十三、異様な二人組
近衛兵たちに引っ立てられて、ニコとトムは車から降ろされた。ユリナは別らしく、車の傍らで近衛兵たちに囲まれている。拳銃で小突かれるように宮殿に進んでいくと、浅黒い肌の若い青年がやってきた。
服装はワイシャツにズボン、そこらの一般人と変わらないものだが、目が違う。ガジュ・シンの息子のようだ。
「そいつらか。ウェブスター大佐。」
青年は尊大そうな口調でそう言った。
「その通りです。イクラム殿下。ユリナ様をたぶらかしたのはこいつらです。」
「よく言うよ。」
ウェブスターの手のひら返しにニコは呆れてしまった。
するとウェブスターはニコに近づき、下腹部を思い切り殴った。
げふう、と無様な声を上げ、ニコは倒れた。
「何をする!」
温厚なトムもさすがに怒った。
「それはこっちのセリフだ。合衆国人が馬鹿な考えを起こすからこうなる。」
倒れているニコには構わず、ウェブスターはイクラムという王子に告げる。
「こいつらは藩王国への反逆を企てていました。処罰は委ねます。これはささやかなお礼です。」
そう言い、ウェブスターはニコのコンバット・マグナムをイクラムに丁重に渡した。
「これはこれは。」
イクラムはマグナムを太陽にかざし、
「ウェブスター。お前の配慮は常に我々を幸せにするよ。」と言った。
「げほっ。ユリナとは大違いだ。」
ようやくトムの助けを借りて、立ち上がったニコは言う。
「その分じゃ、普段から袖の下を渡しているということか。誇り高き帝国のノブレス・オブリージュはどうした。」
「黙れ。生きていたことを後悔させてやる。連れていけ!」
また近衛兵に小突かれ、ニコとトムは連行された。連行される時、不安げなユリナに対し、ニコはウインクをして見せた。
一方のユリナはまったくお咎めなしでイクラムに対面した。
「どういうことです。お兄様。あの方たちは私の大切な友人です!」
「ユリナ。お前もいずれわかる。あの二人はわが藩王国の脅威となる連中だ。」
「彼らをどうするつもりですか?」
「そうだな、最低でも一年の労働教化刑。うまくすれば強制送還で済むかもしれない。」
「そんな…。」
「ユリナよ。あの者たちに情けや同情は無用だ。」
「ならば私の首も刎ねますか?」
「馬鹿を言うな。お前にも父上の偉大なる計画を知ってもらう必要がある。」
「計画?帝国に宣戦布告するのですか?そんな馬鹿げたことを!」
「声が大きいぞ。今はまだ帝国とは蜜月の関係でいなければならない。お前には計画を説明したら暇を出す。首都で医学の勉強でもすればいい。」
「私は認めません!父上に会って話します!」
怒った様子で、ユリナはガジュ・シンの居城へ向かう。
イクラムはやれやれという様子で、
「何をしても手遅れなのにな。」と憐れむような様子でユリナを見送った。
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