10 たった1つの笑顔

ボウリングの優勝は、海兄ちゃんだった。

俺は、準優勝だったけど、海兄ちゃんと30点ぐらい差があって、なんか悔しかった。

みんなは、「すごい」って褒めてくれたけど、そんなこと言われるとよけい悔しくなっちまった。

それから、みんなでゲーセンで勝負したり、(負けたけど…)フードコートで、みんな食べるもん違って笑ったり、気づけば、あっと言う間に、五時半になっていた。

いつも一人だったあの頃には、信じられないようなことだった。

平和公園でみんなと解散して、帰ろうとしたら、

「和哉」

俺のことを呼ばれて振り返ると、一輝がいた。

「何?一輝」

「今日、どうだった?楽しかった?」

いきなりそんなこと真剣な顔で聞いてくるから、思わず笑っちまったよ。

「何が面白いのさ」

「いや、急に聞いてくるから。でもすんげぇ楽しかった。いつも一人だったあの頃の俺は、絶対信じられないぐらい」

そう言ってから、なんか照れくさくなって、下を向くと、

「良かった。和哉が楽しそうで、もちろん僕も楽しかったよ。僕、和哉と出会えて良かった。」

「和哉と出会えて良かった」この言葉が脳内を駆け巡った。


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