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心の底からの拒絶反応を素でしてしまい,わたしは今,顔面を鷲掴みにされ潰されようとしている…。
自分だって嫌がってるくせに,同じように嫌がられるとムカつくってかなり理不尽じゃない??
「実はな,これは夢だ」
流石に,何の痕跡も残さずこの防衛術を突破するのは不可能だからな。と鼻で笑いながら,徐々に頭を掴んだ手の力が増していく。こめかみがキリキリと痛む。
「面倒な条件が必要だから気軽には使えんが,夢は無意識の領域だ。普段隠しているものが
放り捨てるように掴んでいた頭を投げ出され,その勢いのままベッドに倒れ込む。
その上に覆い被さるようにのしかかってきたベイルードが見下ろしながら、今度は顎を掴み目を合わせてくる。
「答えろ。お前は何者だ?何を企んでいる?」
やっぱり,まだ疑っていたのか…それはまぁ…想定内ではあったけれど,どうしよう…嘘がつけないこの状況は最大のピンチだ。
夢の中といったけれど,夢で殺されたら現実でもそうなるのか?
それとも,改めて現実でまた…三度の襲撃を行い殺しに来るのだろうか??
「わたしは…何者でもない…ただのリリーシア。静かに穏やかに生きたいだけ」
スルリと自分の意図しない言葉がこぼれ出るけれど,
公爵令嬢としては地味な感じの願望だけれど『深窓の令嬢』であるリリーシアには妥当な願いだ。地味で大人しい令嬢のささやかな願いっぽい!!
「…その穏やかな生活のために,あの平民女の世話を焼くのか??」
これには肯定の意味で首を縦にふる。
わたしの…世界の平穏のためにはヒロインの存在は不可欠だ。
それを決定つけたのは目の前の男。彼に起こっている死に戻りループがヒロイン不在によるバッドエンドの繰り返しだと,この世界が乙女ゲームの世界だと知っているわたしには容易に想像できている。
「俺との婚約をどう思っ…」「絶対に嫌」
食い気味に拒否の言葉が出てくるあたり,どれだけ全力で拒絶してるのか…心の底から嫌なんだな。
まぁ,邪魔だったり疑わしいと即殺しようとするどサイコ野郎なんて,誰でもいやだろう。
「貴様…この状況でよくもそんなことをほざけたな」
ニヤケ面に青筋たてて激怒するという,器用な顔面の筋肉の使い方をしたベイルードが,そのままグイっと顔を近づけキスをしそうな距離まで肉薄してくる。
「第2王子では不服か??宰相公爵の令嬢よ…しかし,俺はかつては国すら手に入れた男ぞ」
喋るたびに,ベイルードの唇がわたしの唇にあたりそうだ。いや,これ少しかすめてる気がする。
それ以前に息が当たって不快感しかない。いくらイケメンとはいえ,何とも…恋愛感情としては論外で,人間としては恐怖心を抱いている相手の吐く息とか気持ち悪くて仕方ない。
『ただ(し)イケ(メンに限る)』とか嘘だったな。
イケメンでも,無理で嫌なものは無理で嫌!!
そう思っていたら,そう出てしまった。
夢の中,深窓意識の中。聞かれた質問に正直になってしまうだけでなく,心の底から思ったことまで口を吐いてしまうらしい。
『気持ち悪い』と無感動に零された言葉に,まさかそんな事を言われると思っていなかっらベイルードの手が一瞬緩み,顔もわずかに引く。
その瞬間を逃さず,習ってから一度も人に向けたことのなかった攻撃用の魔術を発動させる。
本来であれば,王族に対して攻撃など許されるものではないが…同意も許可もなく寝室に入り込みベッドに押し倒し組み敷く暴漢への抵抗なのでノーカン。
というか,そもそもここは今,夢の中なのだ。現実ではない。
ならば,やることは一つ。
今現在行われている乙女の寝室への不法侵入に合わせて,二度にわたる襲撃とその後の執拗な追及。
この王子さまよりもたらされた理不尽で不愉快で腹立たしく悔しい…いわゆる日頃の鬱憤を,今!!ここで返させてもらおう。
魔術による攻撃で,ベッドの天蓋を破壊し吹き飛ばされたベイルードが痛みにか衝撃かに顔を歪めながら,床に蹲っている。
信じられない者を見るような目で,ベッドの上にゆらりと立ち上がったわたしを見上げているけれど…。
一体,何にそんなに驚いているのか。
王子である自分を攻撃したことか?深窓の令嬢が躊躇わず攻撃魔術を人に向けたことか?そこに更に魔力を練り,大掛かりな攻撃魔術を行おうとしていることか??
「2度に渡り自分を殺そうとした者との婚姻なんて嫌に決まっているでしょう」
「断りもなく寝室に侵入し,あまつさえのしかかってくる男なんて不快に決まっているでしょう」
「それらを許されると思っている…それが染み付いた王族との婚約なんて願い下げに決まっているでしょう」
1つ1つ,不愉快で嫌いな理由を述べるたびに…罰が悪そうな顔になっていくし,反論もないのでちゃんと思い当たってはいるのだろう。自分のした事の自覚があるのは何よりだ。反省とは己の行いを自覚することから始まるからね。
しかし,それはそれとして…
「そもそもわたし,貴方が嫌いです」
明確に告げられた拒絶の言葉。それは奇しくも夢に侵入された者が侵入者を排除する鍵となる符牒ものだった。
同時に相当量の魔力が込められて術式が発動し,夢の中の寝室を半分以上を吹き飛ばしながらベイルードも飛ばされ消えたいった。
「……っ!?」
急激に浮上した意識につられるように飛び起き,ドキドキとうるさい心臓を押さえながら周囲を窺う。
天蓋のレースのカーテン越しに薄暗い室内が見える。自分が寝ていた場所以外に,ベッドに人がいた痕跡…重みに凹んだマットや皺のよったシーツなどは見られない。
本当に,夢の中での出来事だったのか??夢だとしても,それは本当にベイルードが何らかの術で侵入してきたのか??
あくまで,ここ最近の出来事による情緒不安定でわたしが勝手に見た夢かもしれない…。
そう思いたい。
それなのに,自分の香水でも部屋で
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