第11話 『対決! 屋台』その1
まあ、焦っても仕方ないから、やましんは、覚悟は決まらないものの、おでんを頂いていた。
すると、とくに、重力は感じないが、屋台の囲いが解けたのだ。
つまり、お店が開いたのである。
『え? 帰ったのかしら。』
と、やましんは、一瞬思った。
すると、見透かしたように、首から上がないおじさんが言うのだ。
『ここは、地球ではないが、良く似た環境の人工天体だ。昔のお得意がいる。』
首から上がないおじさんが、めずらしく、そのような解説をくれた。
『人工天体?』
『そう。地球の2倍くらいの直径がある巨大な、まあ、いわゆる船がふたつ、向かい合って、宇宙からぶら下がって揺れてるようなものだ。』
『宇宙から、ぶら下がる?』
『さよう。そう見えるのだ。実際は、宇宙に浮かんでいる。中心に、人工太陽がある。バランスがとれるように、反対側にもうひとつの籠が浮かんでいる。しかし、安全に住める場所はどちらも限られていて、まあ、言ってみれば宇宙最大の無駄遣いだが、宇宙最高のマンションだとも言えるな。家賃も、すごく高い。地球人にそれを払える人間は、たぶんいないだろう。』
『そんな所に住むひとが、屋台?』
『ノスタルジーだ。あんた、外には出るな。すぐ、逮捕される。ここの警備は、ものすごく厳しい。しかし、この中なら、問題ない。』
『はあ。』
しかし、なんと、実際に、すぐ、お客様がやってきたのである。
やましんは、多少、度肝を抜かれた。
形が、定まらないようなのだ。
ねこさんみたいだったり、若い女子だったり、さめさんみたいだったり、恐竜さんみたいだったり、次々に様相が変わる。
つまり、三次元生物ではないのだろう。
『らっしゃい。ひめさま。』
『ひめさま?』
やましんが、小さくつぶやいた。
『お久しぶりね。生きてておめでとうございます。でも、この屋台、放射線漏れしてるわよ。これでは、捕まるよ。直してあげましょうか。』
『すません。』
『あら、それが、狙いだったかしら。』
『はあ。まあ、いくらかは。来てくださるかどうか、わからないんで。』
『ノスタルジーよ。美味しいし。あら、こちらは、珍しい。三次元生物さん?』
『へい。地球人さんです。お得意さんです。あなたと同じ。』
『まあ。素晴らしいわ。じゃ、こちらは、食べてはだめね。』
『ひぇ!食べるの?』
『ふふふ。人類は、美味しいわ。でも、あなたは、健康状態に問題ありそうね。おいしくなさそう。連れて歩いてるということは、追われているかな。どちらかが。』
『へい、自分です。おっしゃるように、放射線漏れで、会社から。通報したのは、こちらさん。』
『ん、まあ。じゃ、敵じゃない。やっちゃいましょうか。ブラックホールに放り込む?』
『いや、おいらを、修理させようとしたんですから、善意です。ただし、会社に善意はない。壊れたらすぐに廃棄。新型に交換です。』
『はああ。無慈悲ねぇ。まあ、ここも、無慈悲よね。家賃払えなくなったら、すぐに、追放。まあ、あたくしが気に入れば、もしかしたら、別だけど。』
『こちらは、この人工天体のオーナーさんですよ。』
『大屋さんよ。地球ならね。』
『地球を、知ってるのですか?』
やましんが、恐々尋ねた。
『うん。住んでいたから。まあ、この体制では、ダメだから、ちょっと、体を借りてたの。』
『はあ。そうですか。』
やましんは、話が残酷になりそうなので、それ以上は尋ねなかった。
『とても、思慮深い。でも、臆病者で、頭はあま、良くない。ただし、勘は働く。あなた、なにがお好き? ここのメニューで。』
『地球人用は、特別ですよ、ひめさま。』
『だから、地球に住んでたんだから、大丈夫なんだって。おじさん。』
『へい。すいません。』
『あ、あ、あの、おでんが、良いです。』
『お〰️〰️〰️、でん。素晴らしいわ。じゃ、久しぶりに、おでん。おまかせで。』
『へい。』
なんだ、ぜんぜん、解ってるみたいだ。
『あなた、まだ、若そうね。』
『ひめさま』、は、非常に近い距離から話してくる。
『もう、65になりそうです。』
『まあ、赤ちゃんね。あたくしなんか、換算すれば、2000億年じゃきかないくらい生きてるわ。』
『ぶっ。』
『あ、でた。早いね〰️〰️。では、さっそく。』
ひめさま、は、しりつくしたように、ナイフと、フォークを握った。
すると、そこに、また、あの、黒スーツの二人が入り込んできた。
『お客様は、出てください。この屋台は、回収し、廃棄します。放射線漏れしていますから、非常に危険です。』
『まあ、おふたりさま、ここは、あたくしの支配領域ですよ。許可を出した覚えはありません。退去なさいませ。さもないと、叩き出しますわ。』
『屋台皇帝陛下の名において、安全確保のための、正当行為を行使する。』
『ばーか。屋台皇帝の権威なんて、ここでは無効よ。出て行きなさい。』
『正当行為を行使する。』
黒スーツのひとりが、ひめさま、を、掴もうとした。
しかし、やましんには感知できない、ものすごいスピードで、突き飛ばされた。
『まあ、失礼ね。あたくしに触ろうなんて、100億年早いわ。』
もうひとりが、映画みたいな、戦闘体勢をとった。
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