十六、王宮の戦闘

 地下牢から出たニコとトムだったが、直後にけたたましい警報が鳴った。

 脱獄がばれたのだ。

「急ぐぞ!」

 目指すは王宮の駐車場。捕まる前に話したニコの計画では、ユリナとはそこで合流し、ジープで共に脱出する手筈となっている。

 駐車場への通路を進むと、バナナマシンガンを携帯した兵士が三人現れ、いきなり銃口を向けてきた。

 だが、ニコが左手でマシンガンを構える方が早かった。発射された二発の弾丸は兵士たちのそばにあった消火器に直撃し、破裂を起こし、三人が爆風で吹っ飛ばされた。

 信じられない、という表情のトムをニコはせかす。

「ジープを運転できるのは君しかいない!急げ!」

 警報を聞きつけた兵士たちも次第に集まり始め、広場から通路を走るニコとトムに、バナナマシンガンの猛射を加えてきた。

 ゼロコンマ五秒の差が明暗を分けた。夢中になって撃ち続けていた兵士たちの足元に手榴弾が投げられ、起爆した。凄まじい爆音とともに黒煙が上がる。かつて兵士だった者たちは跡形もなく吹き飛ばされていた。

 駐車場にたどり着き、トムが万力でニコを抱え上げて、ジープの後部座席に乗せると、自身は運転席に乗り、ジープを発進させた。弾切れを起こしたマシンガンに新しい弾倉を叩き込んで、ニコは兵士たちのいる方向へフルオートで射撃を開始した。座った状態のため、不自由な足のことを考えずに済むことで、ニコの攻撃は一層激しさを増した。

「ユリナはどこだ!」

「あそこ!門の前だ!」

 見てみると王宮の門の前に、ユリナが青ざめた表情で立っていた。トムが夢中でアクセルを踏み、ユリナの元へ急ぐ。

 永遠かと思われた爆走の後、ユリナの元へたどり着いた。

「乗れ!」

「そうはいかん!」

 現れたのはイクラムだった。

「反逆者を逃がすわけにはいかん!」

 ニコから奪われ、ウェブスターからイクラムの手に渡ったコンバット・マグナムをニコに突きつける。

 だが、ニコは左手でマグナムのシリンダーを鷲掴みにすると、なぜか弾は発砲されなかった。

「え?」

 イクラムは知らなかったのだ。撃鉄の起きていないリボルバーは、シリンダーを鷲掴みにされると、どんなに引き金を引こうにも弾は発射されないのだ。

 その隙にイクラムの腹にバナナマシンガンのマガジンに残っていた全弾をフルオートで撃ち込んだ。マグナムはもぎ取られ、イクラムは絶命した。

 一瞬、無残な姿のイクラムに立ち止まったユリナだったが、すぐにジープに乗り込んだ。

 門をジープの体当たりでぶち破り、ニコ達は脱出した。

 王宮から、ガジュ・シンがその様子を眺めていたが、彼は無表情でジープを見送った。


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