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娘溺愛!!絶対に嫁にはやらんと本気で思ってるオッサンに対し、そのオッサンに友情以上恋情未満…家族になりたい願望持ったオッサンがお互いに地雷を踏み続け、ついに出てしまった『お前とは絶好』発言。
方や高位貴族として相応以上の魔力を有し、方や女神の加護を受けている当代の国王陛下。
先ほどまで鳴り響いていた公爵・怒りの雷鳴祭り!とは違う、暴発寸前にまで膨れ上がった魔力が暴れ出す前の小さな破裂音が連続して起こるダイニング。
この状況を
『え?この状況から入れる保険あるんですか??』の質問に間髪入れずに『ありません』『諦めてください』と言えるぐらいには手遅れなこの状況を、どうにかしろ、と!?…本気か??正気か??
公爵は、目の前の魔力の暴走を体感しているはずなのに、意地になっているのか腕組んでそっぽを向いている。
チート級に魔力があるわけでも術式に精通しているわけでもない『深窓の公爵令嬢』がどうにかできる場面じゃない。
この場面をどうにかするとしたら、爆発した魔力を全身全霊、命懸けで受け止め公爵を庇い、死にかけながら『争いはやめて』と微笑んで生き絶えるぐらいしか出来ることが思いつかない。
…あ、ダメだ。これしたら本当に取り返しがつかなくなる。
わたし自身が死にたくない、命大事に!がモットーであるだけでなく
娘が死にいたる理由を決して公爵は許さないだろう。つまり魔力爆発の発生源である国王を。
「まだですか?」
あ〜、考えてるから。今、必死に考えてるから焦らせないでほしい。
そもそも、なんとかしろって他人任せじゃなくて『世界一強い』らしい
「魔力も多いベイルード殿下がどうにかしたほうが、良いのではありませんか!?」
あえて挑発するように口答えをしてみる。
安い挑発に乗って、どうにかこの状況を打破してくれ…。
「公爵と国王の魔力をこのダイニングに抑えるのに、私がどれだけ苦心しているか…リリーシア嬢にはお分かりいただけないようですね」
外面のニヤケ面が若干引きつっている。これは本当に
もし、本当に彼の限界までこの場の被害を抑えているのなら…やっぱりわたししか、どうにかできる人間っていないのか〜!!
死ぬのは論外。でもそれ以外でこの場面を収める方法は…そもそも、なんでこんな事になっちゃってるんだっけ??
ベイルードがついた嘘がきっかけで、わたしと彼の婚約話が出て
それが嫌で断りましょうって流れになっていたのに
今日になって国王同伴で晩餐に押しかけ、まさかの婚約決定で断れない&花嫁修行と称して今後、実家にも帰れそうにない、となり
わたしが『そんなの嫌!』と拒否したら公爵が『娘が嫌がった!だからこの話はなし!!』と暴れ出し
『それなら自分の第…何番目かは不明の側室にする』と国王が言い出して、さらにヒートアップ。
え、本当にこの状況から入れる保険ありませんか?どうにか出来ませんか?そこをなんとか…こちらとしても困ってるんです。
考えれば考えるほど、どうしようもない。対処法が思い付けず、現実逃避のくだらないことに思考が飛んでいく。
これは子供がよくやる『怒られている状況を黙ってやり過ごす』ための方法だ。意識を飛ばして、怒られてる状況を意識から切り離している間にやり過ごそうとする…責任取ったり追及されたりされる立場になると出来ないアレ。
「遠い目をして諦めないでください!本当にそろそろ不味いです!!」
そうですね。さすが当代の国王陛下。膨れ上がった魔力の圧が、ベイルードによって阻まれいるこちら側にまで迫ってきています。
これが爆発したら、比喩でもなんでもなくここら一帯が吹き飛ぶでしょう。
この公爵家別邸は王都のそれなりに中心近くにあります。
そんな場所に大穴が開くんです。近隣の他の貴族家も巻き込まれ、おそらく王城の一部もその被害を受けるでしょう。
そして、そんな未曾有の大災害の後始末をするべき国王も、補佐し、貴族をまとめるはずの宰相も死亡。
声の大きさと勢いだけはある第1側室派の後押しで第1王子が即位するも、派閥以外の貴族のことごとくが反発。内乱勃発。
ヒロインの恋路で世界を救うとか、平穏な生活とかそんなこと言えない…なぜならわたしもすでに死んでるから。
「……………分かりました。覚悟、決まりました」
長い長いため息を吐いた後、スッと一呼吸。女は度胸!!
良いでしょう、やりましょう。
その意気込みのまま、隣のベイルードを見上げる。決してチビではないし、ヒール靴も履いているのにそれでも彼の方がいくらも背が高い。
下から見上げる顔は、平素のニヤケ面だが少しだけ緊張感を孕んだ顔をしているが、美形だ。中身はともかく、流石、乙女ゲームの攻略対象。顔が良い。
その美形顔を見上げながら『だから、殿下も覚悟を決めてくださいませ』と目礼をし、魔力が荒ぶるダイニングに向けて公爵令嬢に転生してから初めて出すであろう、声量を張り上げる。
「わたし、リリーシア・ゲイルバードは
隣でベイルードがギョッとし、ダイニングの中の公爵と国王が揃ってこちらを向く。
「ただし!!花嫁修行は行いません。王城にも入りません。ベイルード殿下に花婿修行をしていただきます!!」
お前が、嫁に(この場合は婿に)来るんだよ!!
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