第21話:学歴が評価される社会 ⑤

かし、後者の場合は問題を大きくしたくないという社会的リスクと自己防衛策を考えた判断だろうと思う。ただ、そういう判断をすることで状況が急速に悪化し、いじめがエスカレートするだけでは無く、連鎖的にターゲットが拡大していき、問題解決が長期化する可能性があるだけでなく、予兆を見逃して不登校や自殺未遂など起きてはいけない重大インシデントが発生する可能性が高くなっていく。


 特に今のいじめやハラスメントは早期に対応していかないと時間の経過と共に複雑化していくため、対応が後手に回ってしまう可能性が否定できない。


 そして、今はさまざまな価値観が社会で共存しているため、意思を統一させることや相手の心情を理解することも難しい場面が増えている。その上、個々の生活環境や個々の家庭環境なども以前に比べるとかなり急速に変化していっており、このままでは場合によっては校内格差が広がり、そこからホーム・ハラスメント(家庭的嫌がらせ)・グループ・ハラスメント(集団的嫌がらせ)など家庭や兄弟・兄妹・姉妹など本人以外の家族に波及する可能性も否定できないのだ。


 これは以前から発生頻度が高い問題でもあるが、現在は名札などの個人を判断できる物が減っていることからターゲットとなる子供の周辺の人をまずターゲットとして追い詰めて、そこから情報を得て、いじめやハラスメントを行う傾向も強い。


 特に小学生から高校生に関しては“塾などの習い事”や“そのコミュニティにおける家庭のランク”など将来性を判断して行われるケースが多く、“この人にこういうことをすると将来偉くなったときに取り返しが付かなくなる”など個々の損得勘定が働くだけでなく、将来的な関係までを計算する場合も少なくない。


 そして、そういう構図を両親や周囲の大人たちを見て学んでいるケースも少なくないため、同じような現象が子供たちにも起きている事で負の連鎖として1つのサイクルに繋がっていくことになるのだ。


 確かに、自分よりも頭がいい、運動が出来る、容姿がいいなど自分よりも優れている点が多い子に対してかなり積極的にアプローチをかけにいくことは問題ないのだが、そのアプローチの仕方に問題を感じることが多々ある。


 私はこの課題はどこかで断ち切らないと永遠に続き、毎年この問題で苦しむ子供たちや社会人が増えていってしまうように感じる。


 そのうえ、現在の子供たちは私が子供の頃よりも精神的にはかなり繊細でかつ耐性が低くなっているように感じる部分も多くなってきたため、些細なことがトラウマなどの心理的恐怖心につながり、子供の精神発達に大きな影響を与えかねない部分なのだ。


 そして、今の社会はデジタル化が進んでおり、塾なども通塾せずに受講できるケースも増えてきたため、経済的に問題が無いなら高学歴を狙うことは可能になる。しかし、高学歴を目指す明確な理由が存在しないと社会に対して説得力が無くなってしまうし、仮に本人が芸能界など表舞台に立ちたいと思うなら学歴などが好材料に働く場合も多いため、それなりの学位を持っていることでメリットは多い。しかし、そのイメージが定着してしまう前に何らかの対策を立てないとそのイメージのまま社会に認知されてしまい、イメージ・ハラスメント(印象的嫌がらせ)によって本人がそのイメージに苦しめられる機会が増えてしまう可能性があるだけでなく、不祥事などを起こしたときに学歴の学校に対してブランドイメージの毀損等が発生するなど双方に不利益が被る可能性も否定できないのだ。そして、高学歴になると仕事の幅が広がるだけでなく、プライベートも充実するなど“高学歴”という部分にフォーカスが当たりやすくなるため、露出は多くなっていく。そのため、学歴に自信がない場合には学歴を低くして他の部分にフォーカスを持っていくという方法しか今の日本において生き延びる術としては存在していないように感じる。


 このように日本というのは表面上では“学歴社会”や“学歴主義”などに対してそこまで重視していないため、学歴が全てではないという考え方が定着しているように見えるが、私の印象としては少し違って見えている。その理由として大学のランクもさることながらその人が大学をどのくらいの順位で卒業したか、何を学生時代にしていたのかなどその人が大学でどのような立ち位置にいたのか、何を学んでどのように活かされているのかなどを見ているように感じるのだ。


 そして、良い人材を欲しい企業にとってはこういう学歴や実績などがたくさんある人の方が扱いやすく、先方さんとの会話もしやすいというメリットを重視するのだ。


 このように、良い人材を求めて社会が動いていくということはそこからあふれてしまった人たちが路頭に迷う可能性が高くなっていき、次第にプライマリー・バランスの崩壊にも繋がっていく事になる。だからこそ、初等教育から個別指導と集団指導を併用し、1人1人が希望する進路に進むために必要な事を社会全体で考えていかなくてはいけないと思っている。


 そして、今の子たちはICT教育などデジタル関係を小学生から学んでいることを考えると大人の立場や同年代で本人たちが希望している進路で活躍している人などと繋げていくことも子供たちの将来設計などで大事な経験として必要になると思う。


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