第3話 『協力者』


 長年やっていた仕事を辞めてしまい、人間との付き合いも、出来なくなった、やましんは、ついに、深刻な財政危機に陥っていた。


 そこに、出会ったのが、あの、幽霊屋台である。


 山の上の、しばしば、妖しい者が出ると言われる、とある市立公園は、落ちこぼれた一部の人間と、この世のものではない一部の幽霊の溜まり場になっていた。


 もっとも、お互いに、みんな見えると言うわけではない。


 つまり、集まってはいても、視覚に捉えられるのは、一部だけなのが、普通である。


 特に、人間側からは。


 また、巷で騒がれるような、祟りがあると言うわけではないのが普通である。


 人間は、入ってならない場所には、入らない。


 それだけのことである。


 それでも、悪さをするものは、両サイドでお仕置きされることになる。


 昔から、そういう、お約束である。



 この公園は、両サイドから許された、ある意味、幸せな、祝福された場所なのだ。


 やましんが、例の屋台から頼まれた食材などを調達してきて、それを渡して、一定の報酬を受けとる場所でもある。



 指定された時間に行き、周囲にだれも居なくなると、突然、どこからともなく、現れるのだ。


 ま、ついでに、おでんとか、おそばを頂く。



 この『幽霊屋台』は、どうやら、世界中で営業を、しているらしい。


 場所によって、ピザだったり、ホットドッグだったりもするらしい。


 

 ただし、もちろん、地球では、まだ、もぐりである。


 もぐりである。からして、妖しい怪談が必要なのだ。



 ただし、この屋台では、会話は必要ない。


 電子ボードと、必要な場合は、印刷装置だけの会話だ。


 しゃべってはいけないわけではないが、相手には、通じないらしい。


 怪しいが、ある面、楽な場所なのだ。


 言いたくないことを、訊かれもしないから。


 ただし、公権力は苦手である。


 実際、パトカーなどが来ると、さらりと、消えてしまう。


 お客様がいたら、彼らだけ、そこに、取り残されるだけなのだ。


 いわゆる、狐に騙された状態である。



 もっとも、食中毒などのトラブルは、一回も起こしたことがない。



      🍜🍥




 『はいよ。たのまれたもの。』


 やましんは、調達した食材などを、屋台の向こう側に置く。


 ややこしいものは、ない。


 しかし、相手の姿は、まったく見えない。


 営業中には、必ず客席に現れる、首から上がないおじさんも、時間外には姿を見せない。 


 で、届けた食材などは、フッ、と消えてしまう。


 しかし、見えない相手は、内容を、ちゃんと、チェックしているらしい。


 問題がないとなれば、



    『OK』


  『ありがとうございます』



 の表示が空中に出て、それから、例の箱のなかに、報酬が現れる。


 小さなレポートも付いて出てくる。


 まあ、大した額ではないが、それでも、やましんには、貴重な収入である。


 次回の発注書が、それとは別に現れて、次の落ち合い時間が示される。


 ついでに、こんな、コメントが来る。


 『体調不調などがありましたら、お知らせください。連絡先。◯◯◯◯◯◯◯。』


 ときには、スマホに、発注がくることもある。


 しかし、どうも、変わった番号なのである。


 アルファベットらしき、でも、なにかが違うような、普段の地球のメールアドレスとも、なんとなく違う、よくわからない宛先だが、不思議に、ちゃんと、通じるのだ。



 こういうあたりは、やましんは、かなり、弱い。


 チャットとか、なんのことやら、知らないのである。


 


 ・・・・・・・・・・  🍔


 


 


 


 


 


 


 


 

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