猫、賢い。生後3ヶ月 -中-
その夜。
「あれ、猫は?」
猫はたまに行方不明になる。ただでさえ液体で、どこにでも侵入できるのに、鳴き声がしないとただの可愛いぬいぐるみだ。しかもよく自分からなくなるぬいぐるみ。
「さあ〜、台所じゃない?」
でも、台所から遊ぶ音はしない。どこだ? と探すと、猫はソファと壁の間に座っていた。猫は狭いスペースが好きで、ここ以外にパソコンと壁の間、コードがいっぱい隠してあるところなどに別荘を持っている。特にソファと壁の間にはよくいるので、間違えてソファを動かして猫をプチっと潰さないよう、猫に捧げたストレッチポールが壁との間に挟み込んである。
「あ、いた」
猫さんはちょっと不機嫌そうに、でも「みつかっちゃった」と言いたげにそこを離れた。
少し気になる隙間があった。ストレッチポールが斜めにはまっているのだ。
ここにはかつて家庭用のデータサーバーが置いてあったが、猫の到来によってストレッチポール以外排除されたはずだ。何かが落ちてでもいない限り、ストレッチポールが斜めにはまっているのはおかしい——と、そこまで考えたわけではない。ただその時は、なぜか斜めになったストレッチポールが興味を引いた。
ストレッチポールを持ち上げる。
「………あった」
ピンクの鈴入りボール。私の猫に会いたい欲が高まりすぎていた時に、大学近くの薬局で買ったボールだ。ネズミほどじゃないが、割とよく遊ぶ。私が「猫が喜ぶだろうな」と思って買ったおもちゃがドンピシャはまってくれたので、私のお気に入りでもあった。
今日の猫の行動。
私が何かを探していると思って、ピアノの下を気にしたり、家族みんな揃ってる時はいないはずの、ストレッチポールの上にいたり——賢すぎんか?
いや、偶然だろうとその日は結論づけた。
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