第4話 あまりにもリアルな夢じゃなくてまさしくこれは現実なのだ。

バタン。部屋の扉を閉めると俺はそのまま床へと座り込んだ。

ドキンドキンと胸の鼓動が高鳴っている。突き上げる鼓動で少し痛みを感じるほどだ。


いったい何なんだ! なんで高垣が俺の妹になってんだ?

高垣に俺はフラれたんぞ。フラられた女と同じ家で一緒に食事して……いやいやそれよりもなんだあのお兄ちゃんって?


一人になって冷静になればなるほど混乱してくる。

マジで何が起きているんだ?

おいおい、やっぱりこれは夢……なんじゃねぇ。思いっきりほほをつねってみた。

いててて!

マジ痛てぇ。夢じゃねぇ……な。


いまだに信じがたいこの事実。高垣が俺の妹? 儀妹て言う事?

なんでだよう! 

あの親し気な高梨の表情を思い起こすと余計に俺の頭の中を混乱の渦に巻き込んでいく。『きもい』とまで言ってフラれたんだぞ。高梨は俺の事を嫌っているものだとばかり俺は思っていた。


それなのに彼奴俺にべたぼれ? じゃないのか。確かに兄妹と言う事であれば……それでも義兄妹と言う事であれば嫌っていればあんなにも好感触な雰囲気になんかなれないだろう。


あれじゃまるでブラコンじゃねぇか。


ま、まぁ――――悪い気はしねぇけど。お恥ずかしながら少し照れている。

これが夢であるのなら――――冷めないでほしい……これ本音。


そりゃな、フラられたんだけど、未練がねぇなんて言うことはないんだよ。未練たらたらだって言うのは正直なところ。はいそうですかと切り替えられるほど俺は遊び人じゃねぇし、そんな浮ついた気持で告ってなんかいねぇんだよ。


「ふぅーん、そうなんだ」

「そりゃあたりまえだろ。半端な気持ちじゃねんだよ。あの高垣だぞ、成績は常に学年トップの秀才。しかもスポーツ万能で可愛い系の美人。そりゃ、こんな俺見てぇなのには高値の華だって言うのは分かっているんだけど」

「ほぉ、そこまで釣り合わない相手に告ってフラれたんだ。わはははは、マジみじめじゃのぉ」

「あはは、そうなんですよ――――って、誰だ!」

辺りを見回すが誰もいない。


「誰だ! 誰かいるのか。出てこい」

「やれやれさっきからお前の独り言聞いていたんだが、ほんと情けない奴だ。せっかくお前の望みをかなえてやったと言うのにのぉ」

気が付けば見覚えのある女の子が……。

マジ! ていうか見覚えあるだろう。あのラノベの表紙絵の女の子が俺の目の前にいる。

ち、近い。この俺の視界を女の子の顔ですべて覆いつくされている。


「な、な、なんでここに」

「なんでって、お前。わしを誰だと思っておるのじゃ。神様に向かってその態度はなんじゃ!」

「か、神様?」

「そうじゃ!  わしは神じゃ。お前がフラれて辛い思いをしているのを見ておったのでな。可哀そうに思い、こうしてお前の望みをかなえてやったと言うのに」


いやいやいやいや!  そんな簡単に人の望みがかなえられるわけねぇだろうよ。

それに神って、神様って現実に本当にいるのかよ。

「それがいるんだなぁ。ちなみにおぬしの心の声わしにはだだ洩れなんじゃけどな」

だだ洩れ?

「そう、駄々洩れ」


は?

「まぁそんなに警戒しなくてもいい。おぬしとは何と言うか、波長が合ったとでも言うんじゃろうか、そのおぬしのなさけない心の声が響いて来てのぉ、こうして接点を持ったという訳じゃ」

はぁ。


「ところでわしはちぃとばかり腹が減っておる、何か貢物はないのか! なぁ―なぁー」

貢物て言ったって何があるわけじゃないけど、そこでふと目に入ったのが未開封のポテチの袋。


「あのぉ、こんなもんしかないんですけどこれでもいいですか?」

「なんじゃこれは?」

「ポテトチップスと言うスナック菓子です」

「菓子とな、まぁ少しは腹の足しになるじゃろう」袋を開けその神と名乗る女の子(見た目だけでのことである。中身はどうかは分かんないけど)はポテチを一枚口に運んだ。


「おお、これは美味じゃのう。美味いぞ良いぞ良いぞこれは」

そう言いながらあっと言う間に一袋を平らげてしまった。

「たらん。もうないのか?」

「ええ、すみません。今はもうこれだけでして」

「……そうかぁ、それは残念じゃのう。でも我はもっと食いたいのじゃ赤城翔太あかぎしょうたよ、これから我への貢物はこのポテトチップスなる菓子を供えよ。さすれば汝の人生は好転の一途をたどるであろう。ちなみに最初の一手はもう施しておる。すいておるおなごに好かれるようにな」


て、言うことはさっきのことはこの神様が……。

「どうじゃ、思いが叶っておるじゃろぉ」


た、確かに――――ていうか、なんで高梨が俺の妹と言う設定何だ?

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