リスの絵手紙 🎨

上月くるを

リスの絵手紙 🎨



 冬まっただなかの1月の下旬。

 ふと冬眠から覚めたシマリスのおばさんは、すぐに楽しいことを思い出しました。


 ――そうそう、アレがあったんだわ!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ


 晩秋、巣穴のまわりを清潔にととのえて、冬ごもりの準備をしているときのこと。

 モモンガの甥っ子が、見たこともない道具を里の土産に買って来てくれたのです。


 ――24色の水彩ペン。🌈


 パレットに絵の具を絞り出さなくても、筆を握っただけで好きな色が出て来る魔法の画材は、絵を描くことが大好きなシマリスのおばさんにとって最高の贈り物です。


 よく気がつくムササビの甥っ子は、筆ペンと一緒に葉書も買って来てくれました。

 これに絵を描いて森のお友だちに出したら? 自分が届けてあげると言うのです。


 シマリスのおばさんは大よろこびで、色とりどりの枯葉を美しく敷き詰めた祭壇に、どんぐりや木の実といっしょに飾り、すやすやと冬眠に入って行ったのでした。


      ****


 どれ、つぎの冬眠に入る前に、森の仲間たちに絵手紙を描いておこうかしらねえ。

 もうひとつの趣味の俳句でも添えたら、きっと楽しい絵葉書に仕上がるでしょう。



 👘 目覚むれば十二単じゅうにひとえ綺羅きらに  エゾカモシカさんへ

 🥀 かたくりの花咲く頃の逢瀬かな  二ホンザルさんへ

 🌸 満開の似合ふきみなれ山ざくら  ツキノワグマさんへ

 🌼 茅屋に案内あないせるらん 花すみれ  キタキツネさんへ

 🌞 たんぽぽの全き円を 愛しめる  二ホンタヌキさんへ

 🐗 猛進の目にくれなひの花あざみ  二ホンイノシシさんへ



 シマリスのおばさんは、葉書からはみ出るほどに大きな絵&短文を描きました。

 巣穴の郵便受けに入れておけば、モモンガの甥っ子が配達してくれるでしょう。


      ****


 さあて、そろそろ、もうひと眠りしようかしら。

 どんなお返事が届いているか、春が楽しみだわ。


 ――白やぎさんから お手紙 ついた アソレソ~レ ♪

   黒やぎさんたら 読まずに 食べた アソレソレ ♬


 愉しく歌いながら、おばさんはもう、夢のなか、み・た・い。

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