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『悠久のうた』は乙女ゲームと言うジャンルの黎明れいめい期に,

他とは一味違う乙女ゲームとして販売されはしたものの,

そこそこ売れて埋もれていったゲームの1つだ。


RPGロールプレイングのシステムも取り入れ,

一般の人でも遊びやすくやり込み要素も盛り盛り。


しかし,いざ発売してみれば,乙女ゲームとしての恋愛面の描写が浅く数も少ない,

RPGとしてもバランスが悪い部分もあって,やり込み要素はただの鬼畜ゲー。


結局,キャラデザの絵師さんや声優さんは当たりだけど,

乙女ゲームの肝心な部分がと酷評されたゲームだ。


ゲームの詳細を覚えていないので,どれだけ『薄かった』かは

記憶が定かじゃないけれど,


『これ乙女ゲー??』と思ったのは確か。


ヒロインと攻略対象はただの『旅の仲間』以上の会話をしないし

そもそもボイスありのセリフが少なくて


声が聞きたかったら,雑魚ざこにボコられろと攻略サイトに書かれてた気がする。


それでも,やり込み好きゲーマーや

イラスト,声優さん目当てでそれなりに売れはしてFDファンディスクなどの追加コンテンツや,

公式ガイドブックまで発売されたが,

サウンドトラックサントラは売れ残りを危惧し完全受注生産。


その他,メディアミックス(コミカライズやノベル化)も特になく

その後に続く乙女ゲームのビッグタイトルに飲まれ,泡沫うたかたに消えた乙女ゲームだ。


と,レビューブログで読んだ気がする。


その人はかなりのやり込みプレイヤーで,

同ブログ内で攻略記事も書いていてだいぶお世話になった。



ストーリーは確か…


平民でありながら驚きの魔力量の主人公ヒロイン名称不明覚えてない

『王立エリエンテイル学園』に通うことになり,


毛玉マスコットでナビキャラでヒロイン以外には見えない

思い出せない名称不明と一緒に


王子さまと側近と護衛騎士と,後なんか隠しキャラ2人と関わりつつ

学園が管理するダンジョンでステータスを育成し

最終的に世界を救う…話だった気がする。


攻略対象ごとにエンディング条件のステータスが異なり,

さらに少ない会話やイベントで好感度を稼ぐ必要もあって

基本,マンツーマン攻略になる。


普通はそこまで1人に向き合うゲームを何周かしてれば

もっと覚えていても良さそうなのに…


記憶の中のゲーム画面はだいぶ端折はしょられている。



プロローグでは,門を潜ったあたりで,見えないナビキャラと話をしていると,

道を塞いでしまって怒られるんだった。


遠方からやってくるヒロインは,王都内に伝手つてもなく

金銭的余裕もないので,学園内にある『寮』を借りることになり

まさかの入学式当日に!!引っ越してくることになっていた。


当然,馬車で来ると思い込まれていたので,

入学案内のには,この馬車が出入りするための門が記載されていた。


乗合馬車と徒歩,まさかのヒッチハイクを繰り返し王都に到着し,

そのまま荷物を抱えて登校…結果,案内人のいる停車場にたどり着けず,

右も左も分かぬまま,ポカンと校舎を見上げるヒロインが完成したのだ。


ちなみにこれは,その後につながる伏線でも何でもない無意味イベントだ。


道を塞がれた馬車の中に攻略対象がいて

印象に残ったり,出会いの会話がなされるわけでもない。


思い込みから確認を怠った学園側に,

見知らぬ土地に来るのに下調べもしなかったヒロインが

一方的に怒られると言う謎のイベントだ。


正直,どっちもどっちというか…

少なくとも一方的に頭下げなきゃいけない感じでもないのに!!と

プレイ時は最初の1回目で嫌気がさして

あとは,決定ボタンを連打しながらSNSチェックやマンガ読んでたっけ…。


ゲーム内容とはあまり関係ないことばかり思い出すが,

今のわたしに有益な記憶が1つあったりもする。


『悠久のうた』には恋や育成のライバル(♀)は登場しない!!


他キャラやモブに対して

ちょっとした嫉妬会話があった気がするが,基本マンツーマン。

1人と向き合い,1人と運命を共にする。そんなゲームだ。


最初は真面目で勤勉なヒロインの勉強やダンジョン攻略の手助けをする

お助け役や教師役として交流が始まり,


ステータスがいくらか上がると『お互い切磋琢磨しよう』とか

『負けてられないな』と言った発言が出る,良きライバル関係になり,


最終的に,背中を預ける相棒にまでなって…初めて恋心の芽生えだ。


お互い切磋琢磨してるライバルなんだけれど!!

頼りになる相棒で,性別の垣根を超えた仲間のはずなのに!!

フとした瞬間に女の子として意識しちゃって…ドキドキ★


1枚絵スチル&ボイス付きの恋愛イベントのほとんどが

そんなお決まりな展開ばかりだった気がする。


流石に,攻略対象ごとの設定に沿ったシーンもあったが

シナリオライターの恋愛スキルが低いのか,

恋愛イベントはどれも似たような物ばかりだった。


これが『恋愛イベントが薄い』と言われる由縁ゆえん


あのゲームのシナリオライターは,

イラストレーターさんと声優さんにもっと感謝した方が良いと思う。



と,まぁ…こんな感じに,狭い範囲で進むシナリオで

最終局面で世界を救うまで,ヒロインの周りには攻略対象か

ステータス育成時の授業の教授くらいしか登場人物は現れない。


とは言え,まだ油断は禁物。


いくら公式には悪役令嬢もライバルも存在しないとはいえ,

ここは道筋決まったの創作の世界であると同時に,世界でもある。


ゲームのシナリオで進行していくかもしれないが,

それ以外は生身の人間関係なのだ。


もしかしたら,バタフライエフェクト的に『悪役令嬢』が発生するかもしれないし,

野生の悪役令嬢に仕立て上げられ,目があったらバトル開始!!とばかりに,

『全部あいつが悪い』と言われるかもしれない。


仲良くなって予防線を張ろうにも,

公爵令嬢が平民相手に入学早々の『初めましてヨロシク』は

今までやり通してきた『令嬢仕草』的にしてはならいことだ。


おそらくまずは,それぞれの身分ごとに固まり,

貴族は爵位や親戚縁者,派閥で自然とグループ分けがなされるはず。


同じクラスの人間である以上,事務的な会話はするが

貴族と平民の間にはそれくらいの壁がある。



どうしたものか,とひたすら悩みつづけでた結論は

『静観』が妥当となった。


入学式の間中悩み続けてでた結論だ。


日和見ひよりみすぎる気もするけど,相手がどんな行動をするかもわからないし

しばらくは様子を見るしかない。


仕方ない,大人は冒険を恐れ保守的になるものだ…。


余談だけど,

新入生代表で第3王子さまが何かしゃべっていた気がするけれど

全く聞いていなかった。

周りにならって拍手したけど,何の話ししてたんだろう??


まぁ,別に関係ないか。


彼はバッチリ攻略対象で,今後とも関わる気も親しくなる気もないからね。


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