第2話 人気、出ないニャ。

 花子ちゃんが契約してくれて、田舎っぺ魔法少女と言う、大分おかしな愛称の魔法少女が誕生したニャ。


 だけど、だけどこれじゃあダメニャ。魔法少女って言うのは、もっとこう可愛くて、皆の憧れの的でなきゃいけないのニャ。なのに田舎っぺ魔法少女じゃあ、人気者になれる気がしないニャ。


 と言うわけで、もっと他にちゃんとした魔法少女が必要だと思ったボクは、花子ちゃんと一緒に新メンバーの勧誘を始めたんだけど。なかなかうまくいかなかったニャ。


 例えば、髪にパーマをかけて、ヨーヨーを持っているスケバンのお姉さんに声をかけた時。


「は? 魔法少女ってあの田舎のオバサンみたいな、超ダセェ格好をした奴の事だろ? アタシはあんなダサダサの格好なんてしねーっての。さっさと帰んな!」


 例えば、金髪ロールの、お金持ちのお嬢様に声をかけた時。


「おーほっほっほ! わたくしを指名するとは、目の付け所は良いですわね。けどごめん遊ばせ。あんな芋っぽい魔法少女になるなんて、お・こ・と・わ・り、ですわよ。おーほっほっほ!」


 例えば、左目に眼帯をした中二病の女の子に声をかけた時。


「くっくっく。私の魔力を嗅ぎ付けてきたか。我が左目に封印されし力を欲する気持ち、分からんでもない。だが断る、何故ならもんぺにほっかむりなんて恥ずかしすぎるからだ!」


 てなわけで、勧誘しても秒で断られる始末。

 ダメニャ。魔法少女になったからといって、皆も田舎のおっ母さんみたいな格好をしなきゃいけないわけじゃないんだけど、まともに話を聞いてくれないニャ。

 花子ちゃんが契約してくれたのは良いけど、勧誘はますます難しくなってるニャ。


「まあまあニャンコの先生、そう気を落とさんと。スイーツでも食べて元気を出すだ」


 そう言って花子ちゃんは美味しい蜜が吸えると言う花を差し出してくる。

 花子ちゃん、今日はスイーツ巡りをすると言って山に足を運んできてるニャ。だけどスイーツが花の蜜って。

 どうもボクのイメージするスイーツと、花子ちゃんのスイーツには差があるような気がするニャ。花子ちゃんの事だから、スイーツってお饅頭やお煎餅かなって思ってたけど、その上を言っていたニャ。


 まあそれはさておき。


「花子ちゃんの不人気は深刻ニャ。実は魔法少女は、皆の応援を力に変える能力があるのニャ。それを使えば、普通なら勝てないような強い魔獣が出てきても対抗できるんだけど、今のままじゃ応援なんてしてもらえないニャ」

「そうダスなあ。オラ何体も魔獣やっつけてるのに、何故か人気出ないだ。魔法少女って言ったら皆の憧れなのに、不思議だなー」


 いや、理由はハッキリしてるんだけどね。

 けど花子ちゃん、シンリャークが魔獣を送り込んでくる度に頑張って倒してるのに、ダサいダサいなんて言われて、ちょっと可哀想ニャ。落ち込んでなければ良いんだけど。


「ま、焦っても仕方がないだ。気長にやってくダスよ」

「え、良いのニャ? あんなに頑張ってるのに、皆冷たいとか思わないニャ?」

「はっはっは。そこまで心狭くないだよ。大丈夫、頑張って続けていけば、いつかきっと分かってもらえるだ。継続は力なりって、おっかあも言ってただ」


 花子ちゃん前向きニャ。

 これがこの子の良い所。ダサいとか芋っぽいとか言われても、いつも笑いながら町の皆を守るために戦ってくれてるニャ。


「そういえば。魔法少女に勧誘したボクが聞くのも変なんだけど、花子ちゃんはどうして危険を省みず戦うニャ?」

「戦う理由? うーん、ニャンコの先生には言ってなかったけど、実はオラ、都会の出じゃないんダス。実家があるのは、山の奥にある小さな村なんダス」


 それは確かに初耳ニャ。まあ聞かなくても、そんな気はしてたんだけどね。


「田舎にいた頃は、住んでいた村がオラの知る全てだっただよ。けんども進学して都会に来て、世界は広いって知って、もっと色んな所に行ってみたいって思っただ。なのにそんな世界を、悪い宇宙人に侵略なんて、させたくねーだよ」


 空を見上げながら、しみじみと語る花子ちゃん。

 何だか思ったよりまともな理由で驚いたニャ。


「オラはオラの守りたいものを守るために戦う。それだけだよ」

「ううっ、花子ちゃん良い子。みんなにもいつか、この思いが届いてほしいニャ。そうすれば田舎っぺ魔法少女のインスタのフォロワー数も増えて、グッズも売れるようになるのに」

「ニャンコの先生、勝手にオラのインスタや、グッズなんて作ってたんか?」

「う、ごめんニャ。けど別に、私利私欲のためにやってたんじゃないニャ。こうして得た利益が、魔法少女の活動資金になるのニャ。今はフォロワーが一桁で、グッズは全然売れてニャいけど」


 やっぱり人気が出ないのは悩みの種ニャ。

 応援を力に変える魔法少女にとって、人気が無いのは致命的な弱点だから、できることなら強い魔獣は現れないでほしいニャ。


 だけど世の中、そうそう思い通りにいかないもの。

 思ったより早く、強い魔獣が現れたんだニャ。

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