2 学校一の美少女

 人の少ない廊下を歩く。まだ朝早いから誰も通ってないし、脇でお喋りしてる生徒もいない。

 教室に着いた。まだ3人しかいなかった。誰も友達じゃないから挨拶はしない。

 それから少しずつ教室にいる人数が増えていき、席が段々と埋まっていった。


 俺は窓を見つめた。雨がしとしとと降っている。傘は持ってきたから安心だが、雨に濡れて風邪でも引かなきゃいいのだが。

 まあ、雨は嫌いじゃない。


 さて、ここで自己紹介をしよう。俺は一条いちじょう理玖りく。高校二年生だ。クラスはB組。髪は黒色の少し長めの長さ。勉強は出来ないが、人より少し運動神経が良い。体力には自信がある。


 HRが始まるのを待っていたら、廊下が何やら騒がしい。何か事件でも起きたのだろうか。


 きゃー! わー!


 歓声が湧くが、女子の声より男子の声の方が多い気がする。

 これはまさか……。

 廊下に出てみた。壁側に人の列が寄っている。すごい数の人の列だ。

 真ん中を歩いていたのは。


(やっぱり)


 この学校のマドンナであり、学校一の美少女――倉科和花くらしなのどかだった。黒髪ストレートのロングヘアーをなびかせ、颯爽と足音一つ立てずに廊下を歩く。鼻が高く、背も高い。真っ赤な唇は艶やかで、林檎のように赤く染まった頬は触ると柔らかそうだ。実際、雲の上の存在なので触ることすらはばかられるが。


 男女問わず人気が高く、評判の良い彼女の姿はボッチの俺ですら見とれてしまったみたいだ。

 俺が教室のドアの前でじぃーっと倉科さんを見て、ボーッと突っ立ってると。


「おい、和花様の邪魔だぞ!」と一人の男子に怒られてしまった。


「ごめんなさい」と俺は謝った。


「大丈夫。気にしなくて大丈夫よ」


 彼女は優しく微笑んだ。


 そういえば倉科さんも同じクラスだった。俺にはあまり関係の無い事なのでいちいち気にしていなかった。といっても倉科さんとは席が隣同士でもなく、少し離れた位置にお互いの席があった。あまり話す機会もない。住む世界が違うので、無闇に話していると他の生徒からクレームが入る。


 俺は再び自分の席に戻った。


 HRまで後10分だ。

 かなり朝は長いなー。早く来てる俺が悪いのだが。


 今日の一時限目は国語か……。

 鞄の中から教科書類を出しながら思う。案外苦手じゃないので悪くない。


 雨の景色を堪能してから、うつ伏せになって手と腕を伸ばした。


 あー早く授業始まって終わらねえかなぁ。あー1日の始まりって憂鬱。放課後、ヤマシタ・ベーカリーでパン永遠に食べてたい。美味しそうだなー。あー早く終われ、終われ、終われー。


 そう、俺は項垂うなだれていた。といってもいつもの事だ。


(そういえばアイツ来ねぇな……)


 うつ伏せになりながら、雨を見てふと思った。


 そんな時、真横から声がした。


「私の椅子の方にまで手と腕を伸ばさないでくれる? 気持ち悪いんだけど」


 真横にいたのは銀髪美少女だった。



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