第19話:学歴が評価される社会 ③

 これでは新しいアイディアを生み出そうとしても上手くいかないし、そういう人たちに寄り添う機会を奪うことにも繋がっていく。そして、実効性の伴わない迷言だけが国民に向けて発信され、そういう情報を鵜呑みにした人がその人たちを陥れてしまうという負の連鎖を起こす要因になってしまうのだ。


 これが日本の経済成長が鈍化している理由の1つだと私は感じている。なぜなら、欧米やアメリカなどでは“個性”を大事にした教育が展開されているため、他者比較をすることもないし、学校では子供たちが、会社などの企業や組織の中では大人たちが年齢を問わず意見を言ったとしてもその発言を誉めたり、認めたりして相手を否定することはあまりない。これは大人でも子供でも同じだ。まず、相手の意見を聞いて、1度収めたのちで相手の意見に対して自分の意見を当てていくという“お互いに意見を出して、お互いによりよい物を作っていこう”という考え方をしている人が多い。


一方で、日本では“立場が上の人が言ったことが正解で、下の人が言ったことはあまり正解とされないもしくは受け入れられない”という世界とは真逆の方向に進んでいる。そのため、意見を出し合ったとしても立場が下の人の意見はあまり通らず、上の人の意見だけが通りやすくなっている。というケースも多く見られる。


 このように、年齢を問わずに意見を出し合える環境の整備が遅れていることでここが持っている意見やアイディアなどを表に出すことは難しく、たとえ意見を言えたとしても好印象を勝ち得ることはかなり難しい。


 そして、日本というのはリスクを回避して、ブランド力や社会的認知度で勝負をしようとするため、新しい形態や業種など自分たちが知らないことを避けてしまうことが多く、教育現場など“お互いが学ぶ場所”での子供たちに対する接し方も“出来る子に注力して、出来ない子はそのまま”というスタイルを尊重する事や成績が良い子、自分に対して利得がある子供などだけを大切にして、他を蔑ろにするというケースも少なくない。


 このような経験が社会に出たときに自己肯定感や自己責任に対する個別意識などに差を生み、その体験に基づいた経験が連鎖的に人を狂わせてしまうのだろう。


 私はこの連鎖が止まらない限り永遠に同じ事象が起こり続ける可能性があることを痛感していて、これらが本人の相手に対する“優越感”や“学歴差別”、“アカデミック・ハラスメント(教育的圧力)”に繋がっていく事も懸念される。


 そして、幼少期から失敗が無いもしくは少ない人ほどこういうことが許されると勘違いしてしまい、自分の行動に対して自意識過剰な状態になってしまうことも想定できる。


 そして、現在はテレビ番組やネットニュース記事など身近なところでその人を紹介するテロップやタイトルなどに“○○卒”という大学名を入れる傾向や“ミス○○”・“ミスター○○”のようにそれまでに取ってきた賞や実績などを全面に出すなどその人の社会的優越性の虚像を作られかねないイメージを社会に植え付けて、視聴者や読者に対して“こういう人になってください”・“私たちはこういう人を応援しています”と無言の圧力をかけているということにも繋がりかねない事態になっている。私はこれもまた社会的に悪影響を及ぼしかねない要素だと思う。


 その理由として、いくつか列挙したいと思う。


まず第1に“社会における個別価値観の不均衡によるいじめが後を絶たない。”ということだ。


 これはいわゆる“アカデミック・ハラスメント”や年功序列“な全体に対して起きる問題やトラブルとは関係のない部分だと思われがちだが、この問題は日本における多様性を尊重するために必要な要素であることは言うまでもない。


 例えば、高校生で起業した人に対して“そんな年で起業して社会のことが分かっていないのに失敗する”という言葉を投げかけている人のコメントを見て、私はひと言「この人視野が狭いな」と思った。


 なぜなら、私は起業したいと思ったのが高校受験に失敗して希望通りの学科に進めなかった15歳の時だった。


 その当時、私には何の実績も無かったため、このまま高校に進学してもただ学ぶだけになってしまって自分のためにならないと思っていたのだ。


 そこで、自分で何か企画案や構想案などを書いて、周囲にプレゼンテーションをして、自分の意見を発信するということを考えついた。

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