第15話 明日奈と俺と優実と、そして神様?ACT2

朝目が覚めると明日奈の姿はなかった。

あれが夢であるのか、現実であるのかは双幅の記憶の中で揺れ動いている。

寝ぼけ眼をこすりながらリビングに行くと、エプロン姿の明日奈と優実が目に入ってきた。


「お兄ちゃんおはよう」

俺の姿を目にした明日奈がにこやかに言う。

「おはよう……二人で朝飯作ってくれたのか」

「うん、コーヒーメーカーもセットしといたよ。もうすぐパンが焼き上がるから顔洗ってきてね」

言われるままに俺は洗面所に行き、ばしゃばしゃと顔を洗う。まだ頭が半分寝ているようで、鏡を見ると間の抜けた顔の自分が見つめ返してきた。


タオルで顔を拭きながらキッチンに行くともう食事の準備はできていた。香ばしい匂いを放つフレンチトーストにトマトサラダ、湯気の立つコーンクリームスープ。

「おお……うまそうだ」

「へへー、私も手伝ったんだからね」

「ああ、ありがとな。いただきます」

食卓を囲み三人で手を合わせる。俺はさっそくフレンチトーストを口に運んだ。かりっとした表面を噛み砕くと、中はふんわりとしていて優しい甘さが口いっぱいに広がる。

「……うまい」

思わずそう呟くと明日奈が嬉しそうに笑った。

「よかったあ、これもお母さんのノートのレシピなんだよ」

「そうなんだ……」

「うん」

幸せそうに明日奈ははにかんだ。


「おおぉ、朝からやってくれじゃねぇのか……お二人さん」

「もぉ、おねぇちゃんったら」

「なぁ、私もまぜてくれない? ねぇいいでしょ」

ま、まぜるって……俺たちはそう言う関係じゃ……関係なのか? 血のつながりはないけど一応兄妹であるわけでそれ以上のことに踏み込んではいけないと言うか……そのぉ、何と言うか。


優実が俺の腕をつかみあの豊満な胸の中に押し込んでいく。

「あーおねぇちゃんずるーい」

「わ、私だってやる時はやるんだから。お兄ちゃん」

そう言って明日奈は俺の隣に来ると、俺の腕に自分の腕を絡ませた。

「あす……な……」

「えへへぇ……これで逃げられないね」

口調は冗談めかしているが、絡みついた腕から明日奈の心臓の音が伝わってくるような気がする。そして俺を上目づかいに見つめてくる潤んだ瞳。こ、これは本気なのか……?  しかし兄妹でこんなことは許されない……。でもでも、据え膳食わぬはなんちゃらと言うしなぁ……。


「わ、私もぉ」

今度は優実が反対側の腕に絡みついてきた。そして柔らかいものがひしゃげる感触と立ち上る甘い香りに俺の思考能力は麻痺していく。

「……かおったら」

「ん?  何か言った?  おにいちゃん」

「あ、いや……なんでもない」

これは夢だ。そうだ夢に違いない。明日奈と優実がこんな風に俺に接してくれるなんて、きっとこれは俺の願望なんだ。そうに違いない。

「そっか、ならいいんだけど……」

優実はそう言って顔を近づけてきた。思わず俺は目を閉じた。そして唇に柔らかいものが触れた。


「ん……ちゅっ……」

軽く触れるだけのキスだったが、それでも充分過ぎるほど甘い感触だった。

「えへへぇ」

「あ――! 優実だけずるい!! 私もしちゃお」

今度は優実の唇が重なってきた。プルンとしたやわらかく手温かい感触が俺の唇に伝わってくる。と、次の瞬間何かが押し込まれるように唇を割り込んで入ってきた。

「んんんんんっ」

やわらかくて弾力のある何かが割り込んでくる。

ああああ! なんだこれ! 舌?



「いいの、これで」

「え……?」

「だって私たち恋人同士だもん」

「あ、明日奈……」

「もう遠慮しないって決めたんだ。私も優実も自分の気持ちに素直になるの」

そう言って明日奈はにっこりと笑った。それは俺の好きなあの笑顔だった。

「だからおにいちゃんも逃げないでね」

「ああ……わかったよ」

俺は小さく頷いた。それを見て明日奈はもう一度微笑むと俺の胸に顔をうずめて言った。

「だーい好き! おにいちゃん!!」


幸せだ! 幸せすぎる!

