20××年12月22日<羨望>
就活は、人生をさらに憂鬱なものにさせる。
自己分析をすればするほど、自分が嫌になる。
かといって、
自分は周りの子たちとは違う、という思いを捨てきれず、
私は、アナウンサーを目指すことにした。
「小さい頃からテレビが好き。あの言葉に救われた。」
「明るい性格、根性は誰にも負けません。」
薄っぺらい言葉で埋めていく。
テレビやアナウンサーに熱い情熱があるわけではないのだから、
5分考えても、3日考えても同じ。
どこかの地方局には通るかもしれない。
もちろんそんな考えは、甘すぎた。
3年の夏から始まるインターンシップは、全て書類選考落ち。
面接も経験することなく終わった。
私は、本選考に挑戦する勇気さえなかった。
"本気を出せば、できたかもしれない。"
この可能性を無くしてしまうのが怖かったからだ。
”いつか叶うかもしれない、本当はできたかもしれない。”と
希望を持てることは幸せだ。
いつからだろう。こんなに弱くなってしまったのは。
いつからだろう。負けることを悔しいと感じるのではなく、
恥ずかしいと感じるようになってしまったのは。
一般企業に内定をもらって、平凡に就活を終えた。
残された学生生活は、残りおよそ1年。
満たされない心を昇華させるため、私はYouTubeを選んだ。
失敗は恥。怖い。
でも、登録者が増えなければ、知人に気づかれないうちに辞めてしまえばいい。
ノーリスク。
早い段階で辞めれば、”もっと続けていれば成功したかもしれない”という、
いつものくだらない希望を持ち続けられる。
ノーリスク。
拒食と過食でイカれ切った満腹中枢神経を使って、大食いチャンネルを作った。
痩せ細った体に、大量の食物が押し込まれていく情景は、
人の食欲を刺激する以上に、
「この子、絶対吐いてるでしょ、きも」
「2:30の食べ方が汚い」
軽蔑の眼差しと愚痴の吐口にちょうどいい場所となる。
自分も彼と同じ、YouTubeというフィールドに立った瞬間、
彼の存在が物凄く身近に感じた。
会いたい。
会える気がする。
糖分もタンパク質も、やる気も情熱も、何かも空っぽになっていた体から、
久しぶりに熱い何かが沸き起こるのを感じた。
心が躍っている。
ステップ1:会いたい人と繋がるには、まず同じ土俵に立つのが手っ取り早い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます