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秋も深まり色付いた葉も大分落ち切った頃…王城に駆け込んだ伝令が『廃神の完全なる消滅』を知らせた。
それから数日後。
凱旋した彼らは、王都の目抜き通りを真っ直ぐに、堂々と王城に入っていく。
沿道には人が
これから数日、国中でお祭り騒ぎが続くだろう。
大通りから離れた貴族街にまで、歓声やお祝いの花火の音が届く。
わたしは、窓辺でそれらの歓声を聞きながらやっぱり少し複雑だった。
どれだけ頑張ってヒロインを助け、応援して、支えてもモブはモブ。
ゲームみたいに分かりやすく好感度の数値や上昇エフェクトなんか見えないから、
唯一、思い出せたクリスマスのイベントが
近くでサポートしてたから、仲良くなってるのは知ってたけど…どれぐらい仲が良い、とは
ただ、好意を向けているっていう態度は隠さなかったから…こっちで察してたけど。
それまでどこかで『平民の娘』と引け目を感じていた彼女が、英雄の生まれ変わりと判明し『聖少女』として見出された…そんなゲーム中1番のカタルシスの瞬間は意識不明だった。
世界中の期待を背負って出陣する姿も見れずじまい。
所詮は未成年の貴族令嬢だから、一緒に戦うこともできない。最終決戦も蚊帳の外で、自分のことで手一杯なうちに片付いてしまった。
あぁ…だめだなぁ。いくらか心の整理をしたつもりだったのに、やっぱりまだ燃え尽き症候群だ。寂しくて悲しい。胸の中がもやもやする。
だからこそ!明日の夜の舞踏会は絶対に出たい。そう言って、無理を押して出席させてもらうことになった。
ドレスやらメイクやらで着飾って『令嬢仕草』でシャンとしているのはまだ極々短時間が限界だけど…。それでもどうしても見に行きたいのだ。
そして、同時に英雄の生まれ変わりであり『聖少女』と言う唯一無二の後ろ盾を得た
昼間に行われる
その後に、少しだけ語られる後日談は、数ヶ月後の婚約式だった。
本当に、このエンディングシーンを見たら吹っ切ろう。
クヨクヨうじうじとするのはしないよう心がけよう。
少なくとも、わたしの当初の目的は『平穏な生活』『暖かい家庭』『愛する家族』だったはずだ。
そのために世界が崩壊しないようバッドエンドに行かないよう、ヒロインのハッピーエンドが必要だったのだ。
打算まみれに近づいたけれど、実物の
あと、物語の中心人物のそばにいたからって、自分にまでスポットライトが当たってるって勘違いしちゃっただけ。
初志貫徹!!いつも心に『
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