第5話 割れたメガネと高鳴る想い
サンダーとこんなにも長く一緒にいられるなんて......
ぶつかったサッカーボールに感謝、割れたレンズに感謝しかない!
でも、まさか、サンダーのお姉さんと御対面する事になってしまうなんて......
どうしよう......
急展開に、気持ちが付いて行けなくて、さっきから、もう心臓がバクバクと高鳴り過ぎて、このままだとどうにかなりそう!
サンダーのお姉さんなら、美人で華やかなイメージ......
そういう人から見て、私みたいな地味系メガネ女子なんて、どう思われるかな?
よくサンダーと一緒にいる一軍女子達に比べたら、すごく見劣りする私なんか、多分、良い印象持ってもらえないよね.......
一緒にいても、問題外みたいな感じで、スルーされても仕方ないよね。
それなのに、サンダーは、こんな私なんかの為に、こうして一緒に早退までして、お姉さんの眼科でメガネを直してくれようとしている。
サンダーの人柄の良さが身に沁みる......
こんなに親身になってくれる人だったんだ......
「ありがとう」
「俺が壊したんだから、礼はいいよ。それよか、メガネ壊れるくらいにボールの衝撃が強かったなら、顔とか頭とか打って痛くね?」
サンダーの顔が近付いて来て、私の目の辺りを見ている!
片目レンズな私の顔って、1軍女子達が笑っていたようにブザマだし、その上、泣いた赤鼻と赤目で、尚更ブサイク度が増してそう......
初めて至近距離で、サンダーに見られる私の顔が、こんな一番見られたくないようなブザマな顔だなんて......
「大丈夫......」
これ以上、こんな顔を見られないように背けた。
「今、気付いたけど、松沢さんって、キレイな目してるね」
聞き流しそうなくらいサラッと言ったサンダー。
今の空耳なんかじゃなかったよね?
このタイミングで、そんな事、言う?
本当に、サンダーの口から発せられた言葉?
さり気無い一言で、私の心臓の鼓動がより激しくなったのを、サンダーは気付きもしなさそう。
今のって、私、なんて言い返したらいい?
そんな褒め言葉って、今まで言われた経験無くて、急に返す言葉が思い浮かばない!
お礼を言うべき?
否定して首を振るべき?
何か言葉を用意しなきゃならないのは分かっているけど、もう心は、有頂天になって空まで舞い上がりそう!
そんな気持ちのまま、どう返答していいか分からなくて見上げた時に、いつもの退廃的なサンダーの表情が視界に入って、私の中で何かが急降下した。
ああ、そうか......
私、ホントにバカみたい......
私が知らなかっただけで、サンダーは、取り巻いている色んな女子達に褒め言葉なんて、日常茶飯事的に言い慣れているんだ。
彼にとって、さっきの言葉はただの社交辞令!
それを一大事のように勘違いして受け止めたら、サンダーにとって迷惑なんだ。
きっと、サンダーも今頃、私に対して言った事を後悔している.....
サンダーをこれ以上、失望させないように、私は、何とか軽く受け流せている言葉を示さなきゃ。
「携帯の買い替えみたいに......目を褒めて、メガネの人をコンタクトレンズに買い替えさせた方が、お姉さんの業績が上がるとしたら、私は、そうした方がいい......?」
つい思い付いた事を言ってしまったけど、もしかして、嫌味っぽく聞こえた?
サンダーが、ビックリしたような顔してる!
でも、すぐに大爆笑されてしまった......
「松沢さん、なんか考え込んでると思ったら。俺、そんな策略家に見えてた?」
「ううん、違うの......私、今までお世辞言われ慣れてなかったから、つい、褒め言葉には、何か裏が有るに違いないって勘繰ってしまって、ごめんなさい......」
慌てて否定しても、しばらく笑い続けているサンダー。
こんな風に笑う人だったんだ.....
もっと、どこか冷めてる人だと思っていた。
少なくとも私なんかの前で、そんな笑い顔は見せない感じの人だと思っていた。
「裏なんて無いよ。コンタクトに変えさせる魂胆は無いから。それに、さっき言った事、お世辞なんかじゃないよ。メガネだから、周りが気付いてないだけで、本当に、キレイな目しているよ」
少しずつ笑いが収まった状態で、それでも目元や口元を緩ませながら言ったサンダー。
「ありがとう......まだ信じられないけど」
信じられない事の連続過ぎて、もしかして、まだ夢の続きかも知れないって疑ってしまう。
サンダーと歩きながら、こんな自然に会話していていいの?
「俺、親が美容形成外科医だから、小さい頃からキレイな人は見慣れているんだ。化粧したり、色々いじってキレイな目の子は多いけど、素で目がキレイって、あまりいないから、松沢さん、自信持っていいよ」
からかっていたり、騙そうとしているような感じじゃない!
サンダーは、本当にそう思って、私に自信持たせようとしてくれてる!
「ありがとう。私、なんか、あの......普段から、けなされるのは慣れているんだけど......」
嬉しいのに、返す言葉が思い付かなくて、つい、ぎこちなくなってしまう。
こんなにガチガチになって、みっともないよね。
サンダーの周りの女子達だったら、こんな時、どう受け答えするのかな?
「学校って、松沢さんにとっては、居心地良さげに見えないけど、悪口とか気にするなよ」
あっ、もしかして......
一軍女子と一緒に居るサンダーは、私の悪口とかよく聞かされてるから、励ましてくれているんだ!
優しい......
いつも遠目で見ているだけで、十分だったサンダーが......
私の事なんて、無関心だと思っていたのに、ちゃんと気に留めてくれていた。
こんなに優しくされたら、夢見の件も有るから、妄想だけで済まされなくて、つい正夢になるのを期待してしまいそう。
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