第12話:社会における教育的価値観 ③

 しかしながら、日本というのは生きにくい人が年々増えているような印象がある。この背景にあるのが“損得勘定”と“社会との価値観の乖離”だ。特に前者は義務教育終了後から成人にかけて段階的に増加しており、後者もこれまで受けてきた教育や家庭環境がその人の考え方を歪曲させてしまう事が1つの要因として考えられる事が多い。


 私はいじめをする子供たちの心理として“自分を認めて欲しい”という承認心理と構って欲しいという関係構築心理が同時に働いていると感じるのだ。


 その理由として、いじめをする子たちは全員ではないが、両親から身体的暴力を伴ったしつけや夫婦喧嘩、兄弟喧嘩など相手を傷つけ合う光景を見てきたことも要因だろう。


 そして、越境入学を認めている地域がまだ日本では少なく、子供によっては“生きたくないけど行くしかない”という気持ちで学校に行っている子供たちも少なくない。そのため、仲の良い友達が隣の中学校に行っていると知ると、隣の中学校の学区に住みたいという気持ちになる子供も少なくない。


 こういう問題を解決するにはこのような教育環境の選択や個人の抱えている事情や問題を周囲がどのように解釈し、その人にどのように寄り添うかも重要になってくる。そこで、地域・学校課題を解決する方法として、“アカデミック・エデュケーショナル・ネットワーク”というICT教育と並行した別の学習形態が必要になると思う。なぜなら、今は塾などの通っている子供が増えていて、本人のレベルに合わせた授業カリキュラムを組むことが日常化している。


そのため、公立小学校などでは習熟度のミスマッチが発生することがあり、児童の習熟度が同じクラスで異なってしまうという子供によってはどうすれば良いのか分からなくなることも十分予見される。


そこで、担任の先生の授業だけではなく、隣のクラスなど別のクラスで行われている授業も視聴できるようにすることやその授業風景を見て体感することで子供たちの視野が広がる、新しい解法や公式などを学ぶことが出来るなど子供たちも1人の先生から学ぶよりも複数の先生や児童の発言から学ぶことで気付きと興味・関心など子供の学習に対する姿勢が変わる。


そして、さまざまな先生の授業を見て学習することで自分と合う先生を見つけやすいというメリットもある。そして、これは理想だが、科目毎に先生を変えて授業を受けられるようにすることで1つの先生の教え方・知識に偏ることなく、幅広く学ぶことが出来る。


 これからは“多様性”などこれまではそこまで重要視されなかった価値観も教養として必要になってくる。そして、現在はデジタル化が進んでおり、動画をアーカイブ化することで自分のクラスの子供たちだけではなく、他のクラスの子供たちにも視聴する機会が与えられる。そういう環境を整備することで自宅学習の効率が上がり、多くの自治体で実施予定のリモート自宅学習に好材料として採用出来るだけでなく、先生も自分の授業だけではなく、他の先生の授業を見せることで学習時間を確保出来る子供たちの中には“違う解法を知りたい”・“もう1度違う先生の授業で勉強したい”など子供たちの中で勉強に対する熱量は違うし、どの科目に熱意と熱量を持っているかも違う。


 ここで重要なのは子供の学力や理解力を把握して、その子に必要な学習量を与えることだ。例えば、A君は勉強が苦手で基本問題が解けないなら基本問題を解説する授業を受ける。そして、基本が身についていたところで授業のレベルを上げるなど最初から横一線ではなく、その子供の習熟度を軸にした授業を受けさせることが大事だろう。


 日本というのは基本的には“みんな同じで、みんな良い”という考え方が軸になって行動規範が出来ている。つまり、そこに示されたことが出来て初めてそのレベルに達していると判断されるのだ。そのため、ちょっとでも出来ないと「なんでそんなことが出来ない」や「そういう事は出来て当たり前だ」という社会に出るならみんな同じに出来て当たり前という持論を持っている人が多い。


 しかし、ここで着目しないといけないのは“生い立ち”と“今までの成長過程”だ。なぜなら、人というのは性別も違えば、生い立ちも十人十色と誰1人として同じ人生にはならない。そのため、発した言葉1つでその人の受け取り方が違う。こういう点を見ていくと1人1人同じ対応をしても同じようにはならないし、無理矢理やらせたとしても子供によっては深く傷ついてしまうだろう。

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