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「本当の恋人同士を引き裂いた最低男で、それにも気がつかず浮かれている頭のおめでたい花畑男、だとよ。しかも、今度のパーティーで婚約破棄を言い渡すために令嬢とその恋人の第3王子は計画を進めている…と、噂も流れている」
なんとビックリ!!
悪役令嬢の婚約破棄シーンを、まさかわたしが画策している側なんて!!
…しかも、相手は
これは悪役が婚約破棄をきっかけに転落していくのを『あの時あぁしていれば…』でタイムループするやつだ。
性格や行動を悔いて善人ルートになるか復讐に走るか、するやつ。
…まぁ、そんなことしなくても
「お前が望む通りに『放っておいて』やったが…まさか、俺嫌いさにこのような噂を立てるとはな。それともこれは令嬢の計画通りだったか?婚約破棄に向けて俺が何もしていないことに業を煮やしての行動だったか??」
あぁ〜…つまり、前回ここに拉致られて嘘八百並べて必死に『わたし、死に戻りとかに無関係です〜』をアピールした時に言った
『わたしはわたしで、女神に仰せつかった使命でヒロインを助けますので放っておいてください』を実行していてくれたのか…
あの時は生き延びたい&関わりたくないに必死で何言ったのかうろ覚えなんだよ…この反省を生かして、今日は帰ったら自分の発言や行動の整理をしよう。
この分だと、この男は些細な発言も逐一覚えていて、矛盾点をガンガンに突いて来そうだ…。
婚約破棄についての動き…も、確かにわたしは言った。
『こちらから提示した条件を王家が承諾した以上、拒否はできなくなった』『破棄したいならそちらからお願いします』と。
これは、新学期初日の夜だったかな?例によって夢に無断侵入された時だ。
でも、チラリともそんな動きをしているとは聞いていない。
そんなことがあれば、
あの王様のことだ公爵に向かって…『ベイルード嫌がりだしたんだけど、どうしよう?』くらいの伝書鳩を確実にするだろう。
それがないと言うことは、つまりベイルード自身も婚約破棄に向けて何も動きがない、と言うことになる。
え、破棄したくないの?してくれないの??このまま婚約しちゃうの??
いや、待て…まだ『婚約』だ。結婚の約束をするだけだ。違約金とか慰謝料とか払って破談になることはあった…前世の現代日本では、だけど。
んで、破棄に向かってなんの行動もしていない男に変わってわたしが自分で何かしようとしている…と思っているのか。
具体的に言えば、正妃との間の王子…血筋的にも正当な王家の後継者である第3王子と良い仲になって、そっちに鞍替えして婚約破棄してもらおう…としていると??
これは盛大な勘違いをされている気がするけれど、わたしは別にベイルードが嫌いで婚約破棄したいわけではない。
怖いし、近くにいて欲しくないけれど…嫌いなわけじゃない。
一応は攻略対象なので、消えられては困るのだ。どこか遠い場所で幸せになれよ、程度には彼の幸福を願っている。
なら、何が嫌なのかと言えば…王族との結婚、が総じて嫌なのだ。相手云々の問題ではない。
しかし、悲しいかな。腐っても裏表激しくても死に戻りループで病んでても、ベイルードは我が国の第2王子。それもそこそこに勢力が強く勢いもあり声も大きい第1側室&デルセン派の王族だ。
そんなのとの婚約を反故にできる強力カードなんて限られている。
それこそ、第3王子くらいなもの…。
対抗馬を出すにしても、その対抗馬もわたしとしては乗りたくない馬。
それに何度も言うが『わたしが条件をだし、王族はそれを許諾した』のだ。それをわたしの方からやっぱ辞めます!!は、できない。
だからこそ、ベイルード側から断ってほしい話なのに…わたしから何かできるなら、もっと早く行動してるし第3王子を対抗馬になんて回りくどい事しないよ。
グチグチ、ネチネチと続けられるベイルードの話を半分に聞きながら脳内では色々と反論を思い浮かべる。
恐怖で萎縮してるから決して口には出さないけれど、言いたいことを飲み込むのには慣れてるからね。
それにしても、なんだこの男は…つまりは何を言いたいんだ?
第2王子の婚約者として相応しい行動をしろ、を言うのは分かるけど…そんな間柄じゃないだろう。
それを破棄してって言ってる相手に向かって、相応しい振る舞いを求めるんじゃなくて…それに乗じて破棄の計画の一つでも立てんかい!!
お互い嫌がってる話なんだから動ける側がなんとかしてよ。こうやって動いてって言われれば協力するのに。
わざわざベイルードのイメージカラーで注文しなおされたドレスを思い出し、心の中でだけタメ息を吐く。
あんなドレスを着たら、ますます婚約者っぽいじゃないか。
もしかして、その上であえてエスコートはしないしその場で婚約破棄とかするんだろうか?
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