第9話:幼少期の教育環境格差 ③-1

こういう背景が社会にも少なからず影響しており、この影響が精神疾患や引きこもりなどを引き起こしている可能性も十分想定される事態なのだろう。


 しかしながら、今の社会において、このような問題に対する議論があまり進まず、このような状態に対する認識が不十分な事が多いことから、未だにこれらの社会的風潮が抜けていないこと、一部で“学歴社会”の名残のようなものが残っており、これらの影響が色濃く残っていることが子供たちの精神発達を左右していることをもっと認識し、これらの問題を解決する為には何が必要なのかを全体で考えていく必要があるのだ。


 まず、考えなくてはいけないのが、“教育格差がどこまで進むと子供たちの個性が潰れてしまうのか?”ということだ。これは子供のいる家庭が中心の話にはなるが、子供たちを少しでも良い子供にしたいと思う親は多いだろうし、幼少期から習い事や教材をたくさん買って教育熱心な家庭も多い。しかし、子供たちの興味・関心を考えるとこういう方法を取れる家庭ばかりではないことは十分予見できる事だろう。


 まず、公平な教育が進められるように経済支援の枠組みを国主導でも都道府県・区市町村単位でも構わないが、どこかできちんと枠組みを確立して、そこから子供たちの可能性が潰れないように支援していくことが大事だろう。


 私が現状で危惧している事の1つとして“幼少期からの教育機会の個人差が顕著に表れている”ということだ。現在、子供の出生率の低下も騒がれているが、その根源にあるのが、経済格差だと思っている。この経済格差が社会と家庭を遮断する要因になっていて、このような社会の情勢における家庭孤立や社会的孤立を序等する可能性があることは以前から認識されていたが、実際にはこれらの問題を放置されている場合も多く、教育差別や人権軽視などに繋がっているケースも少なくない。特に公立学校に通学している子供たちの中にも“給食費が払えない”・“各種積み立てが出来ない”など本来支払わなくてはいけないお金が支払えないなど家庭の事情で適正な教育を受けられない可能性があるケースがかなり増えている。


 このような状況が長期化し、子供たちが適性に教育を受ける権利を行使できない可能性も高くなる。


 そして、現在は社会的な1つのステータスのように取られることがあり、多くの子供たちが通っている塾やピアノなどの習い事1つをとっても個人差が広がっており、経験させたい事に対しても受けられる子供と受けられない子供が一定数いることで、本当は才能があったとしても適切な指導を受けられないというケースも少なくない。


このような部分から受けられる子供と受けられない子供の間でいじめに発展しないかを注視していかないといけない。


 特に、日本という国は“協調性”や“同調性”など周囲と同じ考えを求める傾向にある。そして、自分自身の生活が当たり前になってしまい、同じような生活を送れていない人を見下す人も出てくる。これは日本というのはどこでも“他者比較”や“競争心”など相手と戦って、蹴落とすことや相手を陥れることなど自分が生き延びるためなら手段を選ばないという状態になっている事も少なくない。


 例えば、現在は子供たちが幼稚園などから“お受験”をする事も増えてきた。これは、“うちの子を少しでも良い環境で育てて、素敵な将来を送って欲しい”という両親の教育観だろう。しかし、お受験をするということは他の子よりも多岐にわたる経験をすることが可能となり、他の子よりも知識量や経験値などは高くなっていく。そのため、知識や経験だけが先行していき、場合によっては子供たちの基準が周囲にいる子供たちで固まってしまう可能性があるという危惧がある。特に無受験でエスカレーター式に上がっていく学校に行っていると、そういう子供たちとしか接する機会がないため、多様性を経験することが出来ない可能性も有る。もちろん、そういう経験をしないで大人になることは個人の選択であることから否定するつもりはない。


 ただ、少し自分の学校の外にも目を向けていって欲しい。なぜなら、社会には自分と同じような人ばかりではなく、考え方の違う人、育ってきた環境が違う人、いろいろな経験をしていている人など自分とは違う経験をしている人も多い。そのため、そういう人が多くなるとなるだけ、多様性や柔軟な思考などを適切に活用していかなくてはいけない。


 現在は知識格差や学習格差などかなり多角的に見ると問題点がかなり多い。そして、子供たちの学習意欲も個人差はあるが、一定水準を下回る事はないと思う。しかし、学習カリキュラムが私立と公立では全く異なっており、この部分の違いが子供たちの将来的なビジョンに差が出ていると感じている。


そこで、ベンチャー企業を含めた企業などからの賛同や支援を募り、これらの支援金などを基に教育機関における学習環境の分学化をすすめ、本人たちが本当に学びたいことにフォーカスして、個々に合った教育スタイルを確立することで子供たちが出来る事と学ぶ必要があることをターゲット・ラーナーの範囲拡大を狙っていきたい。

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