第2話 【飛行魔法】を改造してみた
アイナ様……って、やっぱり可愛いな。
初見で思ったが、精巧に造られたと人形かと勘違いしてしまうほど美しい。
「急にごめんなさい。助けてもらったのだから、質問よりまずは礼を言うべきよね。私はマナリティア王国の四大公爵家の1人、アイナ・ハーティリアよ。助けてくれてありがとう」
やっぱり貴族か……って、四大公爵家!?
公爵って貴族の中で1番上だよな。
めちゃくちゃ重要人物じゃないか。
「いえいえ、お礼なんて。僕はマナトっていいます。訳あって旅をしてたんだけど、迷ってしまって」
……しまった。
普通に返事をしてしまったけど、貴族相手なら跪いて丁寧に応対すべきだよね?
慌ててしゃがもうとすると、アイナ様は首を横に振る。
「待ってよマナト。恩人を跪かせるなんてハーティリア家の恥よ。そのままでいいし、敬語も不要よ。それより、あの魔法は何?!」
「何って言われても、僕は一般人だし普通に魔法を使っただけだけど、変だったかな?」
「普通って……。杖無しの無詠唱は高等な技術だし、ただの防御魔法である【魔力障壁】でナイフを破壊したり相手を吹き飛ばしたりできないわ」
やはり改造を施したことで、効果が本来の魔法と桁違いになってしまっていたらしい。
まだこの世界のことは把握できていないし【魔法改造】の能力については、黙っておくべきだろう。
「ねぇ、マナト。あなたさえ良ければ、私と一緒に王立魔法学園に通わない?」
王立魔法学園に?! 僕が?!
うーん……。確かに行く宛もないのだから、魔法学園に通うのもありかもしれない。
「通えるなら通いたいけど、いいのかな?」
「うんうん。王立魔法学園に通えるのは貴族と魔力持ちの使用人だけって決まりがあるんだけどね。でもマナトが大丈夫なら、ハーティリア公爵家の使用人枠で入学試験を受けれるように推薦するわ」
ただの一般人よりも、公爵家の後ろ盾がある方が今後の生活はより快適かもしれないな。
それにアイナ様は地位も名誉も美貌も兼ね備えているが、高飛車な性格って訳でもなさそうなので自然体で接する事が出来そうだし。
利点を感じた僕は素直に王立魔法学園に通いたい旨を伝えた。
もちろん彼女の返事は『OK!』だ。
「うん。私は魔法試験免除だから明日までに王都に着けばいいんだけど、試験を受けるなら……って、後1時間しかないわ!!」
近くにはアイナ様が乗っていた馬車があったが、肝心の馬と御者は先程の騒動で逃げてしまっていた。
「アイナ様、王都の方向は分かる? ……って使用人なら敬語にしないといけないですよね」
「まぁ使用人は形式上だし、私にはそのままでいいわ。方向は北の方向に一直線かしら。でも強化魔法を付与したとしても歩いて1時間なんて不可能よ。丸2日はかかるわよ?」
《大賢者なりきりセット》の能力で最適な魔法を検索する。
……下道は森や街等の障害物が多い可能性がある。なら、空からの方が速いかもしれない。
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★【飛行魔法】
宙に浮き、緩やかな速度で空を駆ける魔法。滞空中に魔力を多大に消費するため、長時間の飛行は難しい。
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……【飛行魔法】か。うん、これだな。
「よし、決めたよ。【飛行魔法】を使うことにする」
「えぇ? あれは消費魔力が多いし、そんなに速くないし、詠唱に5分もかかるから使い物にならないって言われてるゴミ魔法よ?」
「多分大丈夫だよ。ちょっと失礼してっと」
アイナ様の肩と太ももに腕を回し、お姫様抱っこの形をとる。
……うわ。めちゃくちゃ柔らかいし、何これ細ッ!
「ふぇ?! ちょ、ちょっと何するのマナト! こんな格好恥ずかしいからおろしてよ!?」
お嬢様が顔を真っ赤にして、足をバタバタさせる姿はとても愛らしい。
【飛行魔法】に《高速移動》と《空気抵抗無効化》、そして《重力軽減・極》を付与する。
「——『飛行魔法・改』発動!」
【飛行魔法・改】を発動すると、一瞬にして青空広がる快晴の空へと移動し、そのまま王都の方向へと言葉に表せない流星の如きスピードで突き進んでいった。
これ、やっべぇ!
めっちゃはぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
照りつける太陽の中、空中でアイナ様の叫び声だけが響き渡った。
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【登場人物紹介】
■アイナ・ハーティリア(15歳)
精巧な人形かと錯覚する程の美貌と宝石のように綺麗な青い眼をもつ美少女。
スレンダーなモデル体型だが、慎ましやかな胸の膨らみであるため、もう少し大きくなって欲しいと密かに思っている。
魔法大国マナリティア王国の四大公爵家の令嬢で、正真正銘のお嬢様。実はかなりの魔法センスの持ち主。
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