詩「月末」

有原野分

月末

十二月末は死を想う

ぎっしりの厭世感で財布は重たく

生きることが働くことだとしたら

確かにもう何年も何十年も働いてきた

西暦は変わり

夏は冬になり

風に揺れる稲穂が真っ赤に燃えて

ああ 人生は夕焼けだ

残高を確かめる行為は

余命を縮める愚かな遠吠え

蝋燭の幽かな火が

冷風に晒されるあの恐ろしい瞬間から

私はいつか開放されるのだろうか

家族の願いはいつも侘しい

幼い娘は口を膨らませながら

なにかを物欲しそうに

空間の一点を眺めている

そこにはなにもない

揺れることも実ることも

シャボン玉のような透明な塊を

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詩「月末」 有原野分 @yujiarihara

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