の束を見てみると、それは父さんが団長を務めているSCOTの説明資料だった。最後までパラパラとめくると最後のページにはQRコードがついていた。


「……応募ページか」


 しかしパンフレットには受験資格として大学を卒業した者とかいてある。ということはあと2年大学に通って卒業してからで無ければそもそも試験を受けられない。

 いよいよ意味が分からなくなってきた。どうしてこんな物を渡してきたのだろうか? アグニは今一度書類をしっかりと読んでみた。


 すると束の真ん中より少し後ろ辺りに、手書きでいくつかのクランの名前が書いてあった。

 クランというのは英語で氏族のことであり、現代の世界においては遺跡を探索してそこから集められる素材を売ることを生業としている会社、法人のことを指す。

 ゲームに良く出てくるギルドと同じような物だと思っていい。


ページをめくると再び手書きで今度はアグニ宛のメッセージが書いてあった。


――――――――――――――――――――


初めまして熾 火天様


私は陸上幕僚監部人事教育部部長の鷹司たかつかさです。

来庁ありがとうございました。事前の説明も無くあのような場に呼んでしまったこと大変申し訳なく思っています。今後とも自衛隊の活動を理解し協力していただけるとありがたいです。

さてここから本題について書かせていただきます。

火天様のお父様が団長を務めているSCOTもしくは特戦というのを聞いたことがあると思います。特戦は常に有望な人材を募集しており、火天様の体格や、今回ダンジョンから脱出した事などを鑑みると、訓練をすれば十分に特戦で活躍することが可能であると思われます。しかし特戦に入るには満21才以上である必要がありますので、今すぐには入団することが出来ません。

そこで政府の後援しているクランで21才になるまで研修を受けてはどうかと思い、新人教育に力を入れているクランをまとめておきました。

そして21才を超えたらば、特戦に入団していただきたいのです。

詳しい説明はお父様にしておきましたので、よろしければご一考ください。


敬具

陸上幕僚監部、人事教育部部長、鷹司陸将補


――――――――――――――――――――


「どういうことだ? なんで急に勧誘してきたんだ?」


 最初の謝罪については理解できるが、その後の本題と書いてある部分については「??」という感じだ。どうして勧誘? なぜクランで研修? よく分からない、というか理解できない。


「……とりあえず父さんに聞いてみるか」


 アグニは書類を封筒に入れるとドアを開けて父さんの部屋へ向かった。

 しかし父さんは部屋には居なかったので、1階のリビングに向かった。

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