第6話
「行きますか、
「いいぜ、ベイベー!」
活きの良い返事と共に、
コンビニ内の状況はシンプルだ。サングラスとマスクを身に付けた男が店員に拳銃を突き付けて脅している様だ。
「こんな暑い季節に暑苦しい格好してんなぁ.........。で、いつ突入しますか?」
「
「緊張はしてますけどね。それより、どんな作戦でいきましょうか。」
「『強盗作戦』で行こうか。」
「ん?なんすかそれ?」
「あたし達が強盗としてコンビニに入って行くのさ。『強盗じゃー!金出せコラー!』って感じで。」
「.........なんかややこしくないですか?」
「じゃあどうする?」
「普通に買い物に来た客って感じでいいと思うんですけど。」
「それじゃあつまらんじゃろうが!こういうのはキャラクター設定が大事なんだよ!」
「キャラクターなんか要らないっすよ別に。」
「じゃあいいよ、善ちゃんは普通のつまらない人ね。あたしは徒歩で日本一週中の
「はぁ?」
不自然だ。黒でスカートが短めのワンピースを着た美女がハゲかつらを被っただけで僧侶を名乗るらしい。
「なぁぁぁぁぁぁむあみだぶつぅぅぅ。」
お祈りする様に両手を合わせて
「マジで行くんすか?」
と、
「行くよ
「(やべー、すっげー他人のふりしたい。)」
「な、何だテメーらはぁ!?」
強盗犯が叫んだが、
「
「(俺、
「嘘ついてんじゃねーぞ!!何が僧侶だ!そんなワンピース着た僧侶がいるわけねーだろ!!」
「ひぃっ!!どうしよ
「ほら、バレたっつってんじゃねーか!!」
「お、お主なかなか鋭いのう。お、おい、
「テメー今そいつの事『
「うっ!.........うぅう、.........うるさい!この、こ、この、う、うんこめが!!」
「苦し紛れの悪口が幼稚園児レベルだぞ!」
「(ああ、この人、すげーアホだ。)」
「テメーらの漫才に付き合う気はねーんだよ!とっとと金出せコラァ!」
「なんだとぉ!?これは漫才じゃない!コントだぞ!!」
「うるっせーんだよ!!おめーから撃ち殺すぞ
犯人の怒鳴り声に震え上がってしまった
「ぜ、
と、
「(頭が悪すぎる!!)」
そう思いながらも、
「(クソっ、何で
強盗犯がそう思った時にはハゲ女の左膝が強盗犯の右側頭部にクリーンヒットしていた。
強盗犯の意識が飛ぶ。
強盗犯は左右の側頭部に大ダメージを食らい、その場に膝から崩れた。
「やったね
「
「えへへ~、そうかなぁ.........。」
「それより店員さん、大丈夫ですか?」
「は、はい!あ、ありがとうございます!」
店員の女性は無事の様だ。
「あーあ、このコンビニ、夜中は女性店員一人だけかぁ、ちょいと不用心ですなぁ。」
ハゲ女が腕を組みながら言った。
「
「はい、勿論です。ありがとうございました。」
その後、すぐに警察が来て、強盗犯の男は逮捕された。コンビニは閉鎖され、店員の女性も帰る準備をして出ていった。
しかし、暗い夜道を歩いて帰ろうとする女性の目の前に
「そのバッグに入ってる物出せよ。」
「チッ、いつ気付いたのよ?」
「コンビニに入った時だよ。拳銃突き付けられてるってのに、何でそんなに落ち着いてられんだ?ふつう小便漏らしてもおかしくねー状況だろうよ。」
「!!」
「テメェが帰る準備してる時にレジの中身見せてもらったわ。札がねーんだけど。そのバッグの中だよなぁ?」
「どうやって?レジの鍵はあたしが.......!」
「中身なんか見てねーよバーカ。でも自分で認めたな?盗んだことを。」
「お前.........!あたしを騙して.........ムカつくわ、あんた。」
「教えてくれよ。いつから強盗犯と組んでたんだ?」
「組む?何言ってんの?あたしはチャンスを逃さなかっただけよ。」
「強盗は偶然だったって事か?」
「その通り。あれはあたしにも予想出来なかったわ。あのコンビニには三年勤めてるけど、あんな事は初めてよ。」
「『チャンスを逃さなかった』っつったが、どういうこった?」
「五年前まであたしはコソ泥だったのよ。安い宝石とかブランド品とか盗んでは金に変えてたわ。でもあたしって実はお金を大事にするタイプでね、気付いたら貯金額が宝くじ当たったぐらいの金額になってたのよ。それでわざわざ捕まるリスクを負ってまでやる必要無いなと思って、まともに働く事にしたのよ。そこでまさかの強盗犯登場。しかもあんたら一般人まで来た。ってことはあたしが被害者だって証明してくれるはずでしょ?だからあたしは誰からも警戒される事が無くなる。警察がやってきて、防犯カメラの録画映像データを持ってったけど、そこには拳銃を突き付けられた被害者のあたししか映ってない。こんなチャンスまたと無いでしょ?レジから金を盗ったのは店が閉鎖、つまり店の電源を全て落とした後だからね。なのに.........。」
「ど
「あんた一体何者?なんであたしが金を盗んだと思ったわけ?」
「『目は口程に物を言う』って言うだろ?テメェの目はきったねードブみてぇな目の色だったからよぉ、テメェがこれから何か悪い事するって思っただけよ。」
「そんな勘で見抜かれたってこと?あたし、演技力には自信あるんだけど.........。」
「俺には関係ねー。俺は目を見る。目を見ればそいつがどんな奴かは大体わかっちまうんだよ。」
「何それ?意味わかんない。今流行りの異能の
「いや、これは武道の
女性はバッグから拳銃を出して
「安心してぇ、一発で死なせてあげるわ。あんたの後は妙に運動神経がいいあんたの彼女も
ダッ!
女性が話してる途中で
ゴッ!!
「あ.........が.........!」
「話が長くて助かったぜ、さっさと撃っちまえば良かったのによぉ。それともまさか、拳銃握ってるってだけで主導権まで握ってるとか思っちゃってたのか?」
普通は相手が拳銃なんか持ってたら素手であるこっちは
「テメェマジで馬鹿だな。テメェには銃しか武器がねーんだよ。こっちは五体が凶器だぜ、つまり武器の数からして主導権を握ってるのは俺なんだよーん!!」
意味のわからない理論である。しかし
「俺はなぁ、お前みてーに俺より卑怯な人間が大嫌いなんだよ。今度会ったら殺すからね。」
そして女性の左肺をサッカーボールを蹴る様に
「ガハッ、ゲホッ!」
女性は咳と同時に血を吐いた。
「ぜ、
「行きますか、
ケロっとしていた。いつもの
「すいません、
「う、うん、正直ビビったよ。」
「あの女、俺に銃を向けながら、俺を殺した後は
これが
「安心して下さい。
「あ、あ、あたしのために?.........。」
「
「うん、そうだけど.........。」
「俺は
「!!」
弥宵は顔を真っ赤にして善蔵の顔を見ていた。
「行きましょうか。強盗犯も捕まったし、万事めでたしですね!」
自分の車に向かって歩き出す
弥宵は立ち止まったまま
「(..................ヤバい、
一度は崩れかけた
ドキドキが止まらないが、気付けば
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