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単純な『娘はやらん』闘争かと思いきや、欲しいのはむしろその父親だった?
何を言っているのか分からんって?わたしにも分かんない!!
ベイルードとしては相次ぐ襲撃の犯人と言う疑い(疑いどころか真実犯人コイツ)を誤魔化すため、
『度重なる襲撃に運よく駆けつけ救出できたのは、思わず付き
それがなぜに『婚約者になりました』にまで飛躍したのかと言うと、この父親…国王陛下の思惑だったらしい。
まぁ、第2王子が心底望んでもないことをゴリ押しできる人間なんて限られているもんな。
この王様、どうやらうちのお父さん…ゲイルバード公爵に並々ならぬ友情を抱いているらしく。
同性愛者ではなく…王族であり、国王であることから友人関係も限られ、その中でも公私共にに許されていた友人がベイルード公爵家嫡男のお父さんだった。
親友…いや、
決して恋情ではないけれど、友情というには足りないその思いから
『そうだ家族になろう』と計画していたと言うではないか。
長女が産まれ長男が産まれ…公爵家の後継もちゃんといるし、リリーシアでもリュカスでもどちらでも良いから貰い受ける気満々だったらしい。
ただ、姉弟揃って王族に
『リリーシア嬢を嫁に』と言い出した第1王子に乗っかろうとした時は、派閥の貴族以外から大反対されて、我が息子の人気のなさに泣きたくなると同時に、そんな人気者なお嫁さんが貰えるなんてうちの息子(不特定多数)は幸せ者だな〜とうっとりしていたんだとか…。怖い。
この辺りで公爵から特大の雷が落ちた。
比喩表現ではなく、本当に、雷が室内で発生し、蹂躙し始めたのだ。
これには、父ちゃんカッケェ〜いいぞ〜やれやれ〜とか呑気に観戦もしていられない。
公爵の勇姿に応援モードだったわたしとは反対に、ちょっと遠い目で(ニヤケ面で目は見えていないけど)乾いた笑いを浮かべていたベイルードも慌てて防御術式を展開。
咄嗟の判断で、部屋から漏れないように遮断術式。そして自分とわたしに防御術式、と多重で魔術を展開し始めた。
調節が難しい多重発動を難なく行うあたり、世界一強い(本人談)は本当なのかもしれない。
そんな危険地帯に変わってしまったダイニングを、ベイルードに守られながらコソコソ後にし
扉の影から見守っていると、部屋には更なる爆弾が次々と投下され
今日は公爵家別邸最後の日かもしれない…と同じく見守っていた執事が泣き始めた。
ちなみに、新たに投下された爆弾は『それならば私が嫁に貰う!!』だ。
『何番目の妾にするつもりだクソ野郎!!』「何番目の女だ…」と公爵とベイルードの呟きは同時だった。嫌なシンクロだ。
仮にも息子(たち)の嫁に欲しいと思っている少女を、自分の嫁にする心積りもあるとか…真顔で固まったベイルードが今だけは哀れに思える。
国王は、流石に君主だけあって守りは完璧鉄壁らしく、この
こんなに面の皮が厚くないと君主は務まらないのか…厳しい世界だ。
そもそも、娘LOVEで溺愛している父親に対し気軽に『嫁にくれ』と言うのも地雷なら、その相手は誰でも良いし、なんなら自分が嫁に貰うでも構わん!!とあっけらかんに言われたら…。
たとえ父親と同じ年齢だろうと…そこに愛があるなら反対し続け嫌い続けるが、いつかは許す。
望み望まれ『幸せになります』と涙まじりの笑顔で言われたら、血の涙を流し、食いしばった歯をボロボロにしながらも許す。
それが…誰でも良い?なんなら、この目の前のオッサンの嫁にする??
ふ ざ け る なっ !!!
そんな、声にならない…音声を超越した
果たして、この言い争いの着地はどうなるのか…ハラハラしていると、
隣で同じように覗き込んでいたベイルードが小さく、そろそろ不味いぞと告げてくる。
なんの事か問うように見上げれば、相変わらず瞳の見えない細目だが真剣味の増した顔で、少し焦りを孕んだ声が『分からないのか?』と、質問に質問で返してくる。
見当もつかない、とキョトンとした顔で見返せば、盛大にため息を吐きながら
「子供のケンカの行き着く先は『もうお前なんか知らない』…つまり絶好宣言だな」
自分の父親を子供って言い切るあたりどうかとも思ったけれど、
ベイルードとしては人生を何度も繰り返している所為か、精神的には何百…下手したら何千のお爺ちゃんなのだろう。
アラ神(アラウンド神話級)からすれば、アラフォーの言い争いなんて乳幼児の殴り合いにも満たないのかもしれない。
この場合は公爵から国王への絶好宣言。
友愛が行き過ぎて重すぎる状態の相手に向かっての、絶好宣言。
言った側は、言い切って『あとは知〜らない』とそっぽ向いて終わりだが
今度は言われた側が暴れるのが目に見えている。
友人相手にヤンデレってそうなオッサンだが、仮にも女神の加護を受けし当代の国王。
別邸のご臨終どころか、地域一帯が崩壊しかねない。
ベイルードならそれも防げるか、最小にとどめられるだろうが…そこまでの魔力や術式をいつ学んだ?と言う問題に発展してしまう。
今のところ、その膨大な魔力や魔術式の知識でチート無双をしていない以上、隠してきたのだろう。
それを、こんなオッサンのケンカで暴露するのも何とも言えない話だ。
しかし、どうするか気にするのが少し遅過ぎてようで…
とうとう、危惧していた特大の爆弾が、公爵の口から落とされる。
本当、この世界の人間『爆弾発言』好き過ぎない??
『悠久の
クソゲーとは言われてたけど、そんなに殺伐とした世界ではなかったはずだ。
「現実逃避で閉じこもるな…どうにかしろリリーシア嬢」
軽く突かれて思考が現実に戻される。
だって、耐えられないよ…『もうお前なんか知らない!宰相やめる絶好だ!!』って行ったアラフォーが自分の父親で
言われてショックで黙って固まったのが自国の王だなんて…。
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