夢であるならこのままずっと夢の世界に浸っていたい。

でもこれは紛れもない現実であるのだ。

俺はこの生活を守りたいとつよく願う。


たとえそれが許されないことであったとしても。

「おにいちゃん、こっち向いて」

優実の声に俺は顔をそちらに向けた。すると唇にそっと柔らかいものが触れる感触があった。そして口の中に何か甘いものが入ってくる。これは……優実の舌? ああ、これはさっきのフレンチトーストだ。香ばしく甘い味が口の中に広がる。しかしすぐにそれは離れて行ってしまった。もっと味わっていたかったのに……。


「えへへぇ、どう?  おにいちゃん」

「ああ……うまいよ」

「やったぁ。じゃ、もう一回……あーんして」

俺は口を大きく開けて優実の次の行動を待つ。すると再び唇が重なり、今度はさっきより長く深い口づけが続いた。そしてゆっくりと唇が離れていくと、二人の唾液が混ざり合ってできた銀色の糸が伸びて切れた。


「ふぁ……」

思わず吐息が漏れる。全身から力が抜けていくような感覚に襲われる。しかしそれは不快なものではなくむしろ心地よいものだった。

「ねぇおにいちゃん、もっといいことしよっか」

「いいこと……?」


俺はぼんやりとした頭で考える。しかし頭がうまく働かない。ただ目の前の優実の姿だけがはっきりと認識できる。優実は俺に見せつけるようにゆっくりとセーラー服を脱ぎ捨てた。そして今度はスカートのホックに手をかけると、ジッパーを下ろす音ともにその白く美しい脚があらわになった。


「おにいちゃん……好き……」

そう言って優実は俺の首に腕を回してきた。甘い香りと柔らかな肌の感触に包まれて意識が遠のくような感覚に襲われる。しかし次の瞬間、俺は我に返った。

「ゆ、優実……だ、だめだよこんなこと!」

慌てて突き放そうとするが力が入らない。いや違う。本当はもっと強く抱きしめていたいのだ。しかし心のどこかでそれを止める何かがある。これは俺の本当の気持ちじゃないような……。


「いいでしょ?  おにいちゃん……」

優実はうるんだ瞳で見つめてくる。その瞳の中に映る自分の顔はまるで別人のようだった。そして彼女は俺の手を取るとその指先を口に含んだ。熱くぬめった舌が指先に触れる感触に背筋がぞくっとする。

「や、やめろって……だめだってば!」

俺は必死に抵抗するが身体に力が入らない。その間にも優実の行為はどんどんエスカレートしていく。やがて俺の手を自分の胸へと導くとそのまま押し当ててきたのだ。服の上からでもわかるほど大きく張りつめた乳房の感触に思わず息を飲む。そして俺の手を使って自分の胸を揉み始めたのだ。


「んっ……ふぅ……」

甘い吐息を漏らす彼女の表情はどこか切なげで、まるで何かを渇望しているように見えた。

「ゆ、優実……」

「……ねぇ、おにいちゃん……さわって?」

そう言って彼女は俺の手を自分の胸から離すと今度はスカートの中に誘導した。そして下着の上から割れ目に沿ってなぞらせるように動かす。そこはすでに熱く濡れており、指先にぬるりとした感触があった。


「あっ……はぁんっ」

ビクンッという反応とともに彼女の口から甘い声が漏れる。その声を聞いているだけで頭がクラクラしてくるようだった。

「おにいちゃん……好き」

そう言って彼女は再び唇を重ねてきた。今度はさっきよりも激しく貪るようなキスだった。舌を絡ませ唾液を交換しあう濃厚な口づけだ。その間も俺の手は彼女の秘所に添えられたままになっている。

「んっ……ちゅぱっ……んんっ」

くちゅっという水音が響くたびに彼女の腰が震える。そして俺の手の動きに合わせて自らもいやらしく動き始めていた。


(だめだ……!)

これ以上続けるわけにはいかない。そう思って俺は優実を引きはがそうとするが、身体に力が入らないうえに彼女にしっかりと抱きしめられていて動けない状態だった。その間にも俺の指先はさらに強く押し付けられていく。やがて彼女は唇を離すと切なげに潤んだ瞳で俺を見つめたまま言った。


「ねぇおにいちゃん……私この先に進みたい」

この様子を明日奈は顔を真っ赤にさせながらじっと見つめていた。

……もう遠慮しない。

明日奈のあの言葉が耳の奥底から聞こえてくるような気がする。

……遠慮しない。

いいのか? このまま流されて俺はいいのか?


何かいけないような……この先に進んではいけないような。……もしするのならこの先に進むのなら俺は明日奈と……。

明日奈と共に一つになりたいという欲望のようなものがわき上がってきた。

「ねぇお兄ちゃん。私と最後までしちゃおうよ。明日奈だって私となら許してくれるよね。ねぇ、明日奈そうでしょ」


明日奈はその問いに何も答えなかった。とは言え、俺と優実がこんな状態になっているというのに何も言ってこない。ということは明日奈自身も優実とならいいって言うことなのか?


そうなのか明日奈?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る