うちの猫の話をしたい

@sabo_tententen

子猫、賢い。生後3ヶ月 -前-

 実家にしばらく帰らなかったら、猫がだいぶおもちゃを無くしてしまったらしい。

 私が買った鈴入りボール2つ、咥えられるカラカラ鳴る灰色と、白のネズミの2つ、シャカシャカ音がするボールの小さい方。よくもまあ遊んだものだと逆に感心する。

 まだ幼いからか猫はそれはもう、よく遊ぶ。まだ家具に登れない分、からから、ころころとよく走っている。そしてその勢いのまま、シューズボックスの下や玄関脇のベンチの下、引き出しの下、ピアノの下にホールインワンしまくる。

「ぜーんぶ無くなったんよ」

 そういって母は私に、猫のおもちゃ入れを見せた。確かにあまり遊ばない魚のぬいぐるみ以外、綺麗さっぱり消えている。

「あんたどうせ暇でしょ?」

 私は大学の最後の夏休みで帰ってきた。時間はまあ、ある。

「………いや、暇だけど」

「じゃ、お願いね」

 ということで、近いうちにおもちゃ探し隊を(1人)結成することになった。


 重い腰を上げたのは、帰ってから1週間経ってからだった。我ながら根っこが生えまくっている。

 家族全員が出払った居間で、私は、高いところにブッ刺してある猫じゃらしを手に持った。猫が「なんだなんだ、遊ぶんか」と近寄ってくる。残念ながら今は違う。お前が一人で遊ぶために、私は今から頑張るんだぞ。猫じゃらしにやる気満々の猫をちょっとだけ無視し、居間の壁にあるアップライトピアノの下をライトで照らした。

 あったのは大量の埃、多分猫が遊んでてホールインワンしたメガネの曇り止め、よくわからん人型?のぬいぐるみキーホルダー。絶対にここだろと思っていたが、案外と少ない。まだタグすらついている人型ぬいぐるみに猫が反応したので、目の前でゆらゆらさせた。

「取ってこい!」

 ぽいっと台所の前まで投げる。猫は追いかけて、それを一瞬咥えたが、「あれ? いや、これじゃない…」とでもいうように、その場でポトリと落として「猫じゃらし!」と帰ってきた。いまだに「取ってこい」は一度も成功したことがない。

 相変わらず猫じゃらしに夢中の猫を従えて、玄関に向かう。シューズボックスの下を覗き込むが、ここには何もない。ベンチの下も同様だ。

 あれ? と再び居間に向かった。ピアノの下を覗き込む。やはりなにもない——と思ったら、猫がピアノの足の辺りをひどく気にしている。「あれ? ここになかったっけ?」とでも言うように。

 そういえばピアノの脚の陰はあまり気にしていなかった。四ヶ所あるうち、猫が手を突っ込んだところにライトを向ける。猫は「どうぞ」というように後ろに下がった。賢い。

 あったのは、白いネズミ。気に入られすぎて貼ってある布が裂け、悲惨な姿になっている。が、記憶にある通りのあのネズミだ。

「あった……」

 振るとカラカラ音がする。猫に向かって、カラカラ、ポイと投げてやった。猫はこれが好きなので、めちゃくちゃ食いつく。カラカラ、カラッカラ、カシャ…カシャカシャッ。踊るように台所の方にかけていき、暴れ回って部屋中を駆け回る。

 ということは、もうちょっとここにあるのでは? と再びライトを向ける。そこには、シャカシャカ音がする小さいボールもあった。お前どんだけこの近くが好きなんだ。若干呆れながら、カシャカシャカラカラ遊んでる猫に投げた。

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