第22話 ミスター&ミス誠楠コンテスト (次回、最終話)
『ミスター&ミス誠楠コンテスト』当日。
あの朝の夢の中では、私とサンダーが『ミスター&ミス誠楠コンテスト』のステージ上にいて、祝福されていた。
現実は、本川さんとの交際発覚により人気が急下降したサンダーとは僅差で、荻川君が『ミスター誠楠』に決定した。
そして、どういうわけか私だけが正夢になって、『ミス誠楠』に!
発表が終わってから、荻川君は白いタキシード、私は白いドレスに着替えた。
それがミスター&ミス誠楠の正装。
白いドレスは夢の中で見たのと同じだけど、夢の中ではあんなにときめきながらいたのに、今の私は、ドレスアップしてもあまり喜ばしく思えていない。
司会者に呼ばれてから、再びステージに上がる事になるけど、それまでステージの裾で、荻川君と待機していた。
日焼けした野球部のエースは、白いタキシード姿もよく似合っている。
でも、私は、去年と一昨年、そして夢の中で見て来たサンダーの白いタキシード姿の方が好き。
私のドレスアップした姿を見たサンダーは、どう思ってくれる?
いつもよりキレイって思ってもらえるかな......?
「実は、俺、松沢さんと一緒にステージに上がりたかったから、俺の周りのメガネ女子推し達に協力してもらった」
ちゃっかり笑顔の荻川君。
人気者の荻川君が裏で手を回していたんだ。
そんな所で、票を稼いでいたなんて......
まあ、そんな事でも無い限り、現実で、私が『ミス誠楠』に選ばれるなんて有り得ないもんね。
『ミス誠楠』に選ばれたのは嬉しかったけど、ホントは、夢の時のようにサンダーと一緒にこの場に立ちたかったな......
「荻川君、この前の答えだけど......」
早く、その事を伝えなきゃ!
いつまでも、荻川君に期待させておくのも良くないから......
「せっかくだから、この全校生徒の前で交際宣言するか!」
晴れ舞台で、自分が考えたシナリオ通りに進めようとしている様子の荻川君には、とても申し訳無いけど.....
「ごめんなさい。私、荻川君と付き合えない.......」
「松沢さん、どうして?まさか、まだ
荻川君、未練って......?
最初っから、サンダーに対する私の気持ちに気付いていたんだ......
それなのに、失恋して落ち込んでいた私に告白してきたの......?
「でも、それは岩神君の本心ではなくて、私の家の契約の為だったみたいなの......」
こんな事、荻川君に話しても良かったのか分からないけど、サンダーだけが私の為に犠牲になるなんて良くない!
「なんだ、バレてたのかよ!
荻川君......?
どうしたの、急に!
爽やかスポーツマンの印象しかなかった荻川君が豹変して、怖いサイコパスのよう......
バレてたって......?
野菜の販売契約を続ける為に、本川さんとサンダーが付き合い出した事を荻川君は知っていたの?
「荻川君は、もしかして、全部知っていたの......?」
「そうだよ、亜由と手を組んでたんだ!和佳の事が有ったのに、
そんなのって、おかしい!
荻川君のは、逆恨みでしかない!
こんな事したって、誰も幸せになんかなれないのに......
「だからって、元カノが、岩神君の不幸を望んでると思う?」
人の不幸を望むような性格だったら、自殺になんか追いやられなかったはず。
そして、そんな和佳さんを、サンダーも荻川君も、亡くなってから3年経っても想い続けているのだから。
「あの時だって、亜由にハブらせた後、俺が和佳を慰めて
元カノを自殺に追い込んだのは、本川さんと荻川君だったの?
友達であったはずの2人に裏切られて、失意のうちに自殺したサンダーの元カノ。
そうとも知らないで、サンダーはずっと自分のせいだと思って、自分を責め続けていた......
「『ミスター&ミス誠楠』のお2人さん、どうぞこちらへ」
スピーカーから司会者の声が響く。
「皆さん、白が眩しいほど似合っている、お2人の晴れ姿に注目です!早速、感想を伺いましょうか。まずは、『ミスター誠楠』の荻川享平君」
「3年生でやっと念願の『ミスター誠楠』に選ばれて嬉しいです!ついでに、この場を借りての報告ですが、『ミス誠楠』の松沢日菜さんと交際宣言します!」
私もだけど、会場内の全校生徒達が大きく動揺しざわめいた。
交際宣言って、私、さっき、荻川君に断ったはずなのに......
「えっ、それは唐突過ぎて、皆さん、大変驚いてますよ!それも含めて、『ミス誠楠』の松沢日菜さんの感想をどうぞ」
私の番......
サンダーは、どこにいるの?
あっ、左後方に本川さんと一緒に見てくれている。
サンダー、今の荻川君の発言で驚いたよね?
でも、これから、もっと驚かせるから、その場でしっかり聴いていて!
「私が選ばれるなんて、夢のようでまだ信じられないです。ただ、あの、せっかくですが、私は......荻川君とは付き合いません!」
ざわざわしていた会場内が一気に、シーンとなって、驚きの眼差しを私に集中して浴びせて来るのを感じる。
「松沢さん!」
横にいる荻川君からの今まで目にした事も無いような非難めいた冷たい視線が突き刺さる。
荻川君の描いたシナリオ通りに進まなくて申し訳無いけど、私は、荻川君に加担するつもりなんてない!
「だって、私は、ずっと岩神君が大好きだから!」
壇上から降りて、純白のドレスの裾を踏んでコケないように気を付けながら、サンダーの所へ急いだ。
私、こんな大勢の前で、言ってしまった......
まだ胸のドキドキが止まらない!
私の告白、ちゃんと聴いていてくれたよね、サンダー?
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