第7話 『クレーム』
やましんは、かぜをひいてしまった。
仕入れに差し障るかな。
いやいや、それより、放射線の話だ。
問題は。
そこで、思い出したのが、あの連絡先である。
あれは、いったい、どこに、通じるのだろうか?
いままで、向こうからメールがきたことはあった。
気にもしなかったが、屋台から直に来たものだと思っていた。
もし、そのとおり、連絡先が、屋台そのものならば、意味はないかもしれない。
しかし、もしかしたら、ホームページみたいなものとかにつながらないか?
屋台の所有者とか、管理者とか。
とはいえ、いざ、やるかどうかとなったら、やましんの、悪い性格が首をもたげる。
あの、幽霊屋台に入るほうが、気が楽だ。
姿が見えないとはいえ、形はある。
しかし、電話とか、メールというものは、相手の姿が分からない。
早い話し、恐ろしいのである。
むかしは、電話が怖くなんかなかった。
年をとるにつれて、怖くなった。
なぜなのか、と言えば、世の中が、やたら、難しくなったからである。
追い付けなくなったわけだ。
まさに、この世界は、複雑怪奇、魑魅魍魎の跋扈する世界になった感が強いのだ。
だから、今も、判断するのに、一時間は掛かってしまった。
なんだか、熱も出てきた。
それでも、やはり、放射線を垂れ流しの屋台は、いくらなんでも、まずいに違いない。
そもそも、そんな話が、事実かどうかも、わからないが。
やましんは、恐る恐る、件の番号というか、ほとんど、記号、の宛先を入力した。
幽霊が、電話にでるとか、廃墟の病院から電話がかかるとか、そういう怪談はあるが、あまりにもあり得なさすぎて、それらに関しては、やましんは、さっぱり信用していない。
それでは、通信の秘密が、守られないでしょう。
すると、確かに、ホームページみたいなところにつながったのである。
『宇宙屋台のご案内』
ときた。
英語のバージョンや、中国語、フランス語もあるらしい。
『いやあ。あるなあ。ある。ふうん。こうなると、もはや、幽霊じゃないよな。まてまてぇ・・・・・』
《日本支社所在地》
『大阪都 東となり区 中上側 35-3 3F 305』
『これ、ほんとかしら。』
ネットの地図を検索すると、たしかに、あるではないか。
『ふーん。でも、同じネット番号はあるが、電話番号がない。それは、怪しい。』
『地球の隅々に、屋台を配置すべく、頑張っている、若い会社です。か。』
『やや。本日の、屋台巡回箇所。東京府 東瀬田矢賀地区 周辺。このあたりか。なになに、明日は、名古屋県 本俵市 中心部。また、ほんとかな。む。霧はどうする。いや、こうなると、却って、なんだか、ほんとみたいだ。まさか、あの一台で、全国、いや、世界を、飛び回るのか? なに、周辺環境、天候により、出ない場合があります。ふ〰️〰️ん。出ない、か。なんだか、いみしんな。』
もはや、やましんの妄想が、膨張する一方だ。
すると、その、ホームページの隅っこに、小さな文字でこうあるのだ。
《お取引ご担当者さま、ご連絡先》
《お客様、ご連絡先》
『ふうん。自分は、お取引ご担当者さま、だよな。えい。ぶち。あ、出た。なになに〰️。連絡事項をご記入、送信してください。のちほど、ご連絡いたします。か。ふ〰️〰️〰️〰️〰️ん。さて、どする。』
やましんは、ちょっと考えた。
『お客様、連絡先。か。じゃ。こっち、ぷち。』
すると、まったく、同様の表示が出る。
『はやあ。つまるところ、行き着く先は、同じと見た。そらあ、お客様の立場が、やはり強いだろ。まあ、いっしょかな。担当者は、一人だったりするかも。』
覚悟を決めて、やましんは、なにやら書き始めたのである。
『こいつは、クレームではない。悪意はない。嫌いではないもの。心配なだけさ。』
なにか、まるで、熱にうなされるように、つぶやきながら。
・・・・・・・・・・
つづく
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