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入学式の間中,必死にこの『悠久のうた』の内容を思い出そうとしたが

自分の感想や参考にした攻略ブログの一部,と

ゲーム以外の部分に思考がブレてしまっていまいち集中できず,


思い出せたのは,攻略対象の第3王子,側近と護衛騎士。

隠しキャラその1には,ナビキャラが深く関わっているらしい??

…ところまでしか思い出せず,もう1人隠しキャラは思い出せなかった。


なんで集中しようとする時に限って

あくびを噛み締める横の人や,目の前でモゾモゾ揺れる後頭部,

退屈ねと囁き合う後ろの生徒のおしゃべりが気になるんだろうね。


人物の他に思い出せたのは…

ダンスパーティー的なイベントの日に,何者かの襲撃があり

現場になったパーティー会場が大惨事になる物語の転換イベント。


恋愛イベントによって都合よく会場にいなかったヒロインと攻略対象。


学園ものの育成RPG的乙女ゲームだったのが『世界を救え』な話に広がり,

まだ学生なのに,世界を滅ぼす敵に2人で対峙させられて…


あとはもうラストのプロポーズシーンしか出てこない。

いくら『薄い』と評価されたゲームだとしても,もっと紆余曲折あったはずだ。


しかし残念ながら,前世プラス今世で30年以上は前のはなし。

よほど,心に残った出来事でも風化してもおかしくない年月としつきのはずだ。


とにかく,乙女ゲームと言うジャンルにハマりたててで

お小遣いもバイト代も全部自分のお金だった学生時代だったのもあって

手当たり次第に,新発売も中古も手当たり次第だった頃。


ゲーム難易度の鬼畜さに公式ガイドブックも攻略本も探して,

攻略サイトも漁って,当時のレビューも読んで…。


ハッピーもバッドも,トラップ的なデスエンドも

およそ『エンディング』とされているものは全て回収して


一通り見たから満足って,次のゲームにすぐ移っちゃったんだっけ。


期間にして半年もない,せいぜいが1〜2ヶ月ほどのこと。


その後に,これは神ゲー!!と言えるものにも出会い,どハマりしたが

それにしても細部までは記憶していない。


基本的に,取っ替え引っ替えプレイだったので,この手の転生によくある

『隅々まで遊び尽くし記憶してるので,原作知識チートで余裕です』が出来ない。


なんで,こんな凡人アラフォーが転生されちゃったの?




幸いと言えるのか,ヒロイン&攻略対象3人とは同じクラスになり

様子見をするには絶好だった。


こうやって制服に身を包んだ攻略対照3人と見ると

キャラクター設定画などで見たイラスト通りにそこにいて

ちょっとした感動だ。


大体が自分の所属する身分や派閥ごとにグループになっているが

攻略対象の3人は,王族だけあって挨拶の群れに囲まれている。


如才なく返す王子さまと側近に対し

護衛の騎士は黙ってぼんやり突っ立ているだけに見える。


ゲームは当然,2次元で画面の向こうだし,

現実に目の前にいても子供の頃では印象も違うからピンとも来なかったけれど

成長し,ゲーム開始時の年齢になった彼らには確かに面影があった。


デフォルメされた似顔絵だけで本人に辿り着くのは難しいが

見比べると特徴が捉えられていて,やっと分かる感じ。


第3王子のエヴァン・ウィースラーとは

12歳のお茶会の時に顔を見たが,まさかその時は

エヴァンとは想像もしなかった。


そもそもどのゲームかマンガかラノベか,も分かってなかったし。


あの頃から童話の『王子さま』のような少年だったけど

今はさらに磨きがかかって胡散臭いぐらいに,キラキラと眩しい。


第3王子の参謀ポジションのニコラエス・ノエヴィアは

確か,お茶会の時にも王子の隣にいた気がする。

王子と金銀一対の様な彼は,常に笑顔なので人当たり良さそうだけど

実はめちゃくちゃ口も柄も悪いんだよね。猫かぶってるだけで。


最後の攻略対照である護衛騎士は,王子エヴァン側近ニコラエスの1歩後ろに控えている。

全身黒尽くめで寡黙なので近寄り難いが,実は天然でバレると様にならないから

『黙って立ってろ』と側近に言われてから,身内以外の前では黙ってる設定だっけ

確か名前は…ダスティン・バーモード。


当然,彼らは見た通りのキャラではなく,好感度が上がっての個別のシナリオでは

被っていた猫が剥がれると言うか,豹変したり,裏面が見れたりする。


それぞれに問題や悩みがあり,寄り添ったり解決したり応援したりして

好感度を上げて親交を深めるのだ。


攻略対象と長く交流し,向き合うからこそ話してくれる悩みは

めちゃくちゃに重かった記憶がある。


そんなのに向き合わなきゃいけないヒロインの苦労に

今からでも労いの言葉でも掛けたいくらいだけど


ヒロインは,今朝の貴族の馬車を止めてしまったのが噂で広がっているのか

同じ奨学金の生徒たちからも遠巻きにされポツンと座っている。


ゲームではこのあたり,どうなってたっけ??

プロローグのことが尾を引いてる描写とかあったっけ??


この辺は,ゲームと現実の差とかになるのかな。



頃合いを見計らってか,担任の教授がやってきて挨拶をし

生徒たちの自己紹介を開始させる。


少なくとも1年は同じ教室で学ぶ以上,

顔と名前ぐらいは一致させようと言う意図なのは分かるけど

一部の生徒には苦痛の時間なのは,世界が違っても変わらないようだ。


貴族出身の子達は爵位に関わらず人の前で喋るのに抵抗はない。

平民のお金持ちでも豪商や豪農の子達も

親や兄姉が人を率いて働くのを見て育つので,本人も慣れたものだ。


学者や研究職出身の子や奨学金の子達は苦戦している。


攻略対象のキャラとして『世界』にとって特別な存在というだけでなく,

王子とその側近は流石に堂に入った自己紹介で淀みなくスラスラと終え,

騎士は寡黙キャラを貫くために,名前を言って終わり。


やはりクラスの人気としても中心になるのは王子になりそうだ。


男の子全員分が終わり,次いで女子の自己紹介が始まる。


実は主人公の名前は思い出せていないので,ここは聞き逃さない様にしないと!!

